業績予想「下方修正ラッシュ」始まる。3月以降はホテル稼働率「7割減」、百貨店インバウンド売上高「9割減」も

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マンハッタンにある5つ星ホテル、ロッテ・ニューヨーク・パレス。客の姿が見当たらない。日本のホテルでも同様のことが起きている。

REUTERS/Andrew Kelly

コロナショックがさらなる猛威をふるっている。前回記事では、観光業界をはじめインバウンド(訪日外国人観光客)売上高の大きい業界へのダメージについて分析を行った。その後、業績悪化は筆者の想定を上回る規模と勢いで進んでいる。

百貨店では、松屋(銀座・浅草)の2月売上高が前年同月比で31.5%減、同月の入店客数も20%減と大幅に悪化。

大丸松坂屋を傘下に置くJ.フロント リテイリングは3月16日、2020年2月期通期(2019年3月1日〜2020年2月29日)の業績予想を下方修正。売上高を114億円減、営業利益を67億円減とした。

この傾向は3月も続いていて、J.フロントは1〜14日の売上高が前年比43%減、うち免税売上高は96%減となり、インバウンド需要がほぼ見込めない現状が明確に。三越伊勢丹ホールディングスも、1日〜15日までの売上高が前年比34.8%減で推移している。

下方修正後の予想が「未定」の企業も

ほかに新型ウイルス流行の影響が明確に読み取れる代表例では、各種イベントが延期もしくは中止になった影響で、東京ドームが2021年1月期(2020年2月1日〜2021年1月31日)の通期予想を「新型コロナウイルスによる影響を現段階において合理的に算定することが困難」との理由から「未定」と発表。

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「洋服の青山」を展開する青山商事の2020年3月期通期業績予想の下方修正。

出典:青山商事

「洋服の青山」を展開する青山商事は、入社式や内定式、入社研修などが延期または中止になった影響でビジネスウェアの販売が伸び悩み、2020年3月期通期(2019年4月1日〜2020年3月31日)の業績予想を下方修正。売上高が165億円減、営業利益が94億円減、折しも子会社整理で特別損失(約96億円)を計上する影響もあり、203億円という巨額の赤字決算となる見込みだ。

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ティーケーピー(TKP)の2020年3月期通期業績予想の下方修正。

出典:TKP

貸会議室のティーケーピー(TKP)も、会議室や宴会場の利用減少により、2020年2月期通期(2019年3月1日〜2020年2月29日)の業績予想を下方修正。売上高を19億円減、営業利益を18億円減と、いずれも2〜3割引き下げた。なお、同社は2021年2月期の業績目標も同時に下方修正し、売上高で71億円減、営業利益で64億円減と引き下げている。

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ゼビオホールディングスの2020年3月期通期業績予想の下方修正。

出典:ゼビオホールディングス

また、アウターウェアの売上減など記録的な暖冬の影響が直撃した企業にとっては、新型ウイルス流行のタイミングが悪すぎた。

スポーツ用品のゼビオホールディングスは3月17日、2020年3月期通期(2019年4月1日〜2020年3月31日)の業績予想を下方修正。売上高を116億円減、営業利益を26億円減へと引き下げた。営業利益は予想より4割近く減ることになる。

航空・ホテル業界の深刻さが明らかに

トランプ米大統領が「ボーイングを救う必要がある」と3月17日に発言して、図らずもその惨状が明るみに出た航空業界。

国際航空運送協会(IATA)は3月5日時点で、世界の航空会社の総収入が最大1130億ドル(約12兆円)減るとの予測を発表している。しかし、17日には同協会のドジュニアック事務局長が会見。その後の急速な感染拡大と予防措置によって、損失は5日発表の予測以上になるとの見方を示した上で、最大2000億ドル(約21兆5000億円)の金融支援が必要と訴えた。

世界の大手航空会社が加盟するスターアライアンス(全日本空輸ら)、ワンワールド(日本航空ら)、スカイチームの3つの航空連合も、支援を求めて共同声明を発表している。

全日空、日本航空とも、2020年3月期第4四半期および通期の業績予想については修正を行っておらず、具体的な影響の規模は、現時点では明らかになっていない。

また、航空会社の苦境から容易に想像できるように、ホテル業界も大きなダメージを負っている。

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リゾートトラストの2020年3月期通期業績予想の下方修正。

出典:リゾートトラスト

リゾートホテル大手のリゾートトラストは3月17日、2020年3月期通期(2019年4月1日〜2020年3月31日)の業績予想を下方修正。売上高が114億円減、営業利益が40億円減に、それぞれ減少する見通しと発表した。年平均90%台前半の稼働率が、2月に70%程度まで、3月以降の稼働率は30%にまで急速に低下しているという。

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ロイヤルホテルの2020年3月期通期業績予想の下方修正。

出典:ロイヤルホテル

リーガロイヤルホテルグループを運営するロイヤルホテルも同日、業績予想の下方修正を発表。売上高を19億円減、営業利益を9億円引き下げた。

翌18日、ワシントンホテルも業績予想の修正を発表しているが、イベントの延期や中止による宴会場の予約や、ホテル宿泊が大きく減少しており、今後の変動が見通せないとして、予想を「未定」とした。3月1〜15日までの売上高は前年同期比68.2%減という深刻な落ち込みという。

新型コロナショックから「ベンチャーバブルの崩壊」が始まる

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米金融大手のなかには「景気後退に突入した」と宣言したところもある。ベンチャー企業にとっては地獄の季節の始まりになるかもしれない。

REUTERS/Issei Kato

ここまで見てきたのは中堅から大手企業ばかり。しかし実際により深刻で、致命的な影響を受けているのはベンチャー業界だ。

株価の下落局面では、大型株よりもリスクの高い小型株が売られるのは当然だ。ただ、ここ数年で上場したばかりのベンチャーにとって、成長投資もかさむこのタイミングでの市場環境悪化は、環境条件はどの企業も同じとはいえ、苦しい。

東証マザーズの株価指数は3月18日現在、東日本大震災後の2011〜12年に戻る水準まで下落しているが、そこに新型コロナウイルス流行の影響があることは当然のこととして、それ以上に、コロナショックに端を発して「ベンチャーバブルの崩壊」が本格化したことのほうが大きいと筆者は感じている。

近年は、機械学習やシェアリング、○○テックと言えば、投資が集まる傾向が続いていた。しかしそうした流れは、このコロナショックとベンチャーバブルの崩壊により終えんを迎えるだろう。

ベンチャーが打ち出すビジネスモデルがどのようなものなのか、そのビジネスモデルは安定的に推移する可能性があるのか、いままで以上に慎重に見極める投資家が増えるはずだ。次回はそのあたりに触れたい。


森泰一郎(もり・たいいちろう):株式会社森経営コンサルティング代表取締役。東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。戦略コンサルティングファームを経て、ITベンチャー企業にて経営企画マネージャーを担当。M&Aや経営企画、事業企画、業務改善に従事。IT企業にて取締役CSOとして経営企画と戦略人事、新規事業開発を担当。現在は大手上場企業から中堅・中小ベンチャー企業まで、成長戦略、組織再編、M&A、コスト削減のコンサルティングを行う。

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