出典:アップル
3月18日(日本時間)夜、アップルはかねてから噂になっていた新型iPad Proを発表した。背面に「iPhone 11」のような2眼カメラを持ち、モバイル機器としてはおそらく初の3次元での空間認識センサー「LiDARスキャナー」を搭載。さらに、純正アクセサリーとしてタッチパッド付きのバックライトキーボードも用意する。
本体価格は11インチモデルで8万4800円(税別)から、12.9インチモデルで10万4800円(税別)から。3月25日発売。
新型のタッチパッド付きバックライトキーボード「Magic Keyboard」は3万1800円(11インチモデル、税別)または3万5800円(12.9インチモデル、税別)だ。
この「MacBook」以上の高性能に進化を遂げたようにすら見える新型iPad Proを、5つのポイントで読み解いてみよう。
1. タッチパッド付きキーボードは複雑な構造
出典:アップル
多くの注目点があるなかで、iPad ProをノートPCのように使いたい人に最も注目なのが「Magic Keyboard」の登場だ。小型のトラックパッドを純正キーボードに搭載するのは、もちろんiPadシリーズとして初めて。
さらに画面角度の調整は、これまでのSmart Keyboardとはまったく違い、物理的に角度を変えられる「ヒンジ」がついているようだ。
アップルの解説ページでは、iPad Pro本体を空中で保持できる様子もあるため、2箇所にヒンジ的な角度を保持する機構を持つキーボードである可能性は高そうだ。
キー配列は日本語配列でも無理のない設計。キーストロークは1ミリと発表している。
出典:アップル
折りたたんだ状態。ヒンジ部分のUSB-C端子で充電もできる。
出典:アップル
また、iPad Proとの接続は「マグネット」としていることから、接続端子部分は現行のiPad Proに近い構造(または共通)であると思われる。なお、公式ページには1つ前の11インチおよび12.9インチiPad Proとは互換性があると明記されている。
なお、新型iPad Pro本体は3月25日発売だが、Magic Keyboardは1カ月以上遅れた5月発売予定。つまり、本体と同時購入はできない。また、この複雑な機構で、本体との合計重量がどの程度になるのかも気になるところだ。
2. 背面カメラがついに2眼に。超広角と広角レンズを搭載
ついにレンズ2つの2眼に。見た目はiPhone11のようだが、実は構造は違う。
出典:アップル
iPad Proの背面カメラはついにレンズを2つになった。パッと見はiPhone 11(Proではなく)の2眼のように見えるが、レンズの構成が異なる。「超広角」と「広角」の2つのレンズという構成は、3眼のiPhone 11 Proのカメラから、「望遠」レンズを取り除いたものに近い。
撮像性能は、超広角が約1000万画素(F2.4/125度)、広角が約1200万画素(F1.8)。ただし、iPhone 11 Proと比較すると、性能も構造も微妙に違う。
- 超広角はiPhone 11 Proが120度に対して、新型iPad Proは125度と、さらに広い
- レンズ構成が11 Proは「超広角は5枚」「広角は6枚」だが、iPad Proは「超広角も広角も5枚」
- カメラの画素数が11 Proはすべて1200万画素なのに対し、iPad Proは超広角は1000万画素
- レンズの明るさは同等
3. LiDARスキャナー搭載でより「高精度」な環境認識が可能に?
出典:アップル
新型iPad Proのアップデートで、最もイノベーションを秘めているかもしれないのがこのLiDARスキャナー機能の搭載だ。
公式サイトとプレスリリースでは、「最大5m先の対象物までの距離を計測する」と説明している。
iPhone 11 Proなどと比べて深度情報の精度にどの程度の違いがあるかは不明だが、少なくともシングルレンズだった従来のiPad Proに比べて精度が向上するのは間違いない。
LiDARと計測アプリを組み合わせて、写真撮影でサイズや角度の計測ができる対応アプリも登場する。
出典:アップル
正確で高速な距離計測ができるようになると、iPadがある周辺空間の3次元認識性能の大幅な向上が期待できる。アップルの場合、LiDARスキャナーの性能を、iOS/iPadOS標準のARKitへと垂直統合的に実装できるのが、Android陣営とは大きく異なる強みだ。
LiDARスキャナーによる3次元認識の精度向上は、そのままAR(拡張現実)アプリ体験の向上に直結するはずだ。
なお、公式サイトでは、環境認識の素早さを示唆する表現もあるが、LiDARスキャナーによるものなのか、アップル独自のARフレームワーク・ARKit 3の性能向上によるものなのかは、現時点ではわからない。
4. 処理性能の要のSoCが「A12Z Bionic」に
出典:アップル
従来のiPad Proの心臓部であるSoCは「A12X Bionic」。今回の新型は「A12Z Bionic」。XとZでどれほどの性能差があるのかは気になるところだが、「●倍高速」をうたうことの多いアップルとしては珍しく、高速化の指標は明らかにしていない。
判明している範囲の違いとして、A12XはCPUが8コア、GPUが7コア。新型のA12Zは、CPU、GPUともに8コアだ。なお、アップルは「iPad史上最高のパフォーマンスをiPad Proに与えます」としており、トータルの性能としては過去最も速いという表現にとどめている。
5. 最安モデルでもストレージは128GBから
作成:編集部
新型iPad Proは、最も安い8万4800円(税別)の11インチモデルでも、ストレージ容量は128GBからになった。デジカメ写真や動画の取り込み・加工まで考えても128GBあれば、比較的余裕を持って使える実用性の高さがあるといえる。
(文・伊藤有)