最速レビュー:新MacBook Airが「旧型ユーザーほど買い換えたくなる」理由…キーボードも性能も大幅進化

新型MacBook Air

MacBook Air、2020年モデル。見た目は従来とほぼ変わりないが、デザイン面以外に、使うとわかる「差」が結構ある。

撮影:西田宗千佳

アップルが3月末に発売する新MacBook Airのレビューをお届けする。

先行レビューで手元にやってきたのは、上位機種にあたる、4コアCPUと512GBのストレージを搭載したモデル。価格は13万4800円(税別)。オンラインのアップルストアでは発表当初、3月27日〜4月3日の出荷予定となっていたものだ。

今回の製品の特徴はシンプルだ。

「キーボードが変わって、静音性とタイプ感が改善した」「性能が上がってコスパが良くなった」

もう、この点だけと言っていい。2行を読めば原稿は終わり……と言いたいところなのだが、それではさすがに情報不足。というわけで、もっとわかりやすく、レビューをしてみよう。旧モデルMacBook Airのユーザーであればあるほど、「買い換えなきゃ!」と感じるはずだ。

タイプしてみればわかる大きな違い。買い換える価値のある進化

新型MacBook Air

左(シルバー)が自前の2018年モデル、右(スペースグレイ)が新型MacBook Airだ。

撮影:西田宗千佳

新型MacBook Airを、外観だけで旧モデルと見分けるのは困難だ。若干サイズが変わっているため、ピッタリフィット型のケースなどでは不都合もあるかもしれないが、使う分には「同じ」といって差し支えない。重量は約40g重くなっているが、インターフェイスの数も位置も同じ。MacBook Airの欠点である「端子不足」に悩まされるのは、変わらずマイナス点といえる。

新型MacBook Air

スペースグレイが2020年モデル、シルバーが2018年モデル。見た目には驚くほど変わらない。ディスプレイの性能も同じだ。

撮影:西田宗千佳

新型MacBook Air

側面のUSB-C端子の構成も同じ。

撮影:西田宗千佳

CPUなどの性能面はともかく、ディスプレイやスピーカーなどにも変更はない。試用機材が私物のMacBook Air(2018年モデル)と色違いだったから良かったものの、同じだったら戸惑っていたことだろう。

だが、本体を開いてキーボードをタイプすると、「ちょっと驚くほどの違い」がある。

論より証拠、タイプの様子を動画収録してみた。

これは、同じ距離に録音機材を置き、タイプする時の音を「iPad Pro用Smart Keyboard(2018年モデル用)」「MacBook Air(2018年モデル)」、そして新MacBook Airで比較したものである。音を出して再生していただきたいが、目で見てもわかるように、ピークメーターによる違いも映像化してある。

新型MacBook Air

こんな具合に、MacBook Airの横に高音質録音対応のICレコーダーを置いて、タイピング音を記録した。数値で見ると、新型の静音化は一目瞭然。

撮影:西田宗千佳

iPad Pro(2018年モデル)用のSmart Keyboard、MacBook Air(2018年モデル)、そしてMacBook Air(2020年モデル)のタイピング音を比較。ピークメーターが示す音量の大きさが全く違う点にも注目。

撮影:西田宗千佳

もう、本当に違うのだ。

このところのアップル製品のキーボードは、「キーが沈み込む範囲を薄くし、指の押し下げ量を減らして力がいらないキーボード」を指向する一方で、「キーの沈み込み範囲が狭い分、底にあたる時に大きな音を立てやすく、底打ちの際に逃げる力で疲れやすい」という悪い特徴もあった。

今回のMacBook Airのキーボードは、構造を見直して、沈み込みの深さを「1mm」にし、ラバードームでキーを支える形にすることで、底打ち感を軽減し、キーの音が目立たない形にしている。

MacBook Airのキーボード新旧比較

1枚目のスペースグレイの2020年モデルと、2枚目のシルバーの2018年モデルは、見た目にもキーの飛び出し量がはっきりと異なる。

撮影:西田宗千佳

要は「わりと一般的な構造」のキーボードに戻したのだが、効果は絶大だ。

筆者はタイプの力が強く、比較的、タイピング音を立てやすい。なので、MacBook Airなどを使っている時には、周囲に音が目立っていないか、気にすることが多い。ビジネス街のカフェなどに入ると、耳慣れたタイプ音が聞こえてくることが多いので、多くの人が似たような体験をしているのだろう。

細かく分析すると、メインのキーを押し下げはじめた時の音が大きく違うのがわかる。

「チャカチャカ」とした音に感じづらくなったのはそのためだろう。キーを押し切ったときに底づきしづらくなったためか、「ペチン」という音でもない。もちろん無音ではないので、静かな場所ではそれなりに音が聞こえるが、カフェやオフィスなどで「高い音が目立つ」ことはなくなった印象だ。

一方、エンターキーはどうしても力が入りやすいからか、「パチン」という感じで音が聞こえやすい。まあ、これは「そういうもの」と思うしかない。

音だけでなく、タイピングそのものの感触も改善されている。ラバードームでキーを支える構造であるためか、「キーを押し下げる」ために必要な力は大きくなったように感じる。だから、これまでのMacBook Airから移行すると一瞬「キーが重い」と感じるはずだ。

これは、他のノートPCでも同じようなところがあり、それだけ既存モデルは軽い力でタイプできていた、ということになる……のだが、すぐに慣れるので問題というほどでもない。全体的には、フィーリングの改善のメリットの方が大きいだろう。

この構造のキーボードは、2019年に発売された「MacBook Pro 16インチモデル」から採用されたもので、5月に発売予定のiPad Pro用の「Magic Keyboard」でも採用される。「MacBook Pro 16インチモデル」は筆者ももちろんすでに触れており、変化は体感していたものの、日常使い慣れたMacBook Airに搭載されるとこんなにインパクトがあったのか、と改めて驚いた次第だ。

文字入力作業が多い人なら、正直、このキーボードだけで買い換える価値はある。

旧モデルに対し「倍」の性能、ファンが回らずさらに静か

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MacBook Air公式ページでも約2倍高速になった、とアピールしている。

出典:アップル

とはいえ、もちろんMacは安い買い物ではない。デザインも機能もそう変わらないMacBook Airの買い換えには戸惑いを感じる人もいそうだ。筆者もそうである。

そういう人には「パフォーマンスアップ」という絶好の言い訳が用意されていた。

今回テストに使った機材は、CPUにインテルCore i5(4コア、クロック周波数1.1GHz/最大3.5GHz)・メモリー8GB・ストレージ512GBのもの。カタログモデルとしては上位機にあたる。

それに対して、比較対象として用意した私物のMacBook Air(2018年モデル)は、Core i5(2コア、クロック周波数1.6GHz/最大3.6GHz)・メモリー8GB・ストレージ256GBのものだ。CPUが違う、と思っていただければいい。

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下位モデル(左)と上位モデルの価格比較。

出典:アップル

2018年モデルは正直なところ「CPUの非力さ」が気になっていた。もちろん、ウェブを見たりオフィスアプリを使ったり、といった用途では不満がないし、動画編集なども遅いができなくはない。

それより気になっていたのは、比較的「性能に余裕がない」印象があったことだ。ちょっと裏で重い作業(例えば、大量のファイルの転送)などを行うと、ファンが激しく回りはじめてやや耳障りなのだ。

2020年モデルは触った時に速度差を感じるか……というと、そこまでではない。ただ、明確に処理に余裕を感じる。なかなかファンが回りはじめない。もちろんフルに高負荷な処理を行うとファンの音は目立つのだけれど、2018年モデルよりすぐにファンが止まる印象だ。なので、使っていて「静かになった」感じがする。

ベンチマークアプリでも「2倍速い」。上位機は明確な性能差

Mac用の定番ベンチマークソフト「GeekBench 5」でのテストによると、2020年モデルのCPUの値は「シングルコア/981、マルチコア/2460」。2018年モデルでは「シングルコア/590、マルチコア/1380」だったから大幅な向上だ。アップルは「2倍」と広告で説明しているが、確かにそのくらい大幅にパワーアップしている。同じ4コアのCPUを採用したMacBook Proに迫る値だ。

GeekBenchによるCPU性能比較

GeekBench 5によるCPU性能比較。白い画面が2018年モデル(2コア)での、黒い画面が2020年モデル(上位の4コアモデル)でのCPUテストの値。おおむね倍といっていい。

GPUも同様で、「3483」が「7330」(ともに「Metal」でのテスト)と向上している。この値は、インテルCPUを採用したノートPCに使われる、CPU内蔵の「統合型」と呼ばれるタイプのGPU性能としては最高級のもの。ゲームもかなりスムーズに動くようになってくるクラスだ。

ただしそれでも、iPad ProのGPUには敵わないし、NVIDIAやAMDの「ディスクリート型」と呼ばれるGPUに比べると、ノート型向けのもので低価格なものとですら、3割から4割は性能が劣る。「GPUにゴリゴリの負荷をかけるゲーム」にはまだ能力が不足しているが、Apple Arcadeで提供されるような比較的規模の小さなゲームなら大丈夫だ。MacBook Airの用途を考えれば十分以上の性能と言える。

その代償としてか、バッテリー動作時間はちょっと減っている。2018年モデルでは「最大12時間のワイヤレスインターネット利用、13時間の動画再生」という形になっているが、2020年モデルでは「最大11時間のワイヤレスインターネット利用、12時間の動画再生」になった。かといって、劇的にバッテリーの減りが速くなった、という印象はないので、これも納得できるトレードオフ、といっていい。

価格が下がって悩ましい「モデル選択」

キーボード

新旧のMacBook Airのキーボードは、構造以外にもこの右下のカーソルキーの配置が異なる。新型は逆T字型になっている(写真は旧型)

出典:アップル

さらに、価格も下がった。筆者が2018年に買った時には、上位機種が15万6800円、下位機種が13万4800円だった。

それが2019年モデルで13万9800円・11万9800円に値下げされていたが、2020年モデルはさらに、13万4800円・10万4800円になっている。しかも、ストレージ容量は「倍」になっていて、上位機種で512GB、下位機種で256GB。筆者が2018年に上位機種を買ったのは256GBのストレージが欲しかったからなのだが、今回のモデルならば下位機種でも十分、ということになる。実質約5万円下がっている計算だ。

2018年・2019年モデルでは、上位機種・下位機種ともに「CPU性能は同じ」だったが、2020年モデルは、下位モデルは「Core i3・2コア」に下がる。今回そちらはテストできていないので性能差は予測になるが、テストした上位機種とは異なり、「前モデルの2倍の速度」とはいかず、小幅な性能向上にとどまる可能性が高い。

とすれば、おすすめは圧倒的に上位モデル。とはいえ、「キーボードの改善をお手軽価格で」というのが狙いなら、下位機種を選ぶのも手だ。

(文、写真・西田宗千佳)

編集部より:初出時、新型MacBook Airの重量についての記述が間違っておりました。お詫びして訂正致します。 2020年3月20日 22:00

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