新型コロナの症状があった39歳女性、検査結果を待っている間に自宅キッチンで死亡していた —— 発見した交際相手が明かす

ナターシャ・オットさん

検査結果を待つ中、キッチンで死亡しているのが見つかったナターシャ・オットさん(39)。

Josh Anderson/Facebook

  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状があったナターシャ・オットさん(39)は3月20日(現地時間)、自宅キッチンで死亡しているのが見つかった。オットさんの交際相手がフェイスブックで明かし、注目を浴びている。
  • アメリカのルイジアナ州ニューオーリンズにある医療機関で働いていたオットさんは、新型コロナウイルスの検査を辞退していた。オットさんの職場であるこの医療機関には、5人分の検査キットしかなかったからだという。
  • その後、オットさんはインフルエンザの検査で陰性となり、最終的に職場の新型コロナウイルスの検査キットを使ったが、オットさんは結果が遅れていると交際相手に話していたという。
  • 家族によると、彼女は健康だったという。オットさんの検査結果は、交際相手がキッチンの床に倒れているオットさんを見つける前に届くことはなかったという。

ルイジアナ州ニューオーリンズに住むナターシャ・オットさん(39)は先週、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような症状を経験した後、自宅キッチンで死亡しているのが見つかった。オットさんの交際相手ジョシュ・アンダーソンさんが3月21日、フェイスブックへの投稿で彼女のストーリーを初めてシェアした。

アンダーソンさんの3月21日の投稿によると、オットさんは3月10日頃から体調不良を感じ始めたようで、メールで「呼吸器系の風邪」を引いたみたいだと話していたという。「微熱」があると言っていたと、アンダーソンさんは書いている。

オットさんは、ソーシャルワーカーとして「クレセントケア(CrescentCare)」というHIVとともに生きる人々のためのクリニックで働いていて、体調不良のため仕事を早退していた。症状はあるものの、新型コロナウイルスに感染している可能性は低いとオットさんは言われていたという。職場にはCOVID-19の検査キットが5人分あったが、各地で検査キットの不足が叫ばれる中、オットさんは使わないことに決めた。

「うちのクリニックには新型コロナウイルスの検査キットが5人分しかないの。わたしは検査を辞退したから、誰か他の人が受けられるわ」とオットさんは書いていたとアンダーソンさんは語った。

オットさんには死亡するまで、呼吸器系の風邪のような症状に加え、発熱や食欲不振などがあったと、地元紙『New Orleans Advocate』は報じている。クレセントケアのホームページには、オットさんを「素晴らしいソーシャルワーカーであり、同僚であり、人間だった」とその死を悼むコメントが掲載されている。

クレセントケアのCEOノエル・トウィルベック(Noel Twilbeck)氏はNew Orleans Advocateの取材に対し、オットさんがこのクリニックの従業員であり、死亡したことは認めたが、「彼女の家族を尊重し、これ以上のコメントは差し控えると話した」という。

Insiderはクレセントケアにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

COVID-19をめぐっては、若い世代でも重症化したり、死亡した例が報告されているものの、当初のデータは高齢者が最も影響を受けると示していた。米疾病予防管理センター(CDC)が3月18日に公表したレポートによると、アメリカで新型コロナウイルスに感染、死亡した人の約80%は65歳以上だ。ウイルスに感染したとツイートしていたニューヨーク在住のデイビッド・ラットさん(44)は3月23日の時点で、人工呼吸器をつけ、予断を許さない状況だという。

オットさんは死亡する10日ほど前、アンダーソンさんに「オクスナーに行こうとした」とメールを送っていたという。これは恐らくニューオーリンズから少し離れたオクスナー医療センターのことで、オットさんはそこでインフルエンザの検査を受けようとしたが、プライマリーケアの医師に診てもらうまでに1週間待たなければならないと言われた。代わりに、オットさんは職場でインフルエンザの検査を受けられた。検査の結果は陰性だったとアンダーソンさんは話している。

「熱が上がらなければ、検査する必要はないって。大丈夫そう」とオットさんは3月13日にメールで報告してきたと、アンダーソンさんはいう。

だが、その2日後、オットさんは職場の数少ない新型コロナウイルスの検査キットを使う必要があるかもしれないとアンダーソンさんに伝えた。

「まだそこまで熱っぽい感じはないけど、明日職場で検査を受けるかも。多分、大丈夫だと思う。薬効のあるウィスキーを飲もうとしたんだけど、気分が優れなくて。わたしは大丈夫。愛してるわ」

アンダーソンさんは、オットさんは「ストイックな魂の持ち主で、その話し方や冗談好きな態度があらゆることを大したことでないように聞こえさせた」という。

3月16日、オットさんはやっと新型コロナウイルスの検査を受け、その翌日には「大丈夫そう」とアンダーソンさんに話していたという。

ところがその2日後、オットさんはアンダーソンさんに「もう体調が悪いのはイヤ」と言い、「どうしてまだ体調が良くならないのか分からない」と伝えていた。

検査結果が出るまでに5日かかると話していた

愛犬の散歩を手伝うためにアンダーソンさんがオットさんの家を訪ねると、オットさんは肺に「何か」を感じると訴えた。検査結果が遅れているとも話していたという。

3月20日、オットさんから朝のメールが来たが、アンダーソンさんのメッセージにオットさんからの返信はなかった。そして夜の8時頃、オットさんの自宅を尋ねたアンダーソンさんがキッチンの床で亡くなっているオットさんを発見した。

アンダーソンさんによると、3月21日の時点でオットさんの検査結果はまだ届いていなかった。その後、フェイスブックへの投稿は2度アップデートされているが、アンダーソンさんはオットさんの検査結果が届いたかどうかには触れていない。Insiderはアンダーソンさんに取材を申し込んだが、回答は得られなかった。

「我々の政府は、このパンデミックに対して準備不足だった。それが人命を犠牲にする」とアンダーソンさんは自身の投稿で書いている。

「愛する人を失うかもしれないと思って大切にしよう。そして、自分が大切に思っていることを相手に伝えよう」

平和部隊の一員としてアフリカのトーゴで働いていた時に、腹痛や下痢などの症状が続くジアルジア症にかかったことがある以外、オットさんは「健康」だったと、オットさんの姉妹だというエミリー・コールソン・スタメッツさんはフェイスブックに書いている。

New Orleans Advocateによると、ニューオーリンズの医療関係者は連邦政府から受け取った検査キット数の少なさや、検査結果が出るまでに時間がかかり過ぎていることに不満を示している。同紙によると、医療機関では深刻な症状を見せていない限り、体調が悪くても検査はできないという。

感染者数が急増する中、アメリカは必要な検査キットの数を揃えるのに苦労し続けている。

Insiderはオクスナー医療センターにもコメントを求めたが、回答は得られなかった。

[原文:A 39-year-old otherwise healthy New Orleans woman who showed signs of the novel coronavirus died alone in her kitchen awaiting test results

(翻訳、編集:山口佳美)

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