経済活動再開のために新型コロナ対策を終わらせないで! 公衆衛生の専門家らがトランプ政権に警告

ファウチ所長、トランプ大統領

米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の所長アンソニー・ファウチ博士とトランプ大統領。

AP

  • 米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の所長アンソニー・ファウチ博士や公衆衛生当局の関係者らは、共和党の指導者らに対し、経済活動を再開するために新型コロナウイルスの封じ込め対策を終わらせることがないよう警告している。ワシントン・ポストが報じた。
  • トランプ大統領は3月22日夜と23日朝にツイッターで、早ければ来週にもアメリカ経済を通常通りに戻すよう呼びかけた。
  • 経済の一部を再開させたいというトランプ大統領の主なモチベーションは、景気の悪化が自身の11月の再選に悪影響を及ぼすのでないかとの懸念から来ていると、ワシントン・ポストは報じている。
  • 州知事らも、状況は今後さらに悪化するだろうと警鐘を鳴らしていて、経済活動、旅行、集会を制限する積極的な措置を取っている。

トランプ政権の新型コロナウイルス対策をリードする国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の所長アンソニー・ファウチ博士や公衆衛生当局の関係者は、共和党の指導者らに対し、経済活動を再開するために新型コロナウイルスの封じ込め対策を終わらせることがないよう警告している。3月23日(現地時間)、ワシントン・ポストが報じた

トランプ大統領は3月22日夜と23日朝にツイッターで、早ければ来週にもアメリカ経済を通常通りに戻すよう呼びかけた。これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の最悪のアウトブレイク(大流行)はまだこれからだと警告する州政府や公衆衛生の専門家の立場と衝突するものだ。

3月24日現在、アメリカでは新型コロナウイルスの感染者数は4万3600人を超え、少なくとも553人が死亡している。最も感染者数が多いのはニューヨーク州で、2万人以上の感染が確認されている。

新型コロナウイルスの感染拡大は、アメリカ経済にかつてない打撃を与えている。業界全体がほぼストップし、株式市場は下落、数百万人が仕事を失うまたは大幅に労働時間が削られたことで失業の申請が急増している。

こうした中、複数の共和党関係者や保守系メディアの司会者も 「社会距離戦略(人と人との接触を極力減らすこと、ソーシャル・ディスタンシング)」や外出規制の縮小を呼びかけ、そうすれば主要産業で働く人々が仕事に戻り、経済を活気づけることができると主張している。当初は旅行・サービス業がCOVID-19の打撃を最も受けていたが、外食やエンターテインメント、その他の産業でも数百万人が職を失っている

できるだけ早く経済の一部を再開させたいというトランプ大統領の主なモチベーションは、失業者の急増と景気の悪化が自身の11月の再選に悪影響を及ぼすのでないかとの懸念から来ていると、ワシントン・ポストは報じている。トランプ大統領は下落する株式市場を「凝視」し、国の大半が夏の初め頃まで活動停止となることに「イライラしている」という。

しかし、ファウチ博士やその他の公衆衛生当局のトップらは、トランプ政権や連邦議会の議員らに対し、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止め、すでに悲鳴を上げているアメリカの医療体制へのプレッシャーを緩和するために、今後数週間、アメリカは社会距離戦略と外出規制を縮小ではなく強化する必要があると警鐘を鳴らしていると、ワシントン・ポストは伝えた

トランプ大統領は22日夜、「対策を問題そのものより悪くすることはできない」と書き、疾病予防管理センター(CDC)が設定し、先週月曜日に始まった15日間の社会距離戦略が終わったら「どの道を進みたいか、我々は決断するだろう! 」と付け加えた。

その後、トランプ大統領はウイルスの危険性や深刻度について誤った情報を拡散している複数のアカウントをリツイートした。

あるユーザーは「自分が感染した、彼らが感染したと分かれば、わたしたちには他人から離れているだけの分別がある! 」とつぶやき、また別のユーザーは「そうだ。15日間。その後は必要に応じてハイリスク・グループを保護し、残りの人は仕事に戻る」とツイートしている。

だが、ファウチ博士を含め公衆衛生の専門家たちは、感染力の強いこのウイルスは自覚症状のない感染者からも広がり得ることから、現時点では社会距離戦略が必要不可欠だと強調している。

NBCの3月20日のインタビューでファウチ博士は、1週間以内に通常の生活に戻るだろうとの考えに水を差し、「流行のカーブなどを見れば、少なくともあと数週間はかかるだろう」と語った。

「突然、来週や再来週に終わるとは考えられない。そんな可能性はない。数週間後になるだろう」とファウチ博士は付け加えた。

経済を復活させようというトランプ大統領の呼びかけに、少なくとも共和党の下院議員の1人、ジョディー・ハイス(Jody Hice)議員は賛成だ。ジョージア州選出のハイス議員は「ビジネスがストップしていること」や「失業者の急増」を嘆き、「病気と我々の『苦境』どっちの方が悪いか? アメリカ人は困難に立ち向かう。恐怖に屈するな! 神を信じよ」と訴えている。

ワシントン・ポストによると、他にもウィスコンシン州選出のロン・ジョンソン(Ron Johnson)上院議員やペンシルベニア州選出のパット・トゥーミー(Pat Toomey)上院議員といった共和党の有力議員たちも、経済を一部再開させることに関心を示しているという。

そして、国家経済会議(NEC)のラリー・クドロー委員長も3月23日、Fox Newsに出演し、「大統領は正しい」と語った。

「対策は、感染症より悪くなり得ない」とした上で、「我々は難しい妥協をしなければならないだろう」とクドロー委員長は付け加えた。

一方で、州知事や州レベルの指導者らは、状況は今後さらに悪化するだろうと警鐘を鳴らしていて、経済活動を制限し、人の集まる場所を閉鎖する積極的な措置を取っている。

「我々はまだ嵐を前に、比較的穏やかな状況にある。今後、感染者数は大きく増加するだろう。医療制度がキャパシティーを超える需要に見舞われるのを我々は目にするだろう」とニューヨーク州のクオモ知事は3月23日、記者会見で述べた

「これを乗り切ったら、我々はレーザー光線のように経済に集中する」

[原文:Public health experts including Dr. Anthony Fauci are warning Trump officials against sending Americans back to work to re-start the suffering economy

(翻訳、編集:山口佳美)

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