Yana Paskova/Getty Images
- マイクロソフトの共同創業者で慈善家のビル・ゲイツ氏は、アメリカ経済は当面、通常通りに戻るべきでなく、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)中はビジネスをストップさせたままにしておくべきだと言う。
- 「いいとこ取りができるなどと言う人間は非常に無責任だ」とゲイツ氏は語った。
- アメリカのトランプ大統領は、ウイルスの感染拡大を食い止めるために実施されているアメリカの経済活動に対する大幅な制限を来週にも解除すべきかどうか検討している。
マイクロソフトの共同創業者で慈善家のビル・ゲイツ氏は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の最中にトランプ大統領がこのままアメリカ経済に対する制限を解除し始めれば、その経済的影響は悲惨なものになるだろうと警鐘を鳴らしている。
ゲイツ氏はトランプ大統領を名指ししてはいない。だが、ゲイツ氏は3月24日(現地時間)のTEDのインタビューで、トランプ政権を痛烈に非難した。
「妥協点などというものはない。『隅の犠牲者たちは無視して、レストランに行き、新しい家を買いに行き続けて。GDPの成長が最も重要なことだと考えている政治家がいるかもしれないから、消費し続けてほしいんだ』とはまず言えないだろう」
「いいとこ取りができるなどと言う人間は非常に無責任だ」とゲイツ氏は語った。
もし自分が大統領だったら何をするか? と尋ねられると、ゲイツ氏は経済に対する懸念より人々の健康を守ることを優先するだろうと答えた。
「(新型コロナウイルスの)経済への影響は本当に大きい。わたしたちが生きているうちに、経済にこんなことが起きたことはない」とゲイツ氏は語った。
「だが、経済を回復させるのは…… 人を生き返らせるよりも可能なことだ。だからこそ、わたしたちは病気と死の痛みを最小限にするために、経済面での痛み —— 大きな痛み —— を受け止めようとしている」
ゲイツ氏は今後、さらに6~10週間はビジネスをストップさせたままにしておくべきだと言う。
トランプ政権は、アメリカの経済活動に対する異例の制限を縮小するかどうか検討している。ウイルスの感染拡大を阻止するため、各地で多くの企業がビジネスをストップさせている。そして、公衆衛生の専門家たちはアメリカ市民に対し、当面は家にとどまり、「社会距離戦略(人と人との接触を極力減らすこと、ソーシャル・ディスタンシング)」 を実践するよう求めている。
ただ、政権内では好調だった経済が突然、急落していることへの懸念が増大している。ホワイトハウスで開かれた3月23日夜の会見で、トランプ大統領は「対策を問題そのものより悪くすることはできない」と述べた。
しかし、公衆衛生の専門家たちは社会距離戦略という制限を緩和すれば、ウイルスの感染拡大が加速する可能性があると指摘する。感染症の専門家で、トランプ政権の新型コロナウイルス対策をリードする国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の所長アンソニー・ファウチ博士は、もう数週間は社会距離戦略を維持するよう求めている。連邦政府が3月16日に示した社会距離戦略の実施を含む15日間のガイドライン(指針)は、3月30日で終了する。
ただ、トランプ大統領は3月24日、「イースターまでにアメリカの活動を再開させたい」と発言している。イースター(復活祭)は4月12日だ。
3月25日現在、アメリカの新型コロナウイルスの感染者数は5万4000人を超え、少なくとも728人が死亡している。
(翻訳、編集:山口佳美)