撮影:鈴木愛子
Business Insider Japan読者にも多い「30代」は、その後のキャリアを決定づける大切な時期。幸せなキャリアを歩むためには、転職にまつわる古い“常識”にとらわれず、刻々と変化する転職市場のトレンドをアップデートすることが大切です。
この連載では、3万人超の転職希望者と接点を持ってきた“カリスマ転職エージェント”森本千賀子さんに、ぜひ知っておきたいポイントを教えていただきます。
今回は、読者の方からお寄せいただいたご相談にお答えします。
テーマは「新しい職場での振る舞いで心がけるべきこと」。転職だけでなく、異動・転勤・出向などで新しい職場に入っていく皆さんも参考にしてみてください。
入社直後の時期、心がけるべきことは?
人の印象って、「初期」に受けたものがある程度固定化されるものです。最初の印象は、後々にも影響しがち。最初に好印象を抱かれると、「飲み会など会合があると声をかけてもらいやすい」「分からないことを聞いた時に快く教えてもらえる」「議論になった際、意見を好意的に受け取ってもらえる」などのメリットがあります。
入社後1~2週間で、あなたに対して同僚が抱く印象は、ほぼ固まると言っていいでしょう。ですから、この期間の振る舞い方はとても大切です。
「もともと愛想のいいキャラじゃないんだけど」「人に媚びてまで好印象を持ってもらえなくてもいいんだけど」というタイプの人も、最初のうちはなるべく好印象を与えるように意識したほうが得。なぜなら、周囲の人たちが距離を縮めやすくなり、何かと話しかけてくれたり、困った時に助けてくれたりするからです。
そうすれば、組織のルールなどを早くキャッチアップできるので、本来の担当業務でのパフォーマンスを早く出せるようになりますよ。
以降では、新しい同僚たちに好印象を持ってもらうために、特に意識して実践したいことを4つ挙げてみます。
朝は他の人より早く出社
出社時間をちょっと早めるだけで思わぬ効果が期待できる。
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出社時間は意外とチェックされています。人より早く出社するだけで、周囲は「意欲がある」と感じてくれるものです。最初の数週間だけでもいいので、定時より30分~1時間ほど早めに出社してみてはいかがでしょうか。
他にも早く出社している人がいれば、コミュニケーションをとるチャンスでもあります。「午前のアポの前に急いで企画書を仕上げなければ」などと集中モードに入っている人には声をかけるべきではありませんが、電車の混雑を避けるために早く出社し、朝食をとりながらネットニュースを見ている人などもいるかと思います。そういう人には積極的に声をかけてみるといいでしょう。
就業時間に入ると皆バタバタして、声をかけづらいもの。ゆったりとした朝の時間帯に、気になることを聞いておきましょう。
ちなみに私が「新入社員」だった頃は、朝、まだ誰もいないオフィスで、同僚のデスクを雑巾がけしながら観察していました。
「家族の写真」「ビジネス書」「キャラクターグッズ」など、置いてあるものからその人の趣味嗜好や関心事が何となくつかめるので、休憩時間などにそれをきっかけに話しかけたことも。また、仕事に役立ちそうな企画書や資料が置かれているのを見つけた時は、その人にお願いしてコピーさせてもらうこともありました。
挨拶は「自分から」「分け隔てなく」
「おはようございます」「お疲れさまです」などの挨拶は、同僚からされた時に返すのではなく、できれば自分からするように心がけましょう。「〇〇さん、おはようございます」と、あえて名前を呼ぶのも有効。顔を見合わせて声を掛け合う頻度が高まれば、それだけ距離が縮まりやすくなります。
挨拶の声はなるべく大きく、ハツラツと。明るい挨拶の声がフロアに響けば、オフィスが活気づきます。それだけでも「〇〇さんが来たことで、空気が変わった」と好意的に感じてもらえて、入社を歓迎してもらえるでしょう。
「挨拶は受け身ではなくこちらから積極的に。人によって態度を変えるのは絶対にNGです」と森本さん。
撮影:鈴木愛子
例えば、ある中途入社者の男性は、元気な挨拶の声が印象的な人だったため、入社半年にして社員総会の司会に抜擢されました。そこで全社員に存在を知られ、元気なキャラクターが好評だったことから、他部署の人からも声をかけられるように。そうして社内ネットワークを早く築くことができたのです。
なお、相手によって挨拶したりしなかったりと、態度を変えるのは絶対にNGです。上長には丁寧に挨拶して、年下の社員や派遣・アルバイトスタッフはスルー……ということのないように。無意識にやってしまいがちなので注意してくださいね。
雑用を積極的に引き受ける
経験を買われ「即戦力」として入社したとしても、新しい職場では「新人」です。入社後1カ月くらいの間は、パフォーマンスを発揮するのはなかなか難しいもの。しかも、既存メンバーには、あなたに「教える」という仕事が発生するため、余分な負担をかけることにもなります。
そこで、まだ「本領発揮」できない期間中は、皆が面倒がるような雑務を積極的に引き受けることをお勧めします。例えば、資料の整理、コピー機の用紙補充、議事録作成など。「何かお手伝いできることはありますか」と声をかけ、スキマ仕事を引き受けましょう。たとえあなたが、リーダーやマネジャーのポジションで入ったとしても、です。
ある中途入社者は、会議で「最近、このマーケットにこんな動きがあるようだ」という話題が出た時、「私がそれについて調べてリポートします」と引き受けていました。また、営業職として中途入社した方は、ベテランでありながら、遠方の企業や予算が少なそうな零細企業からの問い合わせに対し、「私が行きます」と手を挙げていました。
面倒なことを引き受ける姿勢を見せれば、「損得で動く人じゃないな」「組織貢献の気持ちを持っている人だな」と、信頼を得ることができるでしょう。
転職者を受け入れたことがある人たちからは「経験豊かなベテランなのに、『新人だから』と率先して雑務を引き受ける姿勢に感動した。尊敬できる人物だと思った」との証言があります。
「雑務を引き受けていたら、その後も便利屋として扱われてしまうのでは」などという心配はいりません。本来の担当業務に集中するようになれば、1人に雑用を押し付けられるようなことはないはずです。
「遅れているもの」の指摘はNG
「好印象を与える」というより、「反感を持たれない」ために注意したいこと。それは、新しい職場の「時代遅れのツール・手法」を指摘しない、ということです。
「このソフト、バージョンが古いんですね」
「○○の処理、まだ手作業でやってるんだ」
「社内連絡がメールって面倒じゃないですか。僕の前の会社はSlack使ってましたよ」
何の悪気もなく言ってしまいがちですが、言われた既存社員はバカにされたような気がして不快感を抱く可能性大です。
最近はさまざまなIT・ウェブツールが出てきていますが、導入が進んでいる企業とそうでない企業があります。そうしたツールをはじめ、新しい職場の設備や環境面が前の会社より遅れていると感じても、うっかり口に出さないようにしましょう。
職場になじんだ頃に、「こんなツールも便利ですよ」「こういうやり方なら効率アップできると思います」と提案すれば、反感を抱かれることなく、むしろ歓迎されると思います。
職場が異なれば「常識」「価値観」も異なります。相手を尊重し、相手の立場を思いやって発言・行動することを心がけて、早く人間関係を築いてくださいね。
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※本連載の第10回は、4月6日(月)を予定しています。
(構成・青木典子、撮影・鈴木愛子、編集・常盤亜由子)
森本千賀子:獨協大学外国語学部卒業後、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。転職エージェントとして幅広い企業に対し人材戦略コンサルティング、採用支援サポートを手がけ実績多数。リクルート在籍時に、個人事業主としてまた2017年3月には株式会社morichを設立し複業を実践。現在も、NPOの理事や社外取締役、顧問など10数枚の名刺を持ちながらパラレルキャリアを体現。2012年NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。『成功する転職』『無敵の転職』など著書多数。2男の母の顔も持つ。