イベント自粛下で迫る株主総会。会場変更やネット中継…対応迫られる企業

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新型コロナの影響で株主総会を控える企業は対応に追われている(写真はイメージです)。

Shutterstock

3月と6月に多く開催される株主総会だが、2020年は新型コロナウイルスの影響にさらされている。

東京都は4月12日まで、大規模なイベント開催の自粛を要請。ただし、会社法では株主総会の「開催場所」を定めなくてはならないという規定があり、株主を会場に呼ばない完全にオンラインでの株主総会は難しいのが実情だ。

ほとんどの企業が決算後3カ月以内に株主総会を開くが、12月決算の企業で毎年3月に株主総会を開いている企業の中には、会場の変更を余儀なくされたり、感染予防のためインターネットで中継を行ったりと対応に追われている。

鎌倉のお寺での開催は断念

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面白法人カヤックが2015年以降、株主総会を行ってきた建長寺。

提供:面白法人カヤック

鎌倉に本拠を置く「面白法人カヤック」では、2015年の上場以来、鎌倉五山第一位の禅寺「建長寺」で株主総会を開催していたが、今年は自社のオフィスに会場を変更した。

「建長寺から3月中旬になって、感染拡大防止の観点から会場を変更してほしいという打診があった。『やっぱりきたか』と思いました。株主に鎌倉を訪れてもらいたいという思いから、鎌倉を代表する寺を会場に選んできたので、現状ではオンラインでの中継などは考えていません」

同社管理本部財務部の吉田剣悟さんはそう語る。

2020年3月26日に開催する株主総会では来場者にマスクを配布したり、手の消毒を求めたりと感染予防を行うほか、発言者ごとのマイクの消毒や、登壇者と株主との間も約4メートル開けるなどの対策を取る予定だ。

2019年の株主総会には、株主約80人が参加。 会場となるオフィスでは、例年並みの人数を収容できるが、感染予防のために2メートル間隔を空けて座るなどした場合は、40人程度しか座れないという。

不安は株主総会前の「社員の感染」

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2019年3月に行われた面白法人カヤックの株主総会の様子。

提供:面白法人カヤック

2019年3月の株主総会では、終了後に株主と役員らが意見交換する場を設けたり、レストランで株主との懇談会を実施したりしていたが、2020年は中止する。

現状で一番怖いのは、社員に感染者が出ることだという。

会社法では、手続きを踏めば株主総会を延期することは可能だが、実際はそう簡単にはいかない。

「資料の作り直しが必要になるなど、何カ月もかけてきた作業をもう一度やるのは考えにくい。現状ではリモートワークを行っている社員も多いこともあり、再度の資料準備も難しい。延期は現実的ではない」(吉田さん)

感染予防のため、同社ではリモートワークを推進。出社している社員は通常の4分の1程度で、延期となれば新たな業務が大量に生まれることになる。

「自社オフィスで株主総会を行うため、感染者がでたら延期はやむを得ないと思います。とにかく、感染者が出なければいいのですが」(吉田さん)

オンライン中継に注力

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サイボウズでは新型コロナの影響を受け、株主に対し「可能な限り書面での議決権の事前行使」を求めている。

撮影:横山耕太郎

コロナへの対応で、ネットでの中継に注力する企業もある。

ソフトウェア会社「サイボウズ」では、2020年3月29日の株主総会の様子をオンライン中継することに決めた。

株主総会自体は予定していた通りイベントホールで開催するが、可能な限り来場は控えてもらうため、書面では議決権の事前行使を呼びかけた。

同社の2019年の株主総会には、株主190人、株主以外の参加者120人が集まった。

2020年も同じ会場で開くが、感染予防策として、席は約1メートルおきに配置した上で、来場者が少ない場合は、隣の席は空けて座ってもらうように案内するという。

株主との「対話重視」の予定が…

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サイボウズの2019年の株主総会の前には、社長らが登壇するイベントが開催された。

提供:サイボウズ

サイボウズでは、2018年の株主総会から株主とのコミュニケーションを重視する取り組みを行ってきた。

株主総会の前に、同社の青野慶久社長や堀江貴文氏が参加するトークイベントを開催したり、総会後には、役員と株主が語り合う「トークセッション 株主のから騒ぎ」を開いたりと、新しい取り組みを進めてきた。

同社によるとその成果もあり、株主は20~50代が8割を占め、30代が最も多いという。

財務経理部の田中那奈さんは、株主総会の改革について次のように語る。

「『予定通りに進むシャンシャンの株主総会は、会社のイベントで一番つまらない』という役員の声もあって、改革に取り組んできた。今年はさらに踏み込んで、株主総会の中で、社長らと株主が企業理念について意見交換する企画を考えていたのですが、コロナの影響で十分な時間が確保できないため、実施は中止になりました」

どこまでウェブ化するか?試金石に

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「株主との意見交換など対話型の株主総会を目指している」と話すサイボウズの田中那奈さん(右)。

撮影:横山耕太郎

サイボウズの株主総会をオンライン中継で見る株主には、リアルタイムでの議決権はない。

また質疑応答はインターネット上でも質問を受け付けるが、議長が参考として読み上げる形をとるなどの制約があるという。

「インターネット上でうまく対話ができるかどうかを試す場にもなると思っています。こんな機会がないと、『余裕ができたらやろうかと』なかなかオンライン化を進めることはできなかったので。今後の選択肢として、どこまでウェブ化を進めるのか、判断材料にしたい」(田中さん)

コロナを契機にオンライン化進む?

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新型コロナの影響で、上野公園では多く人がマスクを着けている。3月22日撮影。

REUTERS/Issei Kato

企業法務に詳しい中島経営法律事務所の原正雄弁護士は、6月に集中する株主総会への影響を懸念する。

「現在の法律では、完全にオンラインでの株主総会の実施は難しい。リアルの場で株主と対面して質問を受け付ける緊張感は、企業のガバナンスの観点で意味があると言える。

一方で、6月には1万人を超える株主が集まる大企業の株主総会もあり、会場の確保も難しくなるだろう。コロナを契機にしてオンライン化が進む可能性もある」

経済産業省では、以前からオンラインによる株主総会のあり方を検討しており、2020年2月、リアルでの株主総会とオンラインでの出席や参加を組み合わせる「ハイブリッド型バーチャル株主総会」の実施ガイドを策定。

3月30日に実際されるGMOの株主総会でもオンライン中継を導入するなど、オンライン化の流れが進んでいる。

東京オリンピック・パラリンピックの延期も決まり、収束が見えない新型コロナウイルス。株主が集結する株主総会が長らく続いてきた日本だが、新型コロナウイルスが変化のきっかけになりそうだ。

(文・横山耕太郎)

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