「5G料金競争」KDDIの徹底した“後出しジャンケン”に見るしたたかさ

5G

ついに、日本でも次世代通信サービス「5G」の一般ユーザー向け展開が始まった。

撮影:小林優多郎

3月25日にNTTドコモ、26日にKDDI、27日にソフトバンクと、3キャリアが相次いで5Gサービスを開始する。

今後10年、通信業界のみならず、あらゆる産業に変革をもたらすと期待される5G。世間にインパクトがあるため、各社とも料金プランが事前に漏れないよう、トップシークレットの扱いとなっていた。そんな中、KDDIは水面下でしたたかに料金プランの発表の準備を進めていたようだ。

KDDIは“後出しジャンケン”で勝ちに行った

KDDI 5G対応プラン

KDDIの5G対応プラン

出典:KDDI

まず、業界的に注目されていたのが第4のキャリアとして参入する楽天モバイルの動向だ。同社は2月13日に決算会見を開いた際、「3月3日に料金プランを発表する」と公言していた。これによって、動きを変えてきたのがKDDIだ。

発表会の日程は業界内でもトップシークレットで扱われるはずだが、端末を納入するメーカーや発表会の下請け業者、さらに販売代理店ルートから情報は流れやすい。

実は2月の段階で、モバイル業界内では「ソフトバンクは3月5日に5Gサービスの発表をするらしい」「NTTドコモはギリギリの3月18日のようだ」といううわさ話は流れていた。

2月の段階で、KDDIの日程は「どうやら3キャリアで最初にやるらしい」というぼんやりとした情報だけは入ってきていたものの、具体的な日程は不明だった。

楽天モバイルのプラン

楽天モバイル(4G)の料金プラン。

出典:楽天

しかし、楽天モバイルが3月3日の発表をアナウンスすると、「KDDIは3キャリアで最初に発表」から「KDDIはいつやるのかさっぱりわからない」という情報に変わっていたのだった。

その後も、一向にKDDIの日程情報が噂として流れないなか、3月3日の楽天モバイル、5日のソフトバンクを終え、NTTドコモ発表会の2日前である16日になってようやくKDDIから「23日に開催する」という告知があった。KDDIではどうやら、他社の動向、料金プランを見極めるために、3月上旬から23日へ3週間も延期した模様だ。

つまり、23日に発表されたKDDIの料金プランは他社が発表した料金プランをじっくりと検証した上の「後出しジャンケン」というわけだ。他社には決して負けない料金プランにしてきたというのだ。

ソフトバンクの“メリハリ”も「コピー」した

ドコモ 5G対応プラン

NTTドコモの5G対応プラン。

撮影:小林優多郎

実際に発表された「データMAX 5G」は各種割引適用前で月額8650円という値付けになっている。本来であれば、5Gになるので月額1000円値上げになっているのだが、最初の25カ月間は1000円が割引されるキャンペーンを展開する。これは5Gのエリアがまだ全国的に展開できていないための措置といえる。

この考え方は、ソフトバンクの5G向け料金プランの建てつけと全く同じだ。NTTドコモはあえてキャンペーンなどを展開せずに、5G向けギガホでは500円、値上げしてきた。KDDIとしては「NTTドコモよりも2年間は割安」に見せつつ「ソフトバンクに負けない」設定にしてきたわけだ。

ソフトバンク 5G対応プラン

ソフトバンクの5G対応プラン。

出典:ソフトバンク

またKDDIは、データ容量を月間2GB以下の場合は約1500円割引するという設計にもしている。これはまさにソフトバンクが松本人志氏を起用したCMを流している「ギガを使わなかった月は勝手に割引」のほぼコピーともいえる。

今回の料金施策について、KDDI社長の髙橋誠氏は「料金プランの考え方について、我々はいくつものパターンを用意している。さらに今回はいろいろと参考にさせてもらって、最終的にこのプランに決めた」と語る。この「いろいろと参考にさせてもらって」というのが全てを物語っている。

KDDIの「ALL STARパック」が驚きの理由

データMAX 5G ALL STARパック

KDDIの秘策「データMAX 5G ALL STARパック」の詳細。

出典:KDDI

表向きの料金プランに関しては他社の動向を意識したKDDIであったが、「秘策」においては他社がなかなか真似できない、強力な武器を投入してきた。

「データMAX 5G ALL STARパック」は各種割引適用前の料金は1万1150円と高額だが、5Gスマホが使い放題に加えて、テザリングが80GB、さらに「ネットフリックス」「Apple Music」「YouTube Premium」「TELASA(KDDIとテレビ朝日の共同事業、4月7日開始)」の4つのコンテンツの利用料が含まれるというものだ。

ネットフリックスが月額800円(税別)、Apple Musicが980円(税込)、YouTube Premiumが1180円(税込)、TELASAはサービス開始前のため不明だが、いずれにしても若干、おトクになる設計となっている。

ネットフリックスとKDDI

auのスマートフォンを持つネットフリックスのプロダクト最高責任者である グレッグ・ピーターズ氏と髙橋社長(2018年5月撮影)。

撮影:小林優多郎

業界的に驚いたのが、アップルがネットフリックスやYouTubeと同列に扱われている点だ。まさに、これまでの常識では考えられなかった扱いだ。髙橋社長は「ネットフリックスのバンドルプランを提供し、大成功したことで、アップルやYouTubeが『うちも組みたい』と集まってくれた」と語る。

従来、ネットフリックスのような映像配信サービスは、人気があっても解約率が高かった。実際1カ月間だけ契約し、その月だけ集中的にドラマなどを見て、見終わったら解約するという使い方をする人も少なくない。映像配信サービス側として、そうした解約率の高さに悩まされているのだ。

そんな中、キャリアの料金プランとバンドルすることで、その解約率が一気に低減する。ネットフリックスとしてKDDIと組んだことで万々歳であり、その成功体験を聞きつけたアップルやYouTubeが喜んで参加を決めた……という形だ。

ディズニーとNTTドコモ

ディズニーと協業するNTTドコモ(2019年3月撮影)。

撮影:小林優多郎

今回、4つのサービスが組み合わさることで、YouTube Premium目当ての人がネットフリックスを使うこともあるだろうし、その逆もあり得る。コンテンツ間でユーザーを相互送客するメリットもある。

一方、NTTドコモも既にDisney DELUXEAmazonプライムが無料になるキャンペーンを展開し、ソフトバンクも「動画やSNSではデータ消費しない料金プラン」で人気を博している。

今後、5G時代は単なる通信料金プランの競争ではなく、いかに「有料コンテンツがおトクに5Gスマホで見られるか」の競争が、今まで以上に加速していきそうだ。

(文・石川温、撮影・小林優多郎)


石川温:スマホジャーナリスト。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜22時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演。近著に「未来IT図解 これからの5Gビジネス」(MdN)がある。

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