北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(2020年2月、平壌)。
Reuters
- 公には感染者はいないとしつつ、北朝鮮は新型コロナウイルス対策に必要な支援を密かに他国に求めている。フィナンシャル・タイムズが報じた。
- 同紙によると、北朝鮮の政府高官は最近、他国のカウンターパートに緊急支援を求めたという。
- 支援機関も、北朝鮮からアプローチがあったと話していて、マスクや検査キットが少しずつ北朝鮮に入り始めていると、ロイターが報じた。
- 金正恩朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮政府は、公には新型コロナウイルスの感染者はゼロだと報告している。1月後半には、中国との国境を封鎖した。
- 北朝鮮の医療制度に詳しい専門家は、北朝鮮は新型コロナウイルスのような感染症の流行に対応する態勢が、ほとんど整っていないとBusiness Insiderに語っている。
公には新型コロナウイルスの感染者はゼロだとしながらも、北朝鮮はその対策に必要な支援を密かに他国に求めているようだ。
北朝鮮の政府高官は、他国のカウンターパートに非公式に接触し、新型コロナウイルスの流行と戦うための緊急支援を求めたと、フィナンシャル・タイムズが複数の関係者の話などをもとに報じた。
北朝鮮は、韓国の病院や複数の国際支援機関にもマスクや検査機械の支援を求めたと、ロイターが3月20日に報じている。
北朝鮮は、公には新型コロナウイルスの感染者はゼロだと報告していて、1月後半にはウイルスの感染が拡大する中国との国境を封鎖した。
フィナンシャル・タイムズによると、北朝鮮は少なくとも590人 —— いずれも1月に海外から入国した人々 —— の検査を実施しているが、全員「陰性」だったという。
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だが、海外のメディアや専門家たちは、感染者はいないという北朝鮮の報告を疑っている。
韓国の一部メディアは、北朝鮮では新型コロナウイルスによる死者が出ているが、政府はそれを隠していると報じている。
韓国のデイリーNKも、朝鮮人民軍では1月から2月にかけて、180人の兵士が新型コロナウイルスで死亡し、3700人が隔離されたと報じていた。
朝鮮日報は、中国と国境を接する新義州市で少なくとも2人が感染を疑われたと報じている。デイリーNKも、新義州市で5人が新型コロナウイルスで死亡したと報じた。
Damir Sagolj/Reuters
医療用品が不足し、医療体制も脆弱な北朝鮮は、新型コロナウイルスのような感染症の流行に対応する態勢がほとんど整っていない。
平壌の世界保健機関(WHO)と国連児童基金(UNICEF)の元職員ナギ・シャフィク(Nagi Shafik)氏は「この国には、十分な医療がありません。流行への対応を懸念しています」とBusiness Insiderに語った。
北朝鮮は今、必要な検査キットがないことを恐れていると、フィナンシャル・タイムズは報じている。
「政府は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査キットを持っていて、その使い方も分かっていますが、(検査キットの数が)十分でないため、当局はあらゆる組織に支援を求めています」と、関係者は同紙に語った。
非政府の支援機関も、北朝鮮の新型コロナウイルス対策を手助けしようとしている。だが、封鎖された中国との国境を超えて物資を調達するのに苦戦していると、ロイターは報じている。
国境なき医師団は、北朝鮮向けの緊急物資は現在、中国の北京と国境の街、丹東にあると言い、封鎖された国境を超えて、スタッフは検査キットを入手しようと尽力していると、ロイターに語った。
弱さをなかなか認めない北朝鮮だが、AP通信によると、金正恩委員長は3月18日、北朝鮮には十分な医療設備が整っていないとし、その改善を呼びかけたという。
朝鮮中央通信によると、金委員長の命令により、3月25日から平壌で新しい病院の建設が始まったという。
(翻訳、編集:山口佳美)