LINEが出前館に「300億円」出資した理由。フードデリバリーの競争激化と“スーパーアプリ化”がキーワード

出前館 中村社長

3月27日の決算会見でLINEとの提携について説明する出前館の中村利江社長。

撮影:小林優多郎

出前館は3月26日、LINEとの資本業務提携を発表。LINEや韓国・NAVERの子会社らが共同出資する未来Fund有限責任事業組合は累計300億円を出前館に出資する。

出前館とLINEは、すでに宅配サービス「LINEデリマ」を運営中だが、LINEデリマを「出前館」に、出前館IDを「LINE ID」に統一するなど、ブランドやシステム面での効率化、さらなる認知度獲得など相互連携をしていく。

なお現在、出前館の代表取締役社長を務める中村利江氏は代表取締役会長に、社長には現・LINE執行役員 O2OカンパニーCEOの藤井英雄氏、取締役に現LINE取締役CSMOで出前館の社外取締役も務める舛田淳氏、LINEでO2OカンパニーCMOおよびLINE PayのCMOを務める藤原彰二氏が就任する見通しだ。

フードデリバリー市場の競争激化が背景に

出前館 決算

出前館のセグメント別決算。

出典:出前館

3月27日の出前館の第2四半期決算会見(2020年8月期)で出前館の中村社長は、LINEとの提携の狙いについて、「資本改善」と「関連事業」の拡大を挙げている。

新型コロナウイルスの流行以前にも、軽減税率の影響などもあって、フードデリバリー市場の需要は年々伸びている。

出前館(当時は夢の街創造委員会)は1999年に創業し、いわゆるピザや寿司などの宅配サービスのプラットフォームとして事業を拡大してきた。

一方で、Uber Eatsや4月初旬から大阪でサービス開始予定の「DiDi Food」など、シェアリングデリバリー型のサービスも急速に成長しており、出前館自身も朝日新聞販売店などを拠点とした配達代行のネットワークを広げている。

提携の狙い

出前館のLINEとの提携の狙い。

出典:出前館

そんなニーズへの対応や、アメリカや韓国などと比べて利用率の低い日本の宅配市場でさらにシェアを拡大するため、出前館はテレビCMなども積極的に実施してきた。第2四半期の売上高は38億2800万円なのに対し、営業損益は9億8900万円の赤字(前年同期は4000万円の営業赤字)へと拡大している。

さらに、LINEと組むメリットとして中村社長は、新規事業を見据えたシステム改修も挙げている。前述のLINEデリマと出前館の統合もそのひとつで、出前館は50名規模のLINEの開発者を受け入れる。

LINEの狙いは「スーパーアプリ化」

舛田淳氏

出前館のシャツを着て登壇したLINEの舛田淳氏。

撮影:小林優多郎

では、一方でLINEの狙いは何か。LINEは約8300万人の国内月間アクティブユーザーを持つ日本最大のメッセージングアプリだ。そんなLINEの関連サービスであるLINEデリマを、わざわざ「出前館に変える」理由はどこにあるのか。

その最も大きな理由がLINEのスーパーアプリ化だ。LINEは2019年6月の事業戦略発表で「Life on LINE」構想を掲げている。ユーザーの日常生活のすべてにおいてLINEが接点を持つといった内容で、舛田淳氏はスーパーアプリ化実現の鍵の1つは「食の領域」であるとしている。

LINEのスーパーアプリ化

LINEが進める「スーパーアプリ化」構想。

出典:出前館

舛田氏は、今回の提携までの過程を振り返り、当初検討していた提供資金は「もう少し低い金額」だったと話すが、議論の過程で「(LINEの経営陣で)積極的かつ攻撃的に投資をしていく意思統一をし、今回はどんと金額を出して提案をした」と、同社の戦略上、出前館が重要なポジションを担っていく旨を明らかにした。

LINEは食の領域ではLINEデリマだけではなく、テイクアウト注文サービス「LINEポケオ」を自社で展開しているが、LINEポケオも出前館へ事業譲渡する。将来的には、宅配・テイクアウトに加えて、モバイルオーダーやイートイン予約、クラウドキッチンなどの事業展開も想定している。

※クラウドキッチンとは:
デジタル注文専用ラインが組まれ、調理されている宅配専用のキッチンやそのビジネスモデルを指す。「ゴーストキッチン」とも言う。

Tポイント、dデリバリー、ヤフーLINE統合への影響は?

出前館の経営陣。

写真左からLINEの舛田淳氏、出前館の中村利江氏、LINEの藤井英雄氏、藤原彰二氏。

撮影:小林優多郎

ちなみに、出前館は現在共通ポイントとしてカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の「Tポイント」を採用。また、プラットフォーム提供先としてNTTドコモと提携して「dデリバリー」を運営している。

NTTドコモについて中村社長は「これから今回の提携について報告する。(出前館としては)変わらずか、より連携を強化したい」とコメント。Tポイントについては「どのポイント(LINEにもLINE Payと関わるLINEポイントがある)にするべきかは(LINE側から)言われていない。ユーザー目線で検討していく」としている。

加えて舛田氏も「ファーストプライオリティーは出前館の成長と、中村社長と藤井にメッセージを出している。美味しいとこどりをしてほしい」とし、ユーザーや加盟店に向き合った戦略をとるべきと話している。

ヤフーLINE経営統合

LINEとヤフーの経営統合発表以来、さまざまな業種・業界の再編が続いている。

撮影:小林優多郎

27日の決算会見では「競争法の関係」(舛田氏)で、ヤフーの親会社でありソフトバンク傘下のZホールディングスとLINEの統合への影響は語られず、あくまで現LINEと出前館の話に終始した形だ。

前述のシェアリングデリバリー競合のUber、DiDi、そしてスーパーアプリとしても競合となる「PayPay」は、ソフトバンク系列もしくは深い関係のあるサービスなだけに、今後の関連各社の動きには注目だ。

(文、撮影・小林優多郎)

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