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「ロックダウン後の生活は一変する」現地日本人が語る、食料事情・仕事・Twitter疲れとは

コロナ

ニューヨークでは街中を歩く時も人との距離を空けるよう気をつけている。

撮影:津山恵子

店舗の営業を停止したり外出を禁止したりする都市の「ロックダウン」。世界では新型コロナウイルスの感染が拡大し、多くの都市でロックダウンが行われている。

日本でも感染者の増加を警戒する状況が続く。東京では3月28日に63人、29日に68人、30日に13人の感染者を確認。小池都知事は3月30日の記者会見で、「 感染拡大を抑えられるかどうか重大な局面だ」と述べ、「 国も緊急事態宣言のぎりぎりの状態と発言している。感染者の動向をみながら、国と連携しながら感染拡大防止に努めていきたい」と話し、将来的なロックダウンの可能性は否定しなかった。

実際にロックダウンに陥ると、市民生活はどうなるのか?

ニューヨークとサンフランシスコの2つの都市を中心に、「ロックダウン」後の世界の実体験を聞いた。

【ニューヨーク】郵便物、封筒は持ち込まず中身は消毒

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店員と客との距離をとるため、レジの前には箱が積まれている。

撮影:津山恵子

感染拡大が特に深刻なニューヨーク州では、3月22日夜から事実上の「外出禁止」状態が続いている。ニューヨークに住むジャーナリストの津山恵子氏は、現在の生活を次のように語る。


食料は外出禁止になる2週間前に、納豆や豆腐などの日本の食材を補充。その直後、同じアパートに住むフレンチレストランに勤めるフランス人3人から、「レストランが営業禁止になるから」と、段ボール1個分の食糧ももらった。この3人は営業禁止で店を解雇された。

高齢の夫を持つ料理研究家の友人は、食材を宅配に切り替えた。ただ、郵便物や宅配は家に入れる前に開封し、封筒や箱は全て廃棄。買い物に出た場合も、中身は70%以上のアルコール消毒剤でスプレーし、家の鍵やコートなどもその場で消毒すると言っていた。

私(津山)は毎日近所を1時間ウォーキングしている。もちろんマスク、ビニール手袋着用。帰宅後はコート、帽子、マフラーは床に広げておき、数時間は触らない。スマートフォンと鍵、マイボトルは手を洗った後に消毒液で拭く。

知り合いとの会話も「2メートル離れたまま」

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スーパーなどで買い物をした後に捨てられる手袋やマスクが増えている。

撮影:津山恵子

自分も感染している前提で行動している。散歩に出て知り合いに会った場合、2メートル近く離れて会話をして、さっさと切り上げる。

私が住んでいるクィーンズ区はレストランやホテルなどサービス業で生計を立てている人が多い。営業禁止で多くの隣人が解雇された。仕事があるのは役人、政治家、郵便局員、警官ぐらい。

1階下に住むテレビ局の人気番組の小道具係だった住人も大手テレビ局を突然解雇された。自宅待機2日目の朝、「今パニック症状になった」とメッセージが来た。

月末の家賃を払える見込みもなく、「将来がどうなるのか、どうしたらいいのか、考えさせられるよね。世界が2週間でまるで違うものになってしまった」と、今まで見たこともないきつい表情で話した。

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人通りがなく、ゴーストタウンのようになった街並み。

撮影:津山恵子

バーテンダーの友人は持病があり、メディケイド(低所得者向け医療制度)で薬を買い続けるため、シフトを減らして収入を低く抑えていた。その矢先に解雇された。もちろん蓄えなどない。

こうした近所の友人とはSNSのグループをつくり、仕事終わりにワインを注いだ時、私の自撮り写真を送っている。皆、1人飲みしている自撮りを送り返してくれるが、表情がだんだん変化している。自宅待機直後より返信も減ってきて心配になる。

(文・津山恵子)

【サンフランシスコ】IT企業は在宅勤務でアクティブ、地域に変化も

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クパチーノのアップル本社前。シリコンバレーは朝・夕の通勤時間帯の渋滞が日常風景だが、外出禁止令の影響で道が空いている。GoogleMapの渋滞情報を見ると、日本からでも渋滞解消された様子が確認できる。

撮影:五島正浩

一方、西海岸のIT企業の人たちは、生活にどんな変化があったのか。シリコンバレー(ベイエリア)在住のネットワークエンジニア・五島正浩氏は次のように語る。


私の住むカリフォルニア州サンタクララ郡では、3月17日から3週間外出禁止令が出され、違反すれば罰金等の罪が課せられる。

と言っても、スーパーマーケットに食料の調達に行ったり、レストランにテイクアウトを取りに行ったり、運動をしたり、ペットの散歩のために外出したりすることは認められ、(自宅周辺は)ゴーストタウンのような感じではない。

エンジニアは在宅で仕事を続けているので、シリコンバレーのIT企業はアクティブに活動している。

トイレットペーパーや水、卵などが品薄に

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2020年3月17日のサンフランシスコのチャイナタウン。新型コロナウイルスの影響で人通りはまばら。

Justin Sullivan/Getty Images

日本での買い占め等のニュースを見ていたので、生活に必要となるものは少しずつ買い足していた。3月上旬くらいから、近所のスーパーマーケットでも在庫がなくなるものも出てきた。

野菜や肉・魚は普通に購入できているが、品不足気味なものはトイレットペーパーや水、卵、ミルク、パスタ、パンなど。入荷されるとすぐになくなっている。

高齢者の感染予防のために、高齢者専用の営業時間を設定するスーパーも出てきた。日本でも必要になるかもしれない。

「震災直後の感じに似ている」

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サンフランシスコの有名な観光地の一つ、フィッシャーマンズワーフ。人影はない。2020年3月17日撮影。

Justin Sullivan/Getty Images

非常事態宣言が出てから1週間は、非日常のニュースが次々と出てきて、必死にTwitter等のSNSで最新情報を追っていた。Twitterのタイムラインを細かく追っていくと有益な情報も得られるが、情報過多になりがち。無意識のうちに不安やストレスを感じていることに気が付いた。

仕事もはかどらず、焦りやイライラが募るばかり。東日本大震災の時に東京で感じたものとよく似ている。

これではいけない、と情報過多にならないようSNSの利用時間を削減し、ニュースも最低限のものを、YouTubeで選んで見るようにした。

ストレス発散には運動も大事なので、30分は自宅周辺をウォーキング。ランチは気に入っているレストランのテイクアウトの利用を増やした。

(文・五島正浩)

出かけるときのプレッシャー、変わる日常の風景

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食料の寄付を得るため列を作るホームレス。サンフランシスコで2020年3月20日撮影。

REUTERS/Shannon Stapleton

他にも、サンフランシスコ周辺に在住する、複数名の日本人に話を聞くことができた。

サンフランシスコ市内では、ホームレスになりたての人を目にするようになったという。市内在住のある日本人は次のように話す。

「旅行客にしてはスーツケースを2、3個持っていて、ちょっと気になっていたんです。身なりのきれいな、20代後半から30代くらいの人で。ただ、30分以上同じ場所にいて、ホームレスになりたての人だと気づきました。ショックで、目を合わせることができませんでした」

サンフランシスコ周辺の大手IT企業に勤務するエンジニアの男性は、スーパーマーケットの変化を指摘する。

「スーパーは営業してますが『2メートル以上近付くな』というルールのもと、レジ待ちの位置がテープで示されるようになりました。そもそも店内の人口密度を下げるために入場制限していて、店の外に列ができています。

ロックダウンと言っても、実際には戒厳令下みたいな状態ではありません。しかし、出かけようかなって時に『でもやっぱなあ』と抑圧を感じることはありますね」

2019年9月からサンディエゴに留学している大学3年生の女性も戸惑いを隠せない。

「本当に街に人は全然いません。銀行、薬局とかは空いてるけれど、それ以外の店はほぼ全部閉まってて、レストランもみんなテイクアウトかデリバリーのみになってしまった」

日本でも、いまだ都市のロックダウンへの懸念は続いている。まさに「ぎりぎりの状態」だ。

文化も、法制度も違うアメリカの事情とはいえ、先に都市のロックダウンを経験した人たちの言葉から学ぶことは多い。

買い物などに出かけづらい不便さもあるが、実は身近な人の解雇や、日を追うごとに強まる先行き不安、変わっていく街の風景など「心理的なストレス」が非常に高い、という実情も見えてくる。

私たちは、心の健康という問題への対処も同時に考えていかなければならない。

(文・横山耕太郎、取材協力・津山恵子、伊藤有、戸田彩香)

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