Huawei P40シリーズの発表会に登壇したファーウェイ コンシューマービジネスグループ担当CEOを務めるリチャード・ユー氏。
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2019年5月15日に米商務省産業安全局の制裁対象リスト(Entity List)に、ファーウェイとその関連会社が登録されて以来、米企業はファーウェイに対し物理的な商品だけではなく、技術やそのライセンスなどすべての取り引きに事実上の規制をかけている状態が続いている。
そんな中でも、ファーウェイは“攻め”の姿勢を貫いている。これまで、秋に大型ディスプレイ搭載の「Mate」シリーズ、春にはカメラ機能を追求した「P」シリーズと、2ラインのフラッグシップスマートフォンを投入してきた。
そし3月26日、Pシリーズの最新モデルとなる「Huawei P40」が登場した。今回、P40シリーズの中位モデルとなる「P40 Pro」の実機を試用できたので、ファーストインプレッションをお届けする。
なお、今回試用したP40 Proは試作機で、本来P40 Proが備える全機能を実装していない。また、海外モデル(欧州仕様)のためいわゆる技適マークがなく、基本的に機内モードに設定した状態で利用している。
正面はほぼ全面ディスプレイ
正面から見た様子。6.58インチ有機ELディスプレイは4辺狭額縁仕様で、ほぼ全体が表示領域という印象。
撮影:平澤寿康
本体前面は、従来モデル同様にディスプレイが上下左右ともに本体側面ギリギリまで来る超狭額縁仕様となっている。しかも、上下左右の側面付近がカーブする「Quad-Curve Overflow Display」へと進化している。
上下のカーブは左右に比べるとごくわずかという印象だが、この4辺のカーブによって正面からは「縁がほぼなくディスプレイしか見えない」印象を強く受ける。表示領域から本体側面までの幅は左右が1.71ミリ、上部が2.65ミリ、下部が3.35ミリで、ファーウェイは競合製品よりも圧倒的に狭いとアピールしている。
従来機同様、側面のカーブに合わせてディスプレイが湾曲している。
撮影:平澤寿康
P40 Proでは上部側面も側面カーブに合わせディスプレイを湾曲。
撮影:平澤寿康
下部側面も同様。これによって極限までベゼル幅を狭めている。
撮影:平澤寿康
ただ、気になるのはディスプレイ左上の大きなパンチホール(穴が空いているように見えるデザイン)だ。ここには正面カメラと顔認証やジェスチャー操作に利用する赤外線深度センサーなどが搭載されているが、かなり大きいためどうしても目立ってしまう(従来モデルに比べて、3D顔認証に対応するなど機能的に強化されてはいるのだが)。
なお、ディスプレイは6.58インチの有機ELパネルで、1280×2640ドット表示に対応。また、最大90Hzの高リフレッシュレート(描画速度)に対応する点も特徴だ。
ディスプレイ左上に正面カメラや顔認証センサーなどを囲む大きなパンチホールがある点は残念。
撮影:平澤寿康
背面デザインは、従来モデル以上にカメラの存在が強く感じられる。本体左上角付近に縦にレンズが並ぶようにカメラを配置する点は従来同様だが、P40 Proではカメラユニット部を長方形に大きく囲むデザインを採用した。
「iPhone 11 Pro」や「Pixel 4」「Galaxy S20」シリーズなど、カメラ部を四角形に囲むデザインを採用するスマートフォンが増えているが、P40 Proもその流れに沿った形だ。
ディスプレイサイズの割にはコンパクトだが、手にするとどうしても大きく感じる。
撮影:平澤寿康
重量はSIM未装着で206.9グラム。200グラムオーバーはやはりずっしり重い。
撮影:平澤寿康
カラーはP40 Proでは5色をラインナップ。今回試用した「Silver Frost」を含め、全カラーがマット調の仕上げを採用。外光が差し込むことで色合いが微妙に変化するなど、デザイン的にも好印象だった。
本体サイズは幅72.6×高さ158.2×厚さ8.95ミリと、ディスプレイサイズを考えるとまずまずコンパクトにまとめられている。とはいえ、手にするとかなり大きい。
また重量は実測で206.9グラム(SIMカードなしの状態)。ディスプレイサイズを考えるとしょうがないが、やはりもう少し軽い方がありがたい。
高画質カメラを実現した「大型センサー」搭載
背面。左上に長方形に囲まれた大きなカメラユニットがあり、かなり目立つ存在となっている。
撮影:平澤寿康
カメラ機能の進化としては、最上位モデルの「P40 Pro+」で採用する5眼カメラが大きな話題となっているが、今回試用したP40 Proもしっかり進化している。
P40シリーズの背面カメラは、超広角レンズ、広角レンズ、5倍望遠レンズ、深度計測用(ToF)カメラの4眼仕様となる。この構成は従来モデルのP30 Proと同じで、ライカコラボのレンズを採用する点も同様だが、センサーの進化で性能を強化している。また、正面カメラは3200万画素センサーを採用しており、AF(オートフォーカス)にも対応している。
背面カメラ。超広角、広角、5倍望遠、深度カメラの4眼仕様。レンズはもちろんライカ銘だ。
撮影:平澤寿康
カメラの仕様。最大の特徴は広角レンズに1/1.28型の5000万画素RYYBセンサーを採用する点で、暗所撮影性能をはじめ撮影能力が大きく高められている。
出典:Huawei
背面カメラの最大の特徴となるのが、メインとなる広角レンズのセンサーに1/1.28インチの大型センサーを採用する点だ。画素数は約5000万画素。前機種「Huawei P30 Pro」も1/1.7インチ(約4000万画素)というスマートフォンにしては大型のセンサーを載せていたが、P40 Proではさらに大型化。一般的に、画素数を細かくせずセンサーサイズの大型化を図ると、画質面などに有利に働く。
カメラユニット部はかなり大きく盛り上がっている。
撮影:平澤寿康
最大感度は引き続きISO 409600まで対応しているが、センサー大型化によって暗所撮影能力はさらに高められている。
この他、5倍望遠レンズとハイブリッドズーム、デジタルズームを組み合わせて最大50倍の望遠撮影が可能な点も従来同様だが、こちらも従来より画質が向上している。なお、超広角レンズには4000万画素センサー、5倍望遠レンズには1200万画素センサーの組み合わせだ。
作例で見る、スマホ界トップ級のカメラ性能
P40シリーズに搭載する画像処理エンジン「XD Fusion Image Engine」。複数カメラで撮影した画像を被写体や背景などに分解して解析し、最適な発色や効果を実現する。
出典:Huawei
画像処理エンジンとなる「XD Fusion Image Engine」では、複数のカメラで撮影した映像信号をベースに、被写体や背景を分離して解析し、それぞれに最適な発色再現や効果を加えて最終的な写真として出力するという。
以下に、実際に撮影した写真をいくつか掲載するので、P40 Proのカメラ性能の参考にしてもらいたい。
広角カメラで撮影。赤い四角で囲った部分にズームして寄せていくと……。
撮影:平澤寿康
動画撮影機能も強化され、16ピクセルを1ピクセルとして扱うとともに、ISO 51200での高感度撮影にも対応することで、暗所の動画撮影能力が大きく高められている。
また、本体に搭載する3つのマイクを利用して、動画撮影のズーム時に音声もズームする機能も搭載。
さらに、P30シリーズで搭載された月の撮影機能が、P40 Proでは動画にも対応し、月を美しく動画で残せるとのこと。今回は時間がなく試せなかったが、こういった部分もしっかり進化している点はポイントが高い。
「高性能でもグーグルサービス不可」をどう考えるか
nano SIMを2枚とeSIMにも対応。eSIMはSIMスロット2との排他となるが、利便性が大きく向上。
P40 ProのプロセッサーはMate 30シリーズと同じ「Kirin 990 5G」を採用しており、メモリーは8GB、ストレージは256GBと充実の仕様だ。ナノSIMは2枚装着でき、新たにeSIMにも対応。
注意点は、5G通信は2つのSIMのうち一方のみ。またeSIMはSIMスロット2との排他利用となるものの、自由度は高い。
また、独自の音声アシスタントも搭載。今のところ日本語には対応していないが、今後対応言語を増やす予定とのことで、将来日本語にも対応する可能性は十分考えられる。
独自音声アシスタント「Hey Celia」を搭載。現時点で日本語未対応だが、日本でもP40シリーズが発売されるとしたら日本語対応も期待できそうだ。
とはいえ、やはり使っていてかなり厳しいと感じるのは、Google Mobile Service(GMS)に非対応で、アプリストアのGoogle PlayやGmail、Googleマップなどが利用できない点だ。これは、やはり辛い。
P40シリーズでは、ファーウェイ独自のアプリストア「Huawei AppGallery」経由でアプリを提供している。実際に有線接続でインターネットに接続し、アプリが存在するか確認してみたが、残念ながらアプリ充実度は、一般的なAndroid端末に遠く及ばない。
ブラウザー経由で利用できるGoogleマップやTwitter、Facebookなどは何とかなるものの、LINEアプリがないのは特に日本では厳しいところだ。
裏技として「Amazonアプリストア」をインストールすることで、FacebookやFacebookメッセンジャーはアプリをインストールできたが、そういった手法を使ったとしても利用できるアプリは限られる。
左が「Huawei AppGallery」。右が「Amazonアプリストア」。
ハードウェアの完成度は非常に高く、現在登場済みの5G対応スマートフォンの中でもトップクラスの魅力を備えるのは間違いないだろう。今回は短時間の試用だったが、それでもその片鱗を十分に感じることができた。
しかし、スマートフォンはハードとソフト双方がそろわなければ魅力は大きく損なわれる。グーグルサービスに依存しない中国市場を除き、P40シリーズはかなり厳しい船出となりそうだ。
なお、現時点では日本での発売は未定。ただ、「HUAWEI Mate 30 Pro 5G」をSIMフリーモデルとして日本で発売していることを考えると、P40シリーズも将来日本で発売される可能性は十分にある。
(文、撮影・平澤寿康)