アメリカのドナルド・トランプ大統領。
REUTERS/Al Drago
- アメリカ政府が人々が集まっている場所を調査するためのシステムを使用していると、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。
- 情報筋は、アメリカの連邦政府と州政府がオンライン広告業界から収集した位置データを利用していると語った。
- データは匿名化されているため、当局は個人を追跡するのではなく、一般的な人口動態を調査しているという。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、アメリカ政府は、匿名化されたスマートフォンの位置データを使用して、コロナウイルスの広がり方を調査し始めたという。
このプロジェクトに詳しい情報筋がWSJに語ったところによると、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)と政府はすでに、人々がどこに集まっているかについて、位置データに基づいた分析を始めているという。
今のところの目標は、どのような場所が今も人々を集めていて、ウイルスが広がる温床になり得るかを突き止めることだ。ある情報筋は、研究者がブルックリンのプロスペクトパークに人が集まっているのを発見し、そのデータを地元当局に渡した例を挙げた。
WSJによると、最終的な目的は、政府関係者がアクセスできるポータルを構築し、最大で500都市の人々の位置データを表示することだという。
WSJの報道では、特定のデータプロバイダーの名前は挙げられていないが、スマホのアプリを通じて位置情報を取得している可能性が高い。
匿名データとは、氏名や生年月日などの個人を特定できる情報が削除されたデータのことだ。プライバシー擁護活動家たちは、これたの匿名化されたデータと別途集積したデータをつなぎ合わせて個人を特定できる可能性があると懸念している。
プライバシー研究者のサム・ウッドハムズ(Sam Woodhams)氏はBusiness Insiderに対し、 「アドテック業界と緊密に協力して市民の居場所を追跡することは、いくつかの重大な懸念を引き起こす」と述べた。
「この分野は全体的に透明性が欠如していることで知られており、多くのユーザーはこれらのアプリが自分たちの動きを追跡していることに気づかないだろう。政府を含むこの機密データの収集に関与するすべての人々が、運用の実態と、市民のプライバシーの権利を保護するためにどのような措置が講じられているかについて、透明性を保つことが不可欠だ」
匿名データを使ってウイルスの広がり方を調査したのはアメリカが初めてではない。イタリア、ドイツ、イギリスなども同様のシステムを導入しているか、導入を検討している。しかし、これらの国々が通信会社と提携してデータを提供しているのに対し、アメリカは広告業界からデータを得ていると報じられている。
このほど成立したコロナウイルス対策法案には、CDCがウイルスの拡散を追跡する「監視およびデータ収集のシステム」を構築するための5億ドルの予算が含まれている。
3月初め、アメリカ政府がグーグル(Google)やフェイスブック(Facebook)などの大手テクノロジー企業と同様の追跡ツールの開発について協議していると報じられたが、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)CEOはこれを否定した。
政府が新しい追跡ツールの開発を急いでいることについて、プライバシー専門家から批判の声が上がっている。
ウッドハムズ氏は以前Business Insiderに対し、コロナウイルスの大流行が収束しても、各国政府がこれらのツールを使い続ける危険性があると述べていた。
「一見合法的に見えるかもしれないが、多くは市民のプライバシーの権利と表現の自由を危険にさらすことになる」と、彼は言った。
[原文:The US is using mobile ad data to track people's movements during coronavirus lockdown]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)