パンデミックの中、アメリカ人はパンを焼くようになっている。
REUTERS/Vasily Fedosenko
- イーストと小麦粉の売り上げが急増している。アメリカの人々がコロナウイルスの世界的大流行に、自分でパンや焼き菓子を作ることで対処しているためだ。
- 「通常の2倍の需要であれば対応可能だった。だが、一夜にして通常の5倍(の需要)になれば、これに対応できるところはないだろう」とアメリカン・ベイカーズ・アソシエーションのロブ・マッキー氏は述べた。
- 需要の急増に応えるべく、「業界のサプライチェーン全体が、信じられない勢いで製品を作っている」と同氏は述べた。
アメリカではイーストと小麦粉のメーカーが、急速に生産を増やしている。コロナウイルスの世界的大流行の中、パンを焼く人が急増しているためだ。
イーストは、パンや焼き菓子を作る際に使われる。ニールセンのデータによると、3月21日(現地時間)で終わった週、その売り上げは2019年の同週比で647%となった。ニールセンによる同期間のデータで、これほど急速に売り上げが伸びた食料品はほかにない。
パンなどの材料への需要が急増するにつれ、イーストや小麦粉などが足りなくなっているとの報告が、アメリカ中の店舗で上がっている。
「需要の急増は予期しないもので、生産システムに大きな影響を与えた」とアメリカン・ベイカーズ・アソシエーション(American Bakers Association)の会長兼CEO、ロブ・マッキー(Robb MacKie)氏は述べた。同協会は焼き菓子メーカー、製粉会社、イースト製造業者などを会員に持つ。
「通常の2倍の需要であれば対応可能だった。だが、一夜にして通常の5倍(の需要) なると、これに対応できる所はないだろう」
パンなどの材料を製造する業者は、需要の急増に応え、すぐに生産量を増やした、とマッキー氏は述べた。「業界のサプライチェーン全体が、信じられない勢いで製品を作り出している」と同氏は付け加えた。製造業者は、高止まりする需要を満たすことができると同氏に断言したという。これで、パンや焼き菓子作りに欠かせない材料が不足している食料品店の在庫もすぐに補充されるはずだとマッキー氏は述べた。
一方、いくつかのイーストはオンラインで価格が高騰した。
レッド・スター・アクティブ・ドライ・イースト(Red Star Active Dry Yeast)の2パウンド(908グラム)入りは3月初め、アマゾン(Amazon)の出品者が約7ドル(約750円)で販売していた。アマゾンの価格チェッカー、キャメル・キャメル・キャメル(Camel Camel Camel)によると、3月24日には、それが48.95ドル(約5200円)にまで高騰した。そして3月31日には、19.99ドル(約2100円)まで下がった。
パン作りで自宅待機の退屈をしのぐアメリカ
パンなどの材料の需要が急増する背景には、コロナウイルスの世界的大流行に伴う自宅待機命令が広がっていることがある。パンや焼き菓子作りは、自宅での隔離や在宅勤務で通勤がなくなったことで時間を持て余している人々にとって、退屈しのぎになるかもしれない。多くの人が頻繁に買い物に行くことを避けようとしていることも理由の一つだろう。自分で焼けば、危険を冒すことなく、焼きたてをストックすることもできる。
家族でできるというのもいい、とマッキー氏は言う。「家族がそろって一緒に何かを作るいい機会だ」と同氏は述べた。
パン作りがトレンドになりつつあることは、自家製のパンや焼き菓子の写真をシェアする、インスタグラム(Instagram)の投稿の増加が証明している。そして、これがイーストと小麦粉のさらなる需要を喚起しているようだ。
イーストを探すのにまだ苦労しているという人のため、バイオテクノロジー企業、米Ginkgo Bioworks社のプログラム責任者で生物工学の専門家、スディープ・アガーワラ(Sudeep Agarwala)氏が、自宅でイーストを作る方法をツイッター(Twitter)に投稿、広くシェアされている。
昨日の夜、飲みながら知ったんだけど、みんな、イーストがなくなっちゃうほどパンを焼いてるんだって?! 僕は地方のしがない酵母学者なんだけど、いいことを教えてあげようと思って。イーストがなくなることなんてないんだよ。僕の専門分野だからね。作り方は以下のとおり。
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)