REUTERS/Andrew Kelly
- 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)は、アメリカ各地の外食産業に壊滅的な打撃を与えている。
- 全米レストラン協会(NRA)によると、アメリカではすでに3万軒以上のレストランが閉店していて、今後1カ月でさらに約11万軒が閉店する見込みだ。
- 店員が客のテーブルまで飲食物を運んでくれるレストランでの3月第3週の注文は71%減少した。
新型コロナウイルスの感染拡大は、外食産業に壊滅的な打撃を与えている。
目前に迫る「外食産業の崩壊」についてブログ投稿した外食産業のアナリスト、投資家、アドバイザーを務めるロジャー・リプトン(Roger Lipton)氏は、外食産業が予期せぬ、かつてない課題に直面していると、Business Insiderに語った。
「最近の歴史…… 世界恐慌を含む過去100年の歴史をこれから起こることのテンプレートとして使おうと考えている専門家がいるとしたら、彼らは自分を偽っている」
データも、リプトン氏の「辛く、苦しい道」という予想を裏付けている。新型コロナウイルスのパンデミックがアメリカの外食産業に及ぼす壊滅的な打撃を8つの数字で見ていこう。
1. 今後1カ月で、約11万軒のレストランが閉店すると見込まれている
Reuters
全米レストラン協会(NRA)が3月下旬に行った調査(4000以上のレストランのオーナーおよびオペレーターが対象)では、11%が今後30日以内に閉店することになるだろうと回答している。アメリカには100万軒を超えるレストランがあり、11万軒以上が閉店する計算になる。
2. すでに3万軒のレストランが閉店したと推定されている
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NRAの調査によると、3%がすでに閉店したという。
3. 外食産業の売り上げは250億ドル(約2兆7000億円)減ったと推定されている
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NRAは、外食産業の3月1日~22日の売り上げが250億ドル減ったと推定している。
4. 300万人がすでに職を失った
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NRAの同調査によると、300万人がすでに職を失っていて、一部大手チェーンも従業員を解雇している。
外食チェーン「チーズケーキ・ファクトリー」は4万1000人の時間給労働者を自宅待機させている。ステーキハウス「ルースクリス(Ruth's Chris)」では、持ち帰りや配達ができない23店舗のマネジャーを含め、レストランで働く従業員の多くを自宅待機させている。メキシコ・テックスメックス料理の「チュイズ(Chuy's)」は101店舗のうち9店舗を閉店し、管理部門の従業員の約40%を自宅待機させている。
食事だけでなくゲームやカラオケも楽しめる「パンチ・ボウル・ソーシャル(Punch Bowl Social)」はアメリカ各地で複数の店舗を閉店、1000人以上の従業員を解雇した。同社の担当者は、閉店は一時的なものだと話している。
5. 店員が客のテーブルまで飲食物を運んでくれるレストランでの3月第3週の注文は71%減少した
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NPDグループによると、3月22日までの1週間、外食産業全体の取り引きは前の年の同じ時期に比べて36%減った。店員が客のテーブルまで飲食物を運んでくれるレストラン —— ドライブスルーや配達注文への対応が比較的難しい —— では、71%減った。
6. 高級レストランの売り上げは90%以上減った
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コーウェン(Cowen)のアナリスト、アンドリュー・チャールズ(Andrew Charles)氏は3月下旬のレポートで、「3月16日から始まった既存店売り上げの2ケタ減は7月末まで続くだろう」との見方を示した。
コーウェンは、高級レストランの売り上げは90%以上、カジュアルなレストランの売り上げは75%、ファスト・カジュアルなレストランの売り上げは65%、ファストフードの売り上げは約50%減ったと指摘する、客足を追跡する「WhatsBusy」の創業者ジョーダン・サーラー(Jordan Thaeler)氏とのやりとりを引用している。
7. 消費者の3分の2は、カジュアルなレストランチェーンを使うことが減った
Hollis Johnson/Business Insider
調査会社ゴードン・ハスケット(Gordon Haskett)の全米300世帯以上を対象にした調査によると、67%が3月27日までの1週間、カジュアルなレストラン・チェーンを訪れる回数が減ったという。3月20日までの1週間では62%、3月13日までの1週間では35%が訪れる回数が減ったと答えた。
8. レストランの半数が、営業を止めれば16日以上生き残ることはできない
Associated Press
JPモルガン・チェース・インスティテュートが2015年2月~10月、59万7000社の中小企業を対象に行った分析によると、半数の企業は27日は経営を支えられるだけの現金のバッファーがあることが分かった。残りの半数はそうではない。
この日数は、企業に売り上げや税金の還付、投資家または経営者の個人貯蓄からの送金といった収入が一切なくても、従業員の給与や消耗品の購入、ローン返済といった一般的な支払いを続けられる期間を意味する。
JPモルガン・チェース・インスティテュートはこの日数を、1日の終わりに手元に残る平均金額と日々の平均支出の比率から算出した。大半の企業は1カ月ももたない。
中央値で見ると、レストランのバッファー日数はわずか16日だ。これは、店を営業するためにいかにたくさんの人手を要するかが影響している。客足が伸び悩む中、こうしたバッファーのなさが大きな問題となっている。
(翻訳、編集:山口佳美)