米ラスベガスのイベントに登壇したマイクロソフトのサティア・ナデラCEO。
YouTube/Microsoft/Business Insider
- マイクロソフトはコロナ危機で在宅勤務向けサポートツールの需要が高まっている現状に対し、キャパシティ増強の対応を急いでいる。
- とくに、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)を要請されている地域で、同社のクラウドプラットフォーム「Azure(アジュール)」は775%の需要増。ビジネスチャット「Teams(チームズ)」も大きく伸びている。
- マイクロソフトはこの大幅な需要増を受け、「一部のサービスで一時的な利用制限」を行う考えを明らかにしている。
新型コロナウイルスの世界的流行を背景とする在宅勤務の増加を受け、マイクロソフトのクラウド製品やビジネスチャットアプリの需要が急増している。同社は公式ウェブサイト上で、プロダクトの運用に支障が出ないよう、キャパシティ強化を急いでいることを明らかにしている。
外出禁止令の出ている地域におけるクラウドサービスの需要量は775%の増加を記録。クラウド上で提供される仮想デスクトップ「ウィンドウズ・バーチャル・デスクトップ(Windows Virtual Desktop)」の使用量も3倍増。新型コロナウイルス感染症の関連情報を共有するダッシュボードに採用されている、ビジネス分析ツール「Power BI(パワー・ビーアイ)」の使用量も42%増えたという。
急激な需要増を受け、マイクロソフトは「一部のサービスで一時的な利用制限」を行う考えを明らかにしており、フリートライアル版の提供や新たなサブスクリプションのうち「特定のリソース」がその対象になる模様だ。
同社は現在、(外出禁止令の出ていない)比較的余裕のあるリージョンのデータセンターを利用するよう顧客に勧めるとともに、キャパシティの強化を急いでいる。
マイクロソフトのプロダクトについては、長期間のサービス停止などの事態には至っていないが、一部でクラウドサービスを利用できないなどの例が報告されている。
「3月後半の急激な利用増により、一部のリージョンで需要が集中し……いくつかのリソースタイプの利用可能状況を監視していると、平常時の通信成功率である99.99%を下回るケースが出ている」(同社ウェブサイト)
マイクロソフトはまた、クラウドへの負荷を軽減するため、ゲーム機Xboxのアップデートをオフピークの時間帯に行う措置もとっているという。
同社は、キャパシティ不足で多少の問題が起きるとしても、「救急救命や消防警察、医療や緊急対応サービス、重要な政府機関のインフラへの活用を最優先すると同時に、在宅ワーカーがビジネスチャットアプリTeamsのコア機能は確実に使える状態を維持したい」としている。
マイクロソフトのインフラ投資は追いつくか
Peter Summers/Getty Images
コロナ危機はマイクロソフトにとって、今後を占う試金石と言っていい。フューチュラム・リサーチの主席アナリスト、ダニエル・ニューマンはBusiness Insiderの取材に対し、コロナ危機の終息後には、マイクロソフトのユーザーがさらに増えるとの予測を語っている。
同社はTeamsやMicrosoft 365のような在宅勤務向けのサポートツールを提供しており、それらがインフラとなっていくだけでなく、長期的には、ソフトウエア開発や人工知能の導入によって企業がデジタル化を進めていく上で同社のプロダクトやサービスはますます必要性が高まっていく。
問題は、マイクロソフトのキャパシティがそうした需要の高まりについていけるか、ということだ。
ニューマンによると、Teamsは最近ヨーロッパでサービス停止に至るトラブルが起きており、安定的利用を可能にするキャパシティ増強のための投資が必要不可欠だという。
(翻訳・編集:川村力)