新型コロナウイルスの感染拡大を受け、いよいよ緊急事態宣言が目前に迫ってきた日本。そんな中、海外ロックダウン都市5カ国に住む現地日本人から「今知っておいて欲しいこと」「これから起きること」を伝える声が相次いでいます。
実際に海外でロックダウン都市に住む現地日本人に、大手旅案内サイト「ロコタビ」を通じて3月29日~4月4日にかけて緊急アンケートを実施。結果、イタリア、アメリカ、スペイン、イギリス、インドのロックダウン都市に住む計30名から熱意ある回答が得られました。実際に世界のロックダウン都市に住む人から見た「日本像」も見えてきました。
状況理解ができてない日本人が多いことに落胆
都知事から外出自粛要請が出た後も、朝のラッシュ時にはこの混雑ぶりが見られた(3月31日、品川駅)。
読者提供
アンケート回答で目立ったのは、アンケート実施時期直前の3月中の日本の印象が強いこともあり、日本のコロナ対策における海外との温度差でした。現地日本人からのメッセージは、以下の3点に集約されます。
- 自分が知らずに「人の命を奪う」要素を広める可能性があることを理解してほしい
- 感染者が少ない地方へ「遊び」や「帰省」を目的に行ってはいけない。
- 感染者はマスクが必要→自分が無自覚で感染させる側になる可能性→皆がマスクをつけるのは大事
「今は感染者のいない島根県など他県に『子どもが安心して遊べる』『大阪には迷惑がかかるから寄らずに地方に来た』などと各地に遊びに行っている人たちがいると聞き、開いた口がふさがりませんでした。責任感以前に、自分が知らず知らずに人を深刻なリスクにさらしかねないという、状況の理解ができてない人が多いことに落胆しました」
(30代、イタリアンレストラン勤務、イタリア在住6年)
自分が感染するかしないか以前に「人に感染させるようなことをしていないか」が問われているという指摘は相次ぎました。
「街頭インタビューで、若者が『今しか遊べないから』と外出している姿を見ました。自分が感染しなくても、知らず知らずのうちに自分がウイルスを運ぶ可能性があることを理解して欲しいです」
(20代、学生、エムさん、スペイン在住)
マスクをする目的は「うつさない」です。
「人にうつさないためにはマスクが必要。自分が無自覚で感染してる可能性があるのだから。イタリアでは今はほぼ100%の人がマスクをしています。マスクを売り切れで買えなかった人は、マフラーを巻いてる方もいます」
( 4月2日時点 イタリア在住ロコ Kaoruさん)
日本と海外との「危機感」における温度差が、気になる人は少なくないようです。
「CNNで日本のお花見の様子が報じられたり、ニューヨークの街中でも各国の観光客がいなくなる中、最後の方まで目立ってうろうろしていたのが日本人観光客だったりと、悪目立ちしてしまっています。帰国便や外出規制のリスクなどを軽視していますし、クローズしたミュージアムを見て驚いていたりと、あまりにも海外の情報を知らない様子で驚きました。欧州の惨状を知り得たのに、東京から地元に帰省して感染を広げていたりと、あまりにも外から学んでいない現状に危機感を感じます」
(20代、ニューヨーク在住2年、元総合商社の駐在)
感染者の肉声や経済影響の報道が少ない
ロックダウン中、イタリア防災市民保護局による毎日中継される会見。4月2日時点、1日で760人死亡、1431人回復。感染者数は今週に入って下降傾向にはある。
イタリア在住、Kaoruさん提供
日本人が危機感を持ちにくい要因の1つに、報道内容の違いについての指摘もありました。
「日本は危機感をわかっていないのではないかと思います。イギリスはコロナにかかって病院に搬送されている人のメッセージをリアルに伝えていますので、なった人が訴えている状態が良くわかり、気持ちが良くわかります」
(ロンドン在住、Summerさん)
経済の先行きに関する報道がもっとあるべきでは、との声も。
「日本ではコロナの経済的影響に言及した報道が少ないこと。こちらはコロナの死者数や被害状況に加えて、経済への影響も盛んに報道されているので、コロナに罹る罹らない以上に、今後の景気の行く末もみんなよく考えています。実際、個人商店が廃業したり、失業者が急増したり、ものの1~2週間で大きく情勢が変わっているので、その辺りを見越した報道が日本で見られないのが驚きでした」
(20代、ニューヨーク在住2年、元総合商社の駐在)
日本政府の対応には厳しいコメント
政府は「掛け声だけ」との声も目立ちました。
「政府の指導や情報提供、対応がすべて下手。ロックダウン、自制、と掛け声だけで、とりあえず何をどうするのか、どの状況でどういう行動を制限されて、等の説明が全くない。ロックダウンをする意義は何なのか説明がない」
(50代、主婦、ロンドン在住25年以上)
日本と他国は法律が違うとはいえ、政府のロックダウンが何を目標にしたものなのか指針が見えづらいことは国内からも同意する声は少なくないでしょう。
帰国者への対応についても、日本と他国の温度差の違いを指摘する声がありました。
「日本への帰国者の対応は正直何がしたいのか理解できません。(中略)帰国して地方に住んでいる理由から14日間関東圏のホテルに泊まれと言われても、できる人には限りがあります。無理もないです。国が本気なら強制的に施設で14日間と待機とするべきです。国民を信じると痛い目を見ると思います」
(52歳、会社経営、ニュージャージー州)
海外のロックダウンの場合は、罰金や地下鉄の利用規制も
日本では法律上、厳しい規制はできないと想定されていますが、海外の場合は以下のような厳しい措置になることもあるようです。
「街の中心街ですが、ほとんど誰も歩いていません。明確な理由なく歩いているところを警察に見つかると、罰金が科せられるからです」
(スペイン在住、momijiさん)
IDの提示を求められることも。
「ロンドン市内はロックダウンされキーワーカー(流通業、スーパー勤務、病院勤務者)のみが地下鉄を利用するように規制しています。私自身も職場よりIDを渡され、通勤し、警察に職質を受けた際に見せるようにしています」
(ロンドン在住20年の40代女性、英国病院勤務)
ロックダウン後で知っておきたい3つのこと
4月3日撮影時点のイタリア。売り場の様子。閉店近くだが商品は豊富にある。
イタリア在住、Kaoruさん提供
日本の緊急事態宣言後の生活と海外のロックダウンは必ずしも同じという訳ではありません。
とはいえ、ロックダウン都市に住む30名の方が、日本へのメッセージの中で語ったロックダウン前の備えは主に以下の3つはとても参考になります。
仕事の事情を除けば、日常生活を過ごす上で事前準備することは、意外に多くないかもしれません。
- スーパーが一時的に空になるニュースは出るが、流通が止まるわけではない。だから、基本的に食べ物に困ることはない。必要最低限の外出で、買い出しに行けばOK。
- 買うものは意外にほとんどない。マスクは自宅では使わない。あえて言えば、家で楽しめるエンタメグッズ、エクササイズグッズなど。
- 新型コロナとの戦いはほとんど心理戦であること。メンタル強くするためには栄養価が高いものを食べるのも大事。極力自炊する。
スーパーの前には助け合い箱。お金がない人の為に、余分に買い物をしてパンやパスタなどをおく。
イタリア在住、 Kaoruさん提供
「より厳しい制限」になった時に起きること
使い捨て手袋をはめた様子。
イタリア在住、 Kaoruさん提供
感染が蔓延した欧州の国では、スーパーでの食材選びや会計時には、手袋利用などで人との接触を防ぐ方法が取られています。
ソーシャルディスタンス(社会的距離)は各国は1~2メートル程度(レジの並び、外の散歩者同士など)離れることが推奨されています。
寄せられたコメントを読むと、海外在住者と日本の危機感にはまだまだ開きがありそうです。感染拡大がもっと深刻なものになってから対応したのでは、遅いとも言えます。
私たちの何週間か先を体現しているかのようなロックダウン都市に住む人からのメッセージ。私たちはこれを、どれだけ“自分ごと”として捉えられるかが、試されているのではないでしょうか。
(文・加藤こういち)