3月24日の渋谷・スクランブル交差点。
撮影:伊藤有
グーグルは先週末の4月3日から、GoogleMapの店舗の混雑情報や渋滞情報などで使われるものと同じ手法を使い、全世界131カ国を対象に、新型コロナウイルスに関するロックダウンや外出自粛の効果を端末の匿名の移動情報から「見える化」するインサイト情報「COVID-19 コミュニティ モビリティ レポート」の早期公開を開始した。
国や地域ごとに公開されるこの情報は、データの区分を以下の6つの領域に分けて、一定期間の間に、「ベースライン」(1月3日〜2月6日までの5週間の“中央値”)と比べて、どの程度変化があったかをレポートするものだ。
レポートの区分
・娯楽関連施設(Retail & recreation) ※レストラン、カフェ、ナイトクラブ、ショッピングセンター、テーマパーク、博物館、博物館、図書館、映画館等の施設
・食料品店やドラッグストア(Grocery & pharmacy) ※スーパーマーケット、ファーマーズマーケット(直売所)、酒屋、専門食料品店、ドラッグストア、薬局等
・公園(Parks) ※公共の公園、公共のビーチ、マリーナ、ドッグラン、プラザ 等
・公共交通機関(Transit stations) ※駅、バス停等
・職場(Workplaces)
・住宅(Residential)
このデータを日本の各都市ごとの状況、またアメリカの主要都市の状況と比較すると、日本との状況の違いが客観的に見えてくる。
3月の「3連休で多くの人が外出した」はデータにも現れている
東京都とその周辺の首都圏でまとめてみると3連休中にやはり人が多く公園などに出ていたことが見えてくる。
グーグルのデータをもとに編集部作成
「3月20日〜22日の3連休」で、外出自粛疲れの人が数多く外出してしまった、という論調は多い。それがおそらく事実だということは、データにも現われていた。
特に首都圏では、3連休のいずれかの日で、ベースラインに比べて、およそ40%〜80%近くも人が多く公園(Parks)に出ていたことがレポートされている。
その後、3月25日の小池百合子都知事の「外出自粛要請」以降、急激に公園への外出が減少したことが見て取れる。
大阪、愛知、福岡を含む主要都市の比較でも、似た傾向があったことが見えてきた。
グーグルのデータをもとに編集部作成
日本の都市の人の移動は「職場への移動がまだかなり多い」
新型コロナウイルスへの対処のため、ニューヨーク・マンハッタンの港に停泊する病院船。
Kena Betancur / Getty
一方、都心部の街中から人の姿が減っているのは確かだ。東京や大阪と、ニューヨーク州全体を比較すると、興味深い変化が見えてくる。
グーグルのデータをもとに編集部作成
データを見る限り、娯楽関連施設や公園への移動は、医療崩壊の危機にあると報道されるニューヨーク並みか、それ以上に人の往来は減っている(ただし、都心・マンハッタンが位置するNew York Countyにしぼると、状況は少し違う)。
地域性が違うため一概には言えないものの、共通しているのは職場(Workplace)の往来が、日本はどうやらまだかなり多いように見えることだ。
なお、日本の「職場」のグラフでは、東京・大阪ともに2箇所、スパイクのように急減しているところがある。これは日付から見て、1つ目は2月24日の天皇誕生日、2つ目は3連休初日(春分の日)にあたる。
この2つの祝日は、東京・大阪は70%程度まで職場の往来が激減していることから、「大多数のオフィスワーカーが出社をやめる」とすると、この水準が1つのサンプルになるのかもしれない。
感染症専門家は「接触80%減」求める
政府のクラスター対策班の専門家である、北海道大学の西浦博教授は4月4日、新型コロナウイルスに関する直接の情報発信をするTwitterアカウントで、爆発的な感染拡大(オーバーシュート)を防ぐためには、この時点の試算として、「接触80%減」が必要だと説明してる。
「今までクラスター対策で実施してきたような20%の接触の減少だと、赤の線(対策なしのケース)から少し逸れるような、緑の線の減少しか見込めません。しかし、(中略)人口の中の接触の80%が削減できると、青で示したように、(中略)感染者が激減する効果が期待されます」(西浦教授)
西浦教授が言う「接触の80%を削減」と、グーグルのレポート上で示されている移動量の減少は、単純に比較することはできない。とはいえ、移動量をベースラインから減少させることは、専門家の求める接触の80%減を達成することに少なからずつながるはずだ。
(文・伊藤有)