新型コロナウイルス拡散防止のためマスクをしたウーバーイーツの配達員。ウクライナの首都キエフにて撮影。
Pavlo Gonchar/SOPA Images/LightRocket via Getty Images
- 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、世界じゅうの人々が移動を制限され、ウーバー(Uber)とリフト(Lyft)の配車サービス事業は深刻な状況に陥っている。
- データ分析会社スーパーフライ(SuperFly)がユーザー2万人を対象に調査した結果によると、アメリカでのウーバー利用額は4週間で94%減少した。
- ウーバー、リフト両社ともこの数週間、ビジネスの悪化を防ぐため宅配事業に注力している。
新型コロナウイルスの流行により、世界中の人々が移動を制限され、あるいは自粛せざるを得なくなり、ウーバーとリフトのコアビジネスである配車サービス事業は深刻な状況に陥っている。
匿名加工した消費支出データをトラッキングしているスーパーフライによれば、ウーバーが売り上げを大幅に落としている模様だ。同社がユーザー2万人のデータを分析した結果、アメリカ国内でのウーバーの配車サービス利用金額は4週間で94%減った。
アメリカ国内でウーバーの利用額が急激な落ち込みを見せている。
提供:SuperFly
スーパーフライのデータはもちろんウーバーの公式発表値ではなく網羅的でもないが、3月初めにウーバーが発表したデータよりも現状をよく示していると思われる。データの横軸には2020年初から週ごとに通し番号がふられていて、一番右の「13」は13週目、つまり3月23〜29日の週を指す。
ウーバーのダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は3月19日、決算発表のカンファレンスコールでアナリストに対し、「シアトルのように最近影響が広がっている地域」で配車予約が60〜70%減少していることを認め、それは第2四半期の半ば、4月の終わりごろに回復に向かうとの見通しを示した。
なお、この時間設定は、トランプ大統領がソーシャルディスタンシング(社会的距離確保)の期間を4月30日まで延長したことと符合する。
スーパーフライはリフトについては特段のデータを発表していないものの、ウォール街のアナリストたちは、同社の財務状況もウーバーと同じくらい深刻だろうと考えている。
JPモルガンのダグ・アンムースは3月下旬、2021年のEBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)ベースの業績見通しを公表し、ウーバーが2.9%減、リフトが3.0%減と予想している。
「ウーバーは100億ドル(約1兆1000億円)、リフトも28億ドル(約3080億円)と十分な手元流動性(=現預金や短期有価証券など)がある。われわれアナリストは、新型コロナウイルスのビジネスへの一時的な影響を両社とものり切れると考えている、というのが重要な点だ。新たな資金調達は想定していない」
両社とも料理配達が「救いの神」
ウーバーは、配車サービスのドライバーにフードデリバリーの機会活用を促している。
Screenshot of Uber Newsroom
ウーバーは決算発表のカンファレンスコールで、3月第2週にシアトル(新型コロナウイルス流行のアメリカ西海岸における震源地)で、料理宅配サービス「ウーバーイーツ」へのレストランなどのの登録数が、それ以前の10倍に増加したことを明らかにした。
一方、リフトも食品・医薬品などの宅配事業への参入を発表している。両社によるデリバリー事業の拡大は、アマゾンの物流倉庫や食料品サービスのドライバーに新たな仕事の機会をもたらすことになる。
「新型コロナウイルスによって、われわれの毎日の仕事は大きく変わった。タクシーの仕事は減り、配達の比重が増えている。タクシーにとっては厳しい状況だが、代わりにデリバリーの仕事はかつてないほど重要になってきている。そこで、ウーバーイーツはウーバーのドライバーに新たな仕事のクチを提供しようというわけだ」
JPモルガンのダグ・アンムースはこう評価する。
「この状況のもとで、フードデリバリーはよく耐えているどころか、むしろ強い伸びを示している。レストランやカフェは、店内での飲食こそ自粛しているが、デリバリーに形を変えて営業を続けているケースも多い」
1月1日時点に比べて、ウーバーの株価は12%、リフトのは4%ダウンしている(4月1日現在)。
(翻訳:滑川海彦、編集:川村力)