iPhones 12の発売延期を検討か…アップルの懸念はサプライチェーンではなく消費者の購買力

アップルはiPhoneの発売を延期するかもしれない。

Stephen Lam / Stringer / Getty Images

  • アップルが「iPhone 12(仮)」の発売延期を検討している可能性がある。新型コロナウイルス感染症の流行による景気低迷で、スマートフォンの買い替え需要が落ち込むとの懸念からだという。
  • 中国に依存するアップルは、おそらく他社よりずっと早くから最悪のシナリオに備えており、概してここまで、大きな状況の変化や進展を先読みした動きを見せている。
  • iPhone 12は、初めて5Gに対応するなど、複数の大きな機能向上が報じられており、ここ数年で最大の刷新になるとみられている。
  • 半年後に新型iPhoneを購入する余裕が消費者にない、とアップルが判断しているとすれば、アメリカとヨーロッパの経済状況にとって不吉な兆候かもしれない。

アップル(Apple)は、新型iPhoneを毎年9月に発表しているが、2020年は8年ぶりにその時期が変更になるかもしれない。

新型iPhoneといえば、アップルにとって1年で最も注目を集める製品発表だが、同社はリリースの延期を準備している可能性があるという。「目下の状況が、消費者のスマートフォン買い替えの意欲を大幅に低下させる」懸念があるからだと、ニッケイ・アジア・レビュー(Nikkei Asian Review)は3月末の記事で報じている。

アップルにとって目下の最大の懸念は、サプライチェーンの回復が新型iPhoneの生産に間に合うか否かではなく、アメリカとヨーロッパにおいて、アップルの最新スマートフォンに対する十分な需要があるか否かだと、ロイターもその直後に報じている。

これらの報道を総合すると、アップルは、消費者が5G対応の新型iPhoneを購入できる経済状態ではない可能性を危惧していると考えられる。過去のハイエンドモデルiPhoneの価格を参考にするなら、最新機種は1000ドル(約10万9000円)前後になる可能性が高い。

アップルにとって最大の市場であるアメリカでは目下、新型コロナウイルスが人々の労働環境と消費行動を一変させている。失業保険の申請件数が過去最多に達し、少なくとも30州で、生活に必須でない事業活動の停止が命じられている。人々が不要不急の外出を制限されるなかで、航空および外食産業に影響が広がっている

もしアップルが本当に、消費者の購買力低下を理由に、新型iPhoneのリリース延期を検討しているとすれば、それは、これから半年後のアメリカ経済を占う有力な手掛かりになるかもしれない。

新型コロナウイルス感染症の流行が始まって以降のアップルは、アメリカはじめ世界各地における事態の進展に対して、一手先を読んだ動きを見せてきた。

たとえばアップルは、中華圏を除く小売店舗の一時閉鎖を決断したが、それは、アメリカの各州がロックダウンや自宅待機令を発動し始める何日も前のことだった(カリフォルニア州が3月19日に全米で最初に住民の自宅待機令を発令すると、コネチカット、ニューヨーク、イリノイなどの州が後に続いた)。

アップルはまた、3月3日に従業員のイタリアと韓国への渡航を制限したが、これも、ヨーロッパと中国以外のアジアで1日あたりの感染者数が急増し始める何日も前の決断だ。

理由として考えられるのは、中国と深い関係にあるアップルにとって、新型コロナウイルスが、当初から、すなわちアメリカに感染が拡大するずっと以前から、懸念材料になっていたことだ。ウイルスがアップルの事業にどれほどの影響を及ぼすのかという問いは、早くも1月末には持ち上がっていた。同社は、第1会計四半期(2019年12月28日締め)の業績発表で、新型コロナウイルスの件に言及している。パンデミックがアメリカの人々の生活とビジネスを一変させたのは、それから1カ月以上も先の話だ。

新型コロナウイルスの影響と拡大は当初から、予測が不可能とは言わないまでも困難だった。それを示す直近の例として、3月21日までの1週間に申請された失業保険の件数がある。予想された150万件をはるかに超える330万件に達しているのだ。


アメリカにおける新規の失業保険申請件数は、3月21日までの1週間で330万件に急増した。

アメリカにおける新規の失業保険申請件数は、3月21日までの1週間で330万件に急増した。

Business Insider / Andy Kiersz

経済が新型コロナウイルスの影響による停滞から、いつどのように回復するかについては、さまざまな予測がなされている。先ごろMarkets Insiderのベン・ウィンク(Ben Winck)が報じたところによると、もっとも楽観的な予測は「V字回復」、すなわち、景気が底を打つのはごく短期間で、そこから急激に盛り返すというものだ。いっぽう、最悪のシナリオは「L字回復」で、その場合は景気が急落した後、長らく経済活動が停滞する。

しかし、もっともありそうなシナリオはおそらく、景気の悪化と回復が徐々に進む「U字回復」だ。ナティクシス・インベストメント・マネジャーズ・ソリューションズ(Natixis Investment Managers Solutions)のポートフォリオ・ストラテジスト兼マネジャー、ジャック・ジャナシーウィックツ(Jack Janasiewicz)氏は、Markets Insiderに対してそう述べた。

「iPhone 12」という名称になると予想される次世代iPhoneは、おそらくアップルにとって、ここ数年で最も重要な製品だ。すでに何カ月も前から、あるいは、2019年9月にiPhone 11シリーズがリリースされる以前から、期待は高まっていた。ここ何年か、小さな変更を積み重ねるようなローンチが続いたiPhoneだけに、5G接続への対応は、買い替えを促すのに十分なインセンティブになるとアナリストたちは予測してきた。

ただし、この1年間にリリースされた5G対応端末は、サムスンのGalaxy S20シリーズのように、5G非対応の端末と比べて、概して高額となっている。それは、今後も高速5G接続に対応する機種は高価格になる可能性を示唆している。

以上を踏まえると、新型コロナウイルスの影響による景気停滞で需要が落ち込むと本当に懸念しているのであれば、アップルがiPhoneのリリースを延期するのは理にかなっている。ウェドブッシュ・セキュリティーズ(Wedbush Securities)のダン・アイヴズ(Dan Ives)氏など一部のアナリストは、iPhone 12は買い替えの「スーパーサイクル」を生み出すと予想されると述べた上で、リリース延期は、iPhone 12が成功するチャンスを最大化することにつながるかもしれないと述べている。


[原文:Apple is reportedly worried that people won't have the money to buy new iPhones this year, and it's an ominous sign of what's to come for people's finances (AAPL)

(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)

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