大手3キャリア「学生に50GB支援」へ即座に踏み切れた理由……休校長期化でも実はデメリットなしか

5G

撮影:伊藤有

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクは4月3日、総務省から要請に応える形で、学生(25歳以下)のデータ容量の追加を「無料」にすると発表した。

新型コロナウイルス感染防止のため、新学期も休校となる学校が急増。オンライン授業の需要が高まるとして、学生のスマホ利用に対してデータ容量に余裕を持たせる目的だ。

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクともに、無料となる容量は50GBまでだ。

契約しているデータ容量プランが上限に達したのち、追加のデータ容量が50GBまで無料でチャージできる。KDDI、ソフトバンクは、テザリングをオプションとして500円がかかる料金プランが存在するが、オプション料金も無料となる。

今回、総務省は3キャリアではなく、電気通信事業者関連4団体(テレコムサービス協会、電気通信事業者協会、日本ケーブルテレビ連盟、日本インターネットプロバイダー協会)に要請する形をとった。

もちろん、事前にキャリアには水面下での相談が総務省から寄せられていたようで「かなり前々から準備していたというわけではなく、要請が出る数日前ぐらいにコンタントがあったようだ」(キャリア関係者)という。

「モバイルWi-Fiルーター配布は知らない」

ルーター

写真はイメージです。

Shutterstock

共同通信は4月2日、「インターネット環境のない学生、所得の低い家庭にモバイルWi-Fiルーターを配る。対象は小中学生のいる家庭に約2割程度。2020年度の補正予算案に関連費用として100億円超を計上する見込み」という趣旨の報道をした。

この記事が公開された際、SNS上では「そもそも日本国内に、配布できるだけのモバイルWi-Fiルーターの在庫なんてあるのか」といった指摘が出回った。

実際、「モバイルWi-Fiルーターのバラマキ」なんて可能性があるのか? キャリア関係者に問合わせたところ、

「データ容量の緩和についての話は数日前から来ていたが、モバイルWi-Fiルーターについては寝耳に水。補正予算案という話なので、もしかしたらもう少し先になるのかもしれない。また、データ容量緩和は総務省からの要請だが、モバイルWi-Fiルーターは文部科学省が言い出したことかも知れない」(キャリア関係者)

という。いずれにしても、複数のキャリア関係者が異口同音に「モバイルWi-Fiルーターの件は知らない」とのことだった。

「うちの場合、対象は数百万人」

学生

写真はイメージです。

撮影:今村拓馬

今回、驚きだったのが、3キャリアがわずか数日で、学生に対して50GBを無料で付与するという意思決定をしたことだ。

あるキャリア関係者は「うちの場合、数百万人が対象になりそう」と漏らす。

それだけのユーザーが、スマホを今まで以上に使ったとしても「なんとかネットワークは耐えられるはず」(キャリア関係者)という。

今年3月下旬から、3キャリアでは相次いで5Gサービスをスタートした。各社とも「ほぼ使い放題的な料金プラン」を提供し始めた。KDDIが使い放題、NTTドコモも料金プラン的には100GBまでだが、キャンペーンで無制限扱い。ソフトバンクは50GBだが、一部の動画やSNSは使い放題だ。

しかし、5Gサービスが始まったからといって、各キャリアが展開する5Gネットワークは「エリア」というより「ポイント」と言えるぐらい狭い場所でしか提供されていない。

都内であっても、5Gを掴むのはキャリアショップの店舗内など本当に限定的で、生活圏のほとんどが4Gネットワークのままなのだ。

5g

Reuters

つまり、裏を返せば、3キャリアにとってみれば、5Gなんて必要なく、4Gネットワークだけでも「使い放題」を提供できる環境にあったというわけだ。

ここ数年、台風や地震などの大災害が起こった際、キャリアは地域限定で通信容量の制限を外すという支援を行なってきた。これにより、キャリアは「ユーザーは『使い放題』と言われるとどれくらいスマホをアクティブに使うようになるのか」という統計データを蓄積したと言われている。

そのため、5Gエリアが全く広がっていない、4Gネットワークのみであっても使い放題的な料金プランを提供しても問題はないと把握しており、学生たちに50GBをプレゼントしても、すぐに経営の重荷になるものではないようだ。

今回の取り組みによって、学生や生徒はオンライン授業にデータ容量を使ってくればいいものの、実際はYouTubeやオンラインゲームにデータ容量を使う可能性だって充分にあり得る。

3キャリアロゴ

撮影:小林優多郎

結果として、「使い放題的なプランはストレスがなくて快適」という評価につながれば、学生ユーザーを中心にこれまでの従量制プランから使い放題的なプランへの切り替えが進むかも知れない。そうなれば、キャリアとしては今後、収益増加が見込めるはずだ。

また、このようなデータ容量の無料提供は、自社でネットワークを構築するMNOだから実現できるのであって、MNOに容量に応じて接続料を支払うことで格安サービスを提供しているMVNOは真似したくても、なかなか実現できないとされている。

ユーザーから見れば「いざというときは格安スマホよりも、3キャリアの方が頼りになる」という評価に繋がる可能性もある。

「従量制プランから定額制プランへの移行推進」「格安スマホに出て行ったユーザーの回帰」こうした2つの効果が3キャリアにもたらされる可能性は十分にある。

緊急的な措置ではあるものの、ビジネス上のメリットも十分あったうえで踏み切った、という構造が見えてくる。

(文・石川温)

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