アパレルブランドの悪循環の始まり? GAP、夏物と秋物の注文をキャンセル

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  • 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を受け、ギャップ(Gap)社は経費削減の一環として、夏物と秋物の注文をキャンセルすると発表した。同社はすでに、店舗従業員の大半を一時帰休にすると発表していた。
  • パンデミックが小売業界に打撃を与え続ける中、Business Insiderはショッピングモールに入っているブランドを中心に、同様の措置を講じそうなアパレル企業について複数の専門家に話を聞いた。
  • 「家財道具や家電といったカテゴリーと違って、(ファッションは)季節性に対応しなければならず、これが特有の問題を引き起こしている」とコンサルティング会社「グローバルデータ・リテール(GlobalData Retail)」のマネージング・ダイレクター、ニール・ソーンダース(Neil Saunders)氏はBusiness Insiderに語った。

新型コロナウイルスは、苦境に立たされた小売りブランドにとっての"審判の日"となりつつある。

アメリカでは3月、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるために、100社近くの小売業者が店を休む決断をした。eコマースのおかげでアパレルブランドは収入源を少なくとも1つは維持しているが、アメリカ経済が事実上ストップする中、多くは損失を出し、経営幹部を思い切った経費削減へと駆り立てている。

そうした小売業者の1つがギャップ社だ。同社は夏物と秋物の注文を止め、事実上、メーカーやサプライヤーに対し、店に商品を送らないよう求めるという異例の行動に出た。同社は大規模な一時帰休も実施していて、ギャップやその姉妹ブランドの従業員の大半が仕事を失っている。

「多くの小売業者が今、生き残りをかけている。つまり、できるだけ経費を抑え、キャッシュを残すためにあらゆる手段を講じているということだ」とグローバルデータ・リテールのマネージング・ダイレクター、ニール・ソーンダース氏はBusiness Insiderに語った。「未来の注文をキャンセルするのもその1つだ」という。

Business Insiderでは、新型コロナウイルスとの戦いが続く中、ギャップ社のように未来の注文をキャンセルし、在庫を減らそうとするファッションブランドについて、複数の小売業の専門家に話を聞いた。

季節性という呪い

アパレル企業 —— 中でも季節のトレンドをもとにしたファッションブランド —— は今、店の営業休止やアスレジャー以外の需要の低下に打ち勝つ方法を見つけるというほぼ不可能なタスクに直面している。

「難しいのは、小売業者にはこれがいつ終わるか、いつ消費者の需要が再び高まるか分からないということだ。だからこそ、彼らは慎重過ぎるぐらい慎重になっている」とソーンダース氏は指摘する。

「こうした全てのことがファッション特有の問題を強調している —— 家財道具や家電といったカテゴリーと違って、彼らは季節性に対応しなければならず、これが特有の問題を引き起こしている」

Business of Fashionが入手したメーカー宛てのEメールで、ギャップ社の世界調達担当の執行副社長は「店舗はわたしたちのビジネスに不可欠なもの」であり、eコマースは「店を閉めていることの埋め合わせにはなり得ない」と述べている。

同社の広報担当者はBusiness Insiderに対し、「支出を減らすため(同社は)早急かつ慎重に行動している」と話した。

「わたしたちは、従業員、顧客、パートナーの利益と長期的なビジネスの健全性を最優先に意思決定をしている。この危機をどうやってともに乗り越えるか、年来のサプライヤーと緊密に協力することに全力を注いでいる」

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Kevork Djansezian/AP

ソーンダース氏は、注文を減らすことは短期的にはギャップをはじめとしたブランドの助けになるものの、今後、消費がある程度もとに戻ってきた時には、ハードルになるかもしれないと指摘している。

「衣料小売店はすでに供給過剰になっていて、多くの小売店が今後のシーズンに何が必要か、見直しを進めている。だが、注文を完全に止めてしまうと、店を再開し、新たなシーズンに入っていく時に、気候条件や消費者の求めるものに合わない商品を売ることになるという、新たな問題を生む可能性がある」とソーンダース氏は言う。

注文はキャンセルしたが、供給業者への支払いを公に約束したH&Mとは違い、ギャップ社のサプライヤーが支払いを引き続き受けられるかどうかははっきりしていない。

TLGGコンサルティングのアメリカ担当のマネージング・ダイレクター、カトリン・ジマーマン(Katrin Zimmermann)氏によると、「活動休止モード」に入るというギャップの決断は、企業がサプライチェーンのあらゆる側面を所有、監督する"垂直統合"の危険性を強調しているという。

「現在の状況は、単一市場への過剰な依存を生む集中型サプライチェーンの弱点を顕在化させている」とジマーマン氏は語った。「願わくは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がサプライチェーンの弾力性に関する一般的な議論のきっかけとなってほしい。分散的なバリューチェーン(価値連鎖)は、ギャップのような企業が地域の需要により敏感に反応する助けになるだろう」という。

不透明な未来

ギャップ以外にも、専門家はショッピングモールを中心に展開するブランド —— 実店舗よりもeコマースを好む消費者が増える中、近年、いわゆる"小売業の崩壊"ですでに苦しんできたブランド —— が、新型コロナウイルスの流行で最も深刻な影響を受けるだろうと見ている。

ショッピングモール

Channing C./Yelp

リテールマーケティングのFUELパートナーシップのCEO、エリック・ローゼンストロー(Erik Rosenstrauch)氏は、外出禁止や自主隔離が解消されても、アメリカ人はショッピングモールのような公共の場に集まることに臆病になるだけでなく、多くの人々が季節ごとのファッションといった贅沢品にあまりお金を使わなくなるだろうという。

「1000万人以上のアメリカ人が失業給付を申請したということは、彼らは住む場所、食料、移動といった生活に欠かせないものに支出を集中せざるを得ないということだ」とローゼンストロー氏はBusiness Insiderに語った。「一度『ニューノーマル』に入れば、生活はシンプルなものに戻り、本当に重要なものに集中するようになるだろう。価値観にも大きな変化が起こる可能性がある」という。

コンサルティング会社のTwo NilのCEO、マーク・ザムナー(Mark Zamuner)氏は、ギャップのような小売業者についてはもう少し楽観的な見方を示していて、こうした変化はデジタルに投資し、実店舗を減らしてきた小売業者のこれまでの努力の積み重ねだと指摘する。

「危機は常にチャンスだ」とザムナー氏は言う。

「新しい業界の行動パターンを生み出すことができる。短期的な要因によるものではあるが、ギャップの決断はデジタル変革を示している」

ジマーマン氏は、注文をキャンセルするファッション小売業者にとってもう1つの明るい兆しとして、持続可能性の取り組み、つまり在庫過剰を抑える上でプラスになり得る点を挙げている。

ただ、ジマーマン氏は、ファッション小売業者が今後しばらくの間、注文のキャンセルを続けるであろうことから、サプライチェーンやメーカーに与える打撃は大きいという。

「こうした行動は悪循環につながる可能性があると覚えておくことが重要だ。ギャップをはじめ、企業が注文をキャンセルすれば、さらに多くの人々が職を失い、人々が商品を買うための可処分所得が減るということだ」

[原文:Gap canceled its orders for the next 2 seasons, and experts say it could be the start of a downward spiral for mall brands

(翻訳、編集:山口佳美)

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