ドイツのハインスベルクで、マスクを着用し歩行器を使って歩行者用区域を歩く年配の女性。
Jonas Güttler/Getty Images
- 科学者たちは、新型コロナウイルスの感染について調査するため、感染が爆発的に広がったドイツのハインスベルクの研究を行っている。
- 「ドイツの武漢」と呼ばれるハインスベルクでは、新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大したが、死者数は非常に少ない。
- 科学者たちは、この地域でロックダウンからの出口戦略がどう機能するか見定めるため、研究を行っている。
ボン大学のウイルス学者は、感染が爆発的に拡大したドイツのハインスベルクを、新型コロナウイルスについて調査するための研究室として利用している。
ヘンドリック・シュトレーク(Hendrik Streeck)教授は、多数の感染例が出たことから「ドイツの武漢」と呼ばれるハインスベルクについての研究を進めている。ハインスベルクは現在厳しいロックダウンが実施されているが、調査するにふさわしい特徴がある。それはドイツ国内の感染者数に比例して多数の患者がいるが、死亡率は不均衡なほど少ないことだ。
この地域の死亡率は、ジョンズ・ホプキンズ大学がドイツ全体の平均として出したデータより5倍も低いと、ドイツの新聞Die Weltが報じている。この地区では44人、つまりここで暮らす人の0.37%が、新型コロナウイルスで死亡した。
ドイツ全体の感染者は11万3000人以上だが、死者は2349人だ。ジョンズ・ホプキンズ大学のコロナウイルス調査センターによると、ドイツの死亡率は2.1%で、イタリアの12.7%、イギリスの11.6%よりずっと低い。
シュトレーク教授とその研究チームは、ドイツ北西部のハインスベルク地域の住民を調査することで、感染について解明しようとしている。4月7日の記者会見でシュトレーク教授は、ハインスベルクの多くの症例は、表面にウイルスが付いた物を触ったことによるものではなく、人々がかなりの期間近い距離にいたことによるものと述べた。
彼は、ウイルスはさまざまな物の表面で最大7日生存可能だが、そこから感染する機会はほとんどないと見られ、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)やアメリカ国立衛生研究所のガイドラインと矛盾する、と続けた。
ドアノブなどの表面からウイルスに感染するには、「誰かが手に咳をし、すぐにドアノブを触り、その直後に別の人がドアノブを握って自身の顔を触ることが必要」という彼の推測を記者に述べた。
その代わりに、彼の研究によれば、「買い物に出かけて、感染するリスクは小さい。深刻な感染拡大はいつも、人々が長い時間、密接な距離にいた結果だった」という。
買い物や外食などの公共活動は感染のリスク増加につながらないというシュトレーク教授の主張の一方で、ハインスベルクの地区管理者であるステファン・プッシュ(Stephan Pusch)行政官はDie Weltに、この地域で実施されている制限的な保護措置の効果が出ていると語った。
感染者数の上昇曲線は平坦化しており、「ハインスベルクは甚大な被害を回避した」と、彼はDie Weltに語っている。
シュトレーク教授は、この研究の目的は、ロックダウンに対しての出口戦略を進展させることだと述べた。
「この地のデータを収集することは、仮定でななく事実にもとづいた決定を行うために重要なことだ。データは政府は今後の方針について検討するための基礎となるべきだ」と彼は語った。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)