2020年8月期上期の連結業績。
ファーストリテイリングが公開した資料より
ユニクロなどを運営するファーストリテイリングは4月9日、2020年8月期上期の連結業績を発表した。年初から中国で猛威を振るい始め、世界に波及していった新型コロナウイルスの影響を大きく受け、売上高にあたる売上収益は1兆2085億円(前年同期比4.7%減)、営業利益は1367億円(同20.9%減)と大幅な減収減益だった。
岡﨑健グループ上席執行役CFOによる業績説明のあと、今後の展望について話した柳井正社長兼会長は「私は新型コロナウイルスの問題は戦後最大の人類の危機だと思います」とし、「このままでは今回の新型コロナウイルスをきっかけに、世界そのものがかつて経験したことのない悲惨な事態に陥るのではないかという真剣な危機感を持っております」と危機感を全面に押し出した。
“好調だった“中国での事業を襲った新型コロナ
決算会見で説明するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長。
公開された決算説明の動画よりキャプチャ。
同社の上期(9月〜2月)と3月の業績は国内、海外とも厳しいものとなった。
国内ユニクロ事業では、暖冬の影響もあって、防寒衣料の販売に苦戦し、売上収益は4635億円(前年同期比5.7%減)、営業利益は716億円(同5.7%増)と減収増益で、既存店売上高も同4.6%減となった。3月の既存店売上高は、新型コロナウイルスの影響が大きく、27.8%という大幅な減収だった。
海外ユニクロ事業の上期業績は国内以上に、新型コロナウイルスの影響を受けている。
特に、世界全体2246店舗(3月末時点)の内、約3分の1、748店舗がある中国。感染拡大が広がった、1月末から3月中旬にかけて、臨時休業する店舗が多く出た。
1月下旬までは既存店売上高が増収と好調を維持していたが、2月単月では8割の減収となってしまった。結果的に海外ユニクロ事業の上期は、売上収益は5412億円(前年同期比6.7%減)、営業利益は532億円(同39.8%減)と、営業利益ベースで4割の減益という状況だ。ただ、中国では3月中旬以降、順次再開して以降は回復基調が見られるという。
「3月のコロナウイルスの沈静化が進むにつれ、週を追って回復し、後半については、一時100%に戻る日もあった。その後、また少し下がってきて、今のところは7割。(中国で)まずは反動需要的なもので買い物はするというのは一旦し始めているが、この先、まだまだ感染に対する警戒感がある。そんなに昔のようにどんどん買い物にするという感じではない。回復するのは時間の問題だとは思うが」(岡﨑CFO)
決算会見で説明するファーストリテイリングの岡﨑健健グループ上席執行役CFO。
公開された決算説明の動画よりキャプチャ。
中国は収束しつつあるものの、日本は感染者数の増加が止まらず、ついに緊急事態宣言が発出され、それに伴い、国内のユニクロ店舗が臨時休業となっている。また、海外でもユニクロが店舗展開する欧州、北米、東南アジア、豪州では猛威を振るっている。
この状況踏まえ、通期の連結業績予想は、売上収益は2兆900億円(前期比8.8%減)、営業利益は1450億円(同43.7%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1000億円(同38.5%減)を見込む。直近の予想から売上収益で2500億円、営業利益で1000億円の減額修正となった。
ファーストリテイリングが公開した資料より
危機的な状況が逆に改革を推進する
今後の予想は夏頃には一定の回復があるという前提での見込みになっている。とはいえ、状況の展望がしづらい状態での予想ゆえに、「正直見通せないのが現実」(岡﨑CFO)と試算の困難さを滲ませた。
ファーストリテイリングが公開した資料より
岡崎CFOは先に生じた中国での経験が生かせるとした。
「(我々には)中国での経験があります。中国では3カ月から4カ月くらいかけて底の状況から回復していく、という形になっている。今見えていることは、各国で、東アジア以外で皆休業している。このロックダウンがあける時期というのはある程度見えているので、そこから中国のような回復状況を想定して見た時に、こういう売上になるだろうと見ている」
ユニクロ店舗の営業状況。
ファーストリテイリングが公開した資料より
ただ、新型コロナウイルスは世界全体に影響をおよぼしており、どうしても厳しい見通しになるとした。
「基本的に中長期の成長性については基本的にはなんら心配していません。しかし、このコロナ収束状況であるとか、コロナ感染が仮に収束したとしても、世界の経済の疲弊状況であるとか、正直見通せないのが現実。来年度の目線は、向こう一年ぐらいは少なくとも保守的に見ざるを得ない」(岡崎CFO)
一方、柳井会長はこの難局が、全社で取り組む改革「有明プロジェクト」の推進スピードを後押しするとした。
「こういう危機的な状況が起きたことにおいて、より早く実現できるんじゃないか。我々はグローバルで作って、グローバルで売るという業態。デジタル化やグローバル化の恩恵を一番受ける。そういうグローバルの連帯がないと、各国とも生き残っていけない。かえってこれは、ある意味ではチャンスになる。世界同時にやっていくということ、情報を世界に伝えるということ、商品を世界中で作って世界中で売っていくことが、そういう企業が一番成長していくと思います」
(文・大塚淳史)