4月1日、デンマークの首都コペンハーゲン。通常であればラッシュアワーの時間帯だが、閑散としている。
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- デンマーク政府は新型コロナウイルスに関連するいくつかの制限を緩和しようとしている。学校や保育所の再開が、ロックダウン(都市封鎖)解除に向けた最初のステップとなる。
- ロックダウンを宣言したのは、デンマークがヨーロッパでは2カ国目だった。その頃はまだ、死者は1人も発生していなかった。
- メッテ・フレデリクセン首相は、社会距離戦略は維持するとし、国境閉鎖もすぐには解除できないと述べた。
- デンマークで実施されたロックダウンは、ヨーロッパ周辺諸国やその他の国々ほど厳しくはなかったが、国民はその制限をしっかりと守ってきたようだ。
- 4月10日午前時点で、デンマークの新型コロナウイルス感染者数は5830人、死者は237人となっている。1日当たりの新たな感染者数は、他の多くの国と比較しても低い水準にある。
デンマーク政府は、現時点で新型コロナウイルスのパンデミックは避けられているとして、ロックダウンに関連するいくつかの制限を解除する計画だ。とはいえ、ヨーロッパでも特に大きな被害を受けた国々は、まだアウトブレイクはピークには達していないとしている。
ヨーロッパの国々、中でもイタリアとスペインでは、新型コロナウイルスの猛威が吹き荒れている。人口560万人を擁するデンマークは、ウイルスの蔓延を防ぐためにすばやく自国を封鎖したことから、最悪の事態は免れたようだ。
デンマークは3月11日、ヨーロッパで2カ国目となるロックダウンを発表した。その時点ではまだ、新型コロナウイルスによる死者は発生していなかった。
デンマークの前にロックダウンに踏み切ったのはイタリアだけで、国全体を厳しい制限下に置いた頃にはすでにウイルスが蔓延し、世界でも最悪の状況となっていた。
デンマークは今、制限をどのようにして緩やかに解除していくか検討している。ノルウェー、オーストリア、チェコといったヨーロッパのいくつかの国々も同様のことを検討している。
デンマークのメッテ・フレデリクセン(Mette Frederiksen)首相は4月6日、保育所や学校を4月15日から再開すると発表した一方、ロックダウンを解除するのは「綱渡りをするように困難になるだろう」と述べた。
「立ち止まってしまえば落ちる。早く進み過ぎてもうまくいかないだろう。だからこそ、一歩一歩、慎重に進まなくてはならない」
デンマークのメッテ・フレデリクセン首相。
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4月10日午前の時点で、デンマークの新型コロナウイルス感染者数は5830人、死者は237人と報告されている。1日当たりの新たな感染者数は、他の多くの国と比較しても低い水準にある。最近ではさらに減少傾向を見せており、4月7日は390人、8日は331人、9日は233人となっている。また死者数4月7日は16人、8日は15人、9日は19人と報告された。
デンマークの首都、コペンハーゲン。
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ロックダウンによる制限を緩和しようとする動きに対し、世界保健機関(WHO)が警告を発したことから、デンマークは制限の解除を緩やかに行おうとしている。中国の近隣諸国の中には、何カ月にもわたって感染を水際で食い止めてきたが、制限を緩めたとたん、感染者が急増した国もあると報告されている。
フレデリクセン首相は、国民が政府のアドバイスを守らなければ、感染者数と死者数は再び増加するだろうと警告した。
「あまりにも早く国境閉鎖を解除すると、感染者が急増し、また閉鎖しなくてはならなくなるだろう」と首相は述べた。
新型コロナウイルスの検査。コペンハーゲンにて。
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今後さらに4週間続くデンマークの規制には、国境閉鎖と10人以上の集会の禁止が含まれている。
多くの国々でのロックダウンは、外出が制限されるほど厳しいものだった。一方、デンマークではそこまで厳しくはなく、外出や10人以下が集まるイベントへの参加、レストランやカフェからの飲食物の持ち帰りなどが許されていた。
デンマーク政府は当初、「封じ込め政策」を取っていた。国家保健委員会によると、これは「迅速な診断、接触者追跡、危険性が高いと判断された人の隔離」を行うものだった。だが感染が拡大すると「緩和政策」に移行し、感染をできる限り抑え、高齢者など最も被害を受けやすい人を守ることに焦点を当てた対策を行ってきた。
デンマークが行ってきた対策は以下の通り。
- 人は互いに1メートルから2メートルの距離を取ること。
- 屋内、屋外問わず、10人以上の集会は禁止。
- スーパーなど混雑する場所へ行くことは、最小限に抑え、頻繁に手を洗うこと。
- レストラン、美容院、ナイトクラブなど、人が密接する場所は閉鎖。
- 学校や保育所は閉鎖。
- 「重要ではない」部署に所属する公務員は自宅待機。
- 老人ホームや病院への訪問禁止。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)