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深刻化するコロナ不安、コロナ鬱……なぜ人はわざわざ「不安になる情報を集めてしまう」のか?

小池百合子

4月8日に発令された緊急事態宣言で、多くの人が「コロナ不安」に陥っている。

撮影: 竹井俊晴

4月7日に東京をはじめとする7都府県を対象に発令された緊急事態宣言を受けて、多くの人々が自宅での隔離生活を余儀なくされるなか、今、メンタルの不調が大きな問題になっている。デマや差別なども引き起こしてしまう「コロナ鬱」の問題とは。

突然の凶暴化、現実逃避……

「あの温厚な人が、テレビに向かって怒鳴るのよ。潮干狩りが禁止になっても、柵を乗り越えていく人たちがニュースに出ていて……『なんだこいつらぁ!』って」

東京都に住むAさん(女性、60代)は、緊急事態宣言後に起きた、夫の豹変に驚きを隠せないと話す。テレビで気に障ることが出てくると、怒鳴り散らすのだという。

在宅勤務に切り替わったことで、夫が自宅にいる時間が長くなったことも関係したようだ。普段よりテレビを見る時間が長くなり、必然的にコロナのニュースを目にする機会が増えた。「やっぱり怖いです」とAさんは率直に打ち明ける。

20代の筆者も、在宅勤務が始まって1週間ほどで、身体にさまざまな症状が起こった。体がだるくなり、疲れやすくなった。SNSを除いては不安が募る一方で「ニュースを見たくない」という現実逃避も始まった。

逃げ込み先は、Netflix(ネットフリックス)でたまたま見つけた『愛の不時着』という韓国ドラマ。ハラハラドキドキする展開とその非現実さがなぜか筆者を安心させ、自分でも異常では —— と感じるほど、ハマり込んでしまった。

ズルズルと時間ばかりが過ぎ、当然だが仕事は進まない。だから、深夜まで起きていなくてはならなくなり、さらに生産性が落ちる……そんな負のサイクルに陥ってしまった。

社会不安がデマにつながる

コロナ鬱

写真:Shutterstock

こうした状況は、今世界各地で起きているようだ。アメリカうつ・不安障害協会(ADAA)は、不安障害やパニック障害の罹患者が増えると予測している。日本でも、日本産業カウンセラー協会をはじめとした多くの機関が、新型コロナウイルスによる不安やストレスへの対処法について呼びかけている。

過度な不安は、デマの拡散も生む。

例えば4月上旬には、日本赤十字社医療センターの医師の名を騙(かた)り、「現場ではすでに医療崩壊のシナリオも想定され始めています」などとつづったチェーンメールが出回った。4月10日には同センター長が「問い合わせが多数寄せられており、本来業務に多大な支障をきたして」いると公式に否定している。

なぜ、病気にかかってもおらず普通に暮らしていても、人は追い詰められてデマに走ってしまうのか —— 。

臨床心理学・犯罪心理学を専門とする筑波大学教授の原田隆之氏に話を聞くと、一見非合理に見えるこうした現象は、心理学的に説明できるという。

不安な時は不安な情報を集めたい

散歩

「ソーシャル・ディスタンス」を保ちながら外に出ることも必要だ。

撮影:西山里緒

原田教授によると、まず「こうしたパンデミック(世界的大流行)の状況下で不安になったり、ストレスを抱いたりすることは正常な反応です」と語る。

不安な気持ちと「不安でいてはいけない、しっかりしなければ」という矛盾する心理状態を抱えると、人は心理的に不快に感じる(これを「認知的不協和」という)。

だからこそ、その不協和を解消するために、不安な気持ちを正当化してくれる情報を集めて納得しようとする。不安を煽るニュースを見たり、ハラハラドキドキする映画やドラマに没頭してしまうのも、そのためだという。

「不安になること自体は悪いことでもありません。不安は人間が進化の過程で身につけてきた、生存に必要なシグナル。それがあるから、手を洗ったりマスクをしたりといった、自分を守るために適切な行動が取れるのです」(原田教授)

問題なのはあくまで、「行き過ぎた」不安が、周囲への差別や偏見、デマの拡散を引き起こすことだ。原田教授はそうした事態を未然に防ぐ方法について、こう指摘する。

「まず、自分が非合理的とも思える行動を取ってしまっていることに気づくことが大事です」

その不安が「行き過ぎた」ものにならないよう、うまく付き合う方法はあるのだろうか。

「不安は伝染しやすい一方で、同時にポジティブな気持ちも拡散します。例えば、同僚や友人に自分の心理状態を話すことで気持ちを受け入れてもらったり、相手からポジティブな話を聞いたりすることによって、お互いがポジティブになることもあるでしょう」

筆者も、教授の言葉を聞いて心が休まったように感じた。

まずは自分が不安であり、ゆえに非合理な行動を取ってしまうこともあると認めること。そしてそうなった時は、早めに周囲にSOSを出すこと —— 。コロナという大変な状況を乗り越えるためには、他者との協力が不可欠。その点では、感染症の拡散防止も、メンタル不安の緩和も同じなのだ。

(文、西山里緒)

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