本当はどこまで広がっているのか…アメリカで健康な1万人の抗体検査を開始

アレルギー・感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ氏。2020年3月29日、ホワイトハウスにて。

アレルギー・感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ氏。2020年3月29日、ホワイトハウスにて。

REUTERS

  • アメリカ国立衛生研究所は、新型コロナウイルスの感染が実際にどこまで広がっているのか明らかにする研究を行うに当たって、最大1万人の健康な人を被験者として募っている。
  • 被験者から採取された血液は、ウイルスへの抗体が体内で生成されたかどうかを検査される。
  • コロナウイルス感染症を診断する一般的な方法では、体内に現存するウイルスの検査を行うが、抗体検査では過去にウイルスに感染していたかどうかを診断することができる。

アメリカ国立衛生研究所(NIH)は、最大で1万人の健康な被験者を募り、どれだけの人が新型コロナウイルスに対して免疫があるのかを明らかにするための研究を行う。

被験者から採取された血液は、ウイルスへの抗体が体内で生成されているかどうかを検査される。症状の有無にかかわらず、実際にどれだけの人がウイルスにさらされたのかを明らかにしようとするものだ。

この研究は、アメリカで抗体検査(血清学)を発展させようと官民で広く行われている取り組みの1つ。抗体検査は、感染から長い時間が経過しても感染反応を検出できることから、コロナウイルス検査の次の主流になるとされている。NIHにとっては、感染の広がりを知るためのツールとなるだろう。

NIHの研究部門を構成するアレルギー・感染症研究所(NIAID)と生物医学画像・生物工学研究所(NIBIM)の研究者が主導するこの研究は、アメリカ国内における最大規模の血清学研究プロジェクトだ。

「感染者の中には、極めて軽度な症状のため病院に行かなかったり、体調が悪くても検査が受けられなかったりして、感染していてもそれを知らない人もいる。そのような感染者がそれぞれのコミュニティにどれだけ存在するのかがこの研究によって明らかになり、アメリカでの新型コロナウイルスの感染が、実際のところどれほどの規模で拡大しているのか、より詳しく示すことができる」と、トランプ政権の新型コロナウイルス対策チームの主要メンバーであり、NIAID所長のアンソニー・ファウチ(Anthony S. Fauci)氏はプレスリリースで述べた。

アメリカで感染が認められたほとんどのケースは、気道中に現存するウイルスを調べる分子検査で診断されている。一方、NIHが行う抗体検査では、ウイルスに感染していたことを示すIgMとIgGという2種類の抗体が、血液から検出されるかどうかを分析する。IgMは、感染するとすぐに出現し、通常は1、2週間、血液中に残存する。IgGはIgMの次に出現し、より長い期間残存する。

「抗体検査により、免疫システムがどう働いてきたのか、振り返ることができる」と研究責任者のマシュー・J・メモリ(Matthew J. Memoli)氏は述べた。

ワシントンDC近郊に住む被験者には、メリーランド州にあるNIHで採血する。その他の被験者には、自宅で採血できるよう医療機器メーカーのNeoteryxが製造した検査キットが送付される。

この検査では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状がある人や、他の検査でウイルス感染が確認された人は対象としていない。検査を受けないまま回復したと思われる人や、そもそもウイルスによる症状がなかった人が、被験者として求められている。

[原文:Scientists are collecting blood samples from 10,000 healthy people to figure out how much the coronavirus has really spread in the US

(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)

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