イケア・アメリカ最高経営責任者(CEO)のハビエル・キニョーネス。
Courtesy of IKEA
- イケア・アメリカ最高経営責任者(CEO)のハビエル・キニョーネスがBusiness Insiderの取材に応じ、同社の将来像に関する質問に答えた。
- イケアのイギリス・アイルランド部門のトップを務めたキニョーネスに、顧客が選ぶ販売チャネルとEコマースについて聞いた。
- イケアを象徴する大規模店舗は今後も展開していくが、同時にEコマースも強化していくとキニョーネスは話した。
イケア(IKEA)といえば、紺地に黄色いロゴの巨大店舗を思い浮かべるが、イケアのアメリカ部門はいま、全米の主要都市で「プランニングスタジオ」と呼ばれる小規模店舗の展開に力を入れている。従来型の大規模店舗を訪れにくい、都市部の新たな市場を掘り起こすのがねらいだ。
さらに、直近では中規模店舗を展開する計画も発表している。2020年夏、その最初の店舗がニューヨークのクイーンズで開業する予定。
そうした流れのなか、イケア・アメリカのハビエル・キニョーネスCEOがBusiness Insiderの取材に応じ、同社の将来ビジョンを語ってくれた。
全米各地に展開するイケアの来店者数は2019年、合計7800万人に達した。キニョーネスは、どのような変化が起きようと、イケア・アメリカは刺激的な空間を顧客に提供するというコア目標を追い求めていくと話す。
「私たちの店舗が、家具やインテリアに関するアイデアを提供する世界最高の空間となるよう投資を行っている。直近数カ月間で最も重視してきたのはまさにその点だ」
イケア・アメリカの経営戦略に関する3つの質問に、キニョーネスは以下のように答えた。
Q1. 大規模店舗の時代は終わったのか?
カリフォルニア州ロサンゼルス市内の店舗。
Kit Leong / Shutterstock.com
初めてイケアの店舗に入ったときのことをいまでも覚えている。たしか、履歴書を持参したときのことだ。自宅に帰り、「店のなかにマンションが3部屋もあった」と母親に話した。驚きの体験だった。イケアで働く者はみな、私と同じように、ここがインスピレーションを与えてくれる最高の空間だと考えている。
当社ではいま既存の店舗への投資を進めている。都市部では車を持たない人が増えていて、そうした方々には一部の店舗がやや利用しにくい状況になっているからだ。
それは、異なるニーズを持った顧客にリーチしようという取り組みで、何もかも従来と違う形態に移行させるということではない。立地やライフスタイルの面でさらに顧客に近づくことで、大きな成長機会があると考えている。
Q2. 次のEコマース戦略は?
結局のところ、顧客が求めているのはサービスと体験。
もちろんEコマースは急成長していて、すでに当社もEコマースビジネスに巨額を投じている。まだ目に見えてはいないかもしれないが、受注から配送までの時間を大幅に短縮できるようになる。
一例をあげると、店舗でフルフィルメント(=受注から配送、カスタマーサービスまでのEコマース関連業務全体)を完了できるようにするための投資を行っている。それが可能になれば、注文から数時間以内、遅くとも翌日には配達できるようになる。希望があれば(遅らせて)1週間後に配達することも可能だ。
Q3. 顧客が家具を買う場合に選ぶ販売チャネルは、どう変化しているのか?
カリフォルニア州イーストパロアルトの店舗内。
Sundry Photography / Shutterstock.com
販売チャネルはたがいに影響しあっているのだから、これ以上考えても仕方ないのでは。
イケアで買い物をする人の8割がまずウェブサイトをチェックしていることが明らかになっている。例えば、キッチンのインテリアを見直そうというときには、多くの人が(いきなりイケアに来店するのではなく)ウェブサイトから始める。
一方、そうやってサイトをチェックする人たちの3分の2は、店舗で実際に店員に相談したいと考えているという現実もある。もちろん、購入しようとしているものが適切かどうか確証を得るためだ。家具やインテリアに関しては、こうしたパターンが見られる。
興味深いことに、マットレスやソファ、キッチン家具などの商品はネット通販がきわめて優勢で、それはもちろん素晴らしいこと。ただしその人たちの多くは、ウェブサイトで商品を見て、その後に店舗を訪れて実際にソファーに座ってみて、そこで買おうと決めるということを見落としてはいけない。
その人たちは、買い物をして帰る前には店舗内のレストランに立ち寄り、ミートボールとコーヒーを楽しんでいくかもしれない。どの販売チャネルで売るかということではなく、顧客体験全体がものを言う —— これは小売り企業にとって良い教訓だと思う。
なお、イケアが2019年9月に公表した2019会計年度通期(2018年9月1日〜2019年8月31日)決算では、売上高が前年度比106.5%増の413億ユーロ(約4兆8700億円)。ECサイトの売上高の伸びは著しく、前年度比で43%増(世界50市場)と飛躍的な成長を記録している。
(翻訳:山崎恵理子、編集:川村力)