BI Daily Newsletter

世界最大の航空機が、マッハ6の超音速飛行や宇宙旅行を身近にする

スケールド・コンポジッツ社の「モデル351 ストラトローンチ」

スケールド・コンポジッツ モデル351 ストラトローンチ。

Shutterstock.com

  • 航空宇宙関連企業のストラトローンチ・システムズは事業方針を転換し、宇宙飛行や長距離移動の概念を塗り替える極超音速機の開発に取り組んでいる。
  • 同社は、母機となる航空機「スケールド・コンポジッツ モデル351 ストラトローンチ」を建造し、試験飛行に成功した。今後は、極超音速機を翼部分に吊り下げて上空に運び、空に放つ計画だ。
  • モデル351ストラトローンチの翼の左端から右端までの幅は385フィート(約117.35メートル)。これは世界最大の翼幅で、複数の極超音速機を一度に運ぶことができる。
  • 極超音速機の最小モデル「タロン-A」は、音速の6倍の速さでの飛行が可能で、現在開発が進められている。

世界最大の航空機に、極超音速での旅を可能にするという新たなミッションが与えられた。

宇宙飛行を目指していた航空宇宙関連企業のストラトローンチ・システムズ(Stratolaunch Systems)は、同社の旗艦機が今後、極超音速機の放出や飛行テストに用いられる母機の役割を果たすと発表した。この航空機は、6基のエンジンを備えた巨大な輸送機で、双胴型の機体を持つ。

ストラトローンチのジーン・フォード(Jean Ford)最高経営責任者(CEO)は、同社のウェブサイトに掲載した声明で次のように述べた。

「当社の極超音速機向け試験機は、我が国の政府や民間企業、さらには研究者にとって、極超音速技術のルネッサンスをもたらす触媒になるだろう」

Space.comの記事によると、ストラトローンチは、自社の航空機から人工衛星を打ち上げるという当初の計画を転換し、ロケットエンジンを搭載した音速の数倍の速度で飛行できる航空機の開発に取り組むという。この極超音速機は、現時点で世界最大の翼幅を持つ巨大航空機から、その飛行中に空に放たれる計画だ。

伝説となったコンコルドやSR-71ブラックバードのように、音速の壁を越えた飛行機の例はこれまでにも存在している。だが、超音速をはるかに超える極超音速技術は比較的新しい分野で、最近は開発にあまり進展がない状態だ。

実用に耐えうる商用の極超音速機が登場すれば、宇宙飛行をより身近なものに変えるだけでなく、地球上の長距離移動についても様相が一変させる可能性がある。

スペースX(SpaceX)の先例にならい、これらの極超音速機は再利用が可能で、毎回のミッションを終えた後には安全に地上に戻ってくる機能を持つ。最初に飛行する極超音速機はデータを収集し、極超音速飛行が及ぼす影響を調査する。さらに将来的には、貨物や乗客を運ぶことが可能になるだろう。

では、ストラトローンチの新たな取り組みが、高速移動や宇宙飛行をどう塗り替えていくのか、実際の飛行時の写真を見ながら検証していこう。


ストラトローンチ・システムズは、マイクロソフト共同創業者のポール・アレン(Paul Allen)の発案のもと、2011年に設立された

ストラトローンチ・システムズは、マイクロソフト共同創業者のポール・アレン(Paul Allen)の発案のもと、2011年に設立された

スケールド・コンポジッツ モデル351 ストラトローンチ

Gene Blevins/Reuters

出典:Stratolaunch Systems

当初の構想では、航空機を空飛ぶ発射台として活用し、人工衛星などの宇宙機を打ち上げるほか、宇宙飛行に関するデータ収集の推進を目指していた

当初の構想では、航空機を空飛ぶ発射台として活用し、人工衛星などの宇宙機を打ち上げるほか、宇宙飛行に関するデータ収集の推進を目指していた

スケールド・コンポジッツ モデル351 ストラトローンチ

Gene Blevins/Reuters

出典:Space.com

ストラトローンチは、ロケットは地上から打ち上げるものという既成概念を打ち破り、航空機を発射台に用いた「空中での打ち上げ」という構想の推進に一定の役割を果たした

ストラトローンチは、ロケットは地上から打ち上げるものという既成概念を打ち破り、航空機を発射台に用いた「空中での打ち上げ」という構想の推進に一定の役割を果たした

スケールド・コンポジッツ モデル351 ストラトローンチ

Gene Blevins/Reuters


当初の構想に基づき、ストラトローンチは、航空機メーカーのノースロップ・グラマンおよびその子会社のスケールド・コンポジッツと手を結び、航空機「モデル351 ストラトローンチ」を建造した

当初の構想に基づき、ストラトローンチは、航空機メーカーのノースロップ・グラマンおよびその子会社のスケールド・コンポジッツと手を結び、航空機「モデル351 ストラトローンチ」を建造した

スケールド・コンポジッツ モデル351 ストラトローンチ

Gene Blevins/Reuters

出典:Stratolaunch Systems

モデル351は、2019年4月に初飛行を行った。この時点で、翼幅でみると世界最大の航空機だった

モデル351は、2019年4月に初飛行を行った。この時点で、翼幅でみると世界最大の航空機だった

スケールド・コンポジッツ モデル351 ストラトローンチ

Gene Blevins/Reuters

出典:CNBC

6基のエンジンと2つの胴体を持つモデル351の翼幅は385フィート(約117.35メートル)ある。これは、次に翼幅が大きい航空機を100フィート(約30.5メートル)近く上回る

6基のエンジンと2つの胴体を持つモデル351の翼幅は385フィート(約117.35メートル)ある。これは、次に翼幅が大きい航空機を100フィート(約30.5メートル)近く上回る

スケールド・コンポジッツ モデル351 ストラトローンチ

Gene Blevins/Reuters

出典:Stratolaunch Systems

モデル351には乗客や貨物は搭載されない。代わりに、この航空機の2つの胴体を結ぶ翼の部分に別の航空機が取り付けられ、上空で放たれる計画だ

モデル351には乗客や貨物は搭載されない。代わりに、この航空機の2つの胴体を結ぶ翼の部分に別の航空機が取り付けられ、上空で放たれる計画だ

スケールド・コンポジッツ モデル351 ストラトローンチ

Gene Blevins/Reuters

出典:Stratolaunch Systems

こうしたコンセプトは、宇宙飛行の世界では新しいものではない。リチャード・ブランソン(Richard Branson)氏が率いる宇宙旅行企業ヴァージン・ギャラクティックも、同社の商用宇宙飛行向けの宇宙船について、同様の仕組みを持つ打上げ用の母機を建造している

こうしたコンセプトは、宇宙飛行の世界では新しいものではない。リチャード・ブランソン(Richard Branson)氏が率いる宇宙旅行企業ヴァージン・ギャラクティックも、同社の商用宇宙飛行向けの宇宙船について、同様の仕組みを持つ打上げ用の母機を建造している

ヴァージン・ギャラクティック向けにスケールド・コンポジッツが開発した「スケールド・コンポジッツ モデル339 スペースシップツー」

Virgin Galactic


スケールド・コンポジッツが建造したスペースシップツーは、ストラトローンチのモデル351と同様に双胴機だが、エンジンは4基で、翼幅もモデル351よりは小さい

スケールド・コンポジッツが建造したスペースシップツーは、ストラトローンチのモデル351と同様に双胴機だが、エンジンは4基で、翼幅もモデル351よりは小さい

スケールド・コンポジッツ モデル339 スペースシップツー

GENE BLEVINS/reuters


モデル351は、機体を大型化することで、より大きな極超音速機を吊り下げ、打ち上げることが可能になった。また、小型の機体を複数搭載することもできる

モデル351は、機体を大型化することで、より大きな極超音速機を吊り下げ、打ち上げることが可能になった。また、小型の機体を複数搭載することもできる

スケールド・コンポジッツ モデル351 ストラトローンチ

Stratolaunch


モデル351が完成し、試験飛行が終わったことで、ストラトローンチは、この巨大母機が運ぶ極超音速機の建造にとりかかることになる

モデル351が完成し、試験飛行が終わったことで、ストラトローンチは、この巨大母機が運ぶ極超音速機の建造にとりかかることになる

スケールド・コンポジッツ モデル351 ストラトローンチ

Stratolaunch


最初に披露される極超音速機は「タロンA」(Talon-A)になる見込みだ。翼と胴体が一体化した設計のタロンAは自律飛行が可能で、マッハ6(音速の6倍)の飛行能力を持つ

最初に披露される極超音速機は「タロンA」(Talon-A)になる見込みだ。翼と胴体が一体化した設計のタロンAは自律飛行が可能で、マッハ6(音速の6倍)の飛行能力を持つ

ストラトローンチが開発するタロンAの想像図。

Stratolaunch

出典:Stratolaunch Systems

タロンAは、乗客や貨物を載せず、データ収集と極超音速での移動という新しい分野の調査に特化した機体となる

タロンAは、乗客や貨物を載せず、データ収集と極超音速での移動という新しい分野の調査に特化した機体となる

ストラトローンチが開発するタロン-Aの想像図。

Stratolaunch

出典:Stratolaunch Systems

この「ブラック・アイス」(Black Ice)という愛称を持つモデルを始め、今後開発予定の機体は貨物や乗客を運搬する構想だ

この「ブラック・アイス」(Black Ice)という愛称を持つモデルを始め、今後開発予定の機体は貨物や乗客を運搬する構想だ

ストラトローンチが開発する「ブラック・アイス」の想像図。

Stratolaunch

出典:Stratolaunch Systems

モデル351は、幅11.3フィート(約3.4メートル)のタロンAを3機、翼の下に吊り下げて運ぶことができる。ゆえに、1回の離陸で複数のフライトが可能だ

モデル351は、幅11.3フィート(約3.4メートル)のタロンAを3機、翼の下に吊り下げて運ぶことができる。ゆえに、1回の離陸で複数のフライトが可能だ

スケールド・コンポジッツ モデル351 ストラトローンチ

Shutterstock.com

出典:Stratolaunch Systems

極超音速機を放出したあとは、母機の351は基地に戻り、また新たな機体を搭載できる。これは、極超音速機が地上への帰還に母機を必要とせず、自律的に着陸できることから可能となった仕組みだ

極超音速機を放出したあとは、母機の351は基地に戻り、また新たな機体を搭載できる。これは、極超音速機が地上への帰還に母機を必要とせず、自律的に着陸できることから可能となった仕組みだ

スケールド・コンポジッツ モデル351 ストラトローンチ

Stratolaunch

出典:Stratolaunch Systems

ストラトローンチの新たな航空機の開発は、「信頼性が高く、定期的な宇宙へのアクセス」を可能にする、と同社の広報担当者アート・ペティグルー(Art Pettigrue)氏は、Space Newsへのコメントで述べている

ストラトローンチの新たな航空機の開発は、「信頼性が高く、定期的な宇宙へのアクセス」を可能にする、と同社の広報担当者アート・ペティグルー(Art Pettigrue)氏は、Space Newsへのコメントで述べている

スケールド・コンポジッツ モデル351 ストラトローンチ

Stratolaunch

出典:Space News


[原文:The world's largest plane will soon be used to launch hypersonic aircraft capable of traveling 6 times the speed of sound

(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • LinkedIn
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …

あわせて読みたい

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み