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- トラック運送業界は、コロナウイルスが消費者をパニック買いに駆り立てたとき、収益をあげようと待ち構えていた。
- しかし、この業界のリーダー企業であるJ.B.ハントの業績を見ると、収益が増えても利益が増えるわけではないことがわかる。
- これは貨物業界共通の問題を示している。荷物が増えても、必ずしも利益が増えるとは限らない。
- コロナウイルスがサプライチェーンに及ぼした影響によって、利益はさらに落ち込んでいる。
ここ数週間で、コロナウイルスはアメリカの8000億ドル(約86兆円)規模のトラック業界をひっくり返した。製造業のサプライチェーンはほとんど干上がり、一方で日用品や医療品の配送需要は高まっている。
FreightWavesによると、2020年3月のトラック輸送量は前年同月比で32%増加した。この需要増により連邦政府は、新人のトラック運転手が働くことのできる労働時間を定めた安全法を撤廃することを余儀なくされた。
その変動は、アーカンソー州のローウェルを拠点とする運送会社、J・B・ハントの収益にも現れている。 2020年の第1四半期の同社の収益は、前年同期比で9.2%増加した。しかし、同じ期間の営業利益は7.8%減だった。
J・B・ハントは、2万人以上のドライバーを抱えるアメリカ第4位の運送会社だ。同社は、Business Insiderからのコメントの要請にまだ回答していない。
ウォール・ストリート・ジャーナルのジェニファー・スミス(Jennifer Smith)が3月に報じたように、トラック業界はコロナウイルスの影響で物流システムを再編成しなければならなかったため、この好況でも必ずしもトラック運転手が利益を得たわけではない。しかも、約20万社の間で激しい競争が行われているこの業界のマージンは、初めから恐ろしく小さいものだった。
輸送量の激変を受け、DATソリューションズのアナリスト、ペギー・ドルフ(Peggy Dorf)はブログに、コロナウイルスの世界的流行は「サプライチェーン混乱の元凶」だと書いた。
ウイルスとは関係なく、貨物か増えても収入が増えるわけはない
この落ち込みが最も顕著だったのは、オンラインでマットレスや洗濯機、運動器具などの大きなものを購入しようとする消費者のための 「ファイナルマイル」 部門だ。J・B・ハントは、ファイナルマイル部門の売上を39%伸ばしたが、最終的には1億5300万ドル(約165億円)の事業で330万ドル(約3億5500万円)の損失を出した。J・B・ハントは近年、ファイナルマイルに多額の投資を行っており、前四半期では総収益の7%を占めていた。ただし、依然としてJ・B・ハントの最大の事業はコンテナ輸送と専用トラック輸送だ。
収入と利益の乖離は、貨物輸送の世界に共通する問題を示している。小荷物配送大手のフェデックス(FedEx)は2019年、この罠に陥り、同社はアマゾン(Amazon)のeコマース小包(数がとても多く、利益が薄いことで有名)から、ウォルマート(Walmart)のような自社でオンラインショップを運営する企業の業務へとシフトした。
トラック運送会社のほとんどは製造業に依存しているが、工場が閉鎖されると姿を消した。J・B・ハントのような大企業はそうした工場の閉鎖を埋め合わせるだけの力を備えているが、小規模企業は大打撃を受けるか、倒産するだろう。
J・B・ハントは4月14日、株式市場の取引終了後に業績を発表した。同社は通常、アメリカのトラック業界で最初に業績発表をする企業である。そのため、J・B・ハントは業界のリーダーであり、最も成功しているトラック運送会社とみなされている。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)