アメリカは異なる文化をもつ11の「国」からできている…コロナ対策など政治的な判断の違いも納得

北米には11の「国」がある。

北米には11の「国」がある。

Colin Woodward and Tufts/Brian Stauffer

  • 著述家でジャーナリストのコリン・ウッダード(Colin Woodard)は、アメリカは歴史的・文化的な成り立ちが異なる11種類の「国(ネーション)」で構成されていると主張している。
  • ウッダードの著書『11の国のアメリカ史――分断と相克の400年』では、その文化と支配する地域が分析されている。
  • ユートピア志向的な「ヤンキーダム」、保守的な「大アパラチア」、リベラルな「レフトコースト」といったそれぞれの文化をよくよく眺めると、アメリカの政治と文化の分断が、興味深い形で浮き彫りになってくる。
  • 新型コロナウイルスのパンデミックへの対応では、一部の州知事がそうした文化の勢力範囲に沿って連携している。たとえば、カリフォルニア、オレゴン、ワシントン各州はいずれも「レフトコースト」に含まれる。

アメリカ合衆国は、50の州からなる国だ。だが、いくかの部族または派閥から構成されていると言ってもいいかもしれない。

そんな主張を展開しているのが、著述家のコリン・ウッダード(Colin Woodard)だ。ウッダードは、著書『11の国のアメリカ史――分断と相克の400年』(邦訳:岩波書店、原題:American Nations: A History of the Eleven Rival Regional Cultures in North America)のなかで、アメリカは歴史的・文化的な成り立ちが異なる11の「国(ネイション)」で構成されていると書いている。

ウッダードは、過去のBusiness Insiderインタビューで「この国では最近、州の役割や個人の自由などの基本的な多くの問題が議論の的になってきている」と語っている。

「そうした問題について生産的な対話をしたいのなら、自らのルーツを知る必要がある」

アメリカが、地理ではなく政治的信条で分断されていることは、新型コロナウイルスのパンデミックへの対応でも見てとれる。すべての州に適用される連邦政府の対策がないことから、各州知事が連携して危機に立ち向かうための計画を策定しているが、その組み合わせがウッダードの言う「11の国(ネイション)」に沿っていることも多い。

たとえば、ウッダードが「レフトコースト」と呼ぶカリフォルニア、ワシントン、オレゴンの各州では、それぞれの知事が地域連携を図っている。「ヤンキーダム」と呼ばれるネイションに属するニューヨーク州とコネチカット州も連携している。

以下では、各ネイションの歴史に関するウッダードの見解を紹介していこう。



「ヤンキーダム」は教育を重視し、政府による規制に賛成する傾向がある

「ヤンキーダム」は教育を重視し、政府による規制に賛成する傾向がある

debra millet/Shutterstock

ニューヨーク市以北の北東部からミシガン、ウィスコンシン、ミネソタ各州まで広がる「ヤンキーダム」は、教育、知的な功績、地域社会のエンパワーメント、圧政を防ぐための市民の政治参加を重んじている。また、行政による規制に賛成する傾向がある。

ヤンキーダムの人たちには「ユートピア志向的な傾向」がある、とウッダードは述べている。このエリアは、急進的なプロテスタントであるカルバン派の信者が入植した地域だ。

ニューヨーク市を含む「ニュー・ネザーランド」には、「唯物主義」の文化がある

ニューヨーク市を含む「ニュー・ネザーランド」には、「唯物主義」の文化がある

Ryan DeBerardinis/Shutterstock

商業的な文化が色濃い「ニュー・ネザーランド」は、「唯物主義的な傾向があり、民族や宗教の多様性にきわめて寛容で、探究の自由と道義心を断固として守り抜く」とウッダードは述べている。ヤンキーダムとは本質的に相性が良く、ニューヨーク市とニュージャージー州北部が含まれる。このエリアには、オランダ人が入植した。

おもに中西部にあたる「ミッドランド」は、政府の規制に反対する傾向がある

ペンシルベニア州フィラデルフィアの「自由の鐘」。

ペンシルベニア州フィラデルフィアの「自由の鐘」。

Matt Rourke / AP

イギリスのクエーカー教徒が入植した「ミッドランド」は、「アメリカのハートランド」と呼ばれる文化を生んだ温かなミドルクラスの社会だ。政治的意見は穏健で、政府の規制には眉をひそめる。

ウッダードは、人種的に多様なミッドランドを「アメリカの偉大なるスイング地域」と表現している。ミッドランドには、ニュージャージー、ペンシルベニア、オハイオ、インディアナ、イリノイ、ミズーリ、アイオワ、カンザス、ネブラスカ各州のそれぞれ一部が含まれる。

「タイドウォーター」は、奴隷制を採用する封建主義的社会として始まった

「タイドウォーター」は、奴隷制を採用する封建主義的社会として始まった

ノースカロライナ州

Shutterstock

「タイドウォーター」は、ワシントンDCの東にあるチェサピーク湾と、ノースカロライナ州周辺のエリアを指す。イギリスの貴族階級出身の若者たちによって築かれ、奴隷制を採る封建主義的社会として始まったタイドウォーターは、権威と伝統に対する敬意を重んじる。

ウッダードによれば、タイドウォーターは衰退の道をたどっている。その一因は、「ワシントンDCとバージニア州ノーフォーク周辺で拡大する“連邦政府の影響力”に侵食されている」ことにあるという。

「大アパラチア」には、ケンタッキー、テネシー、ウェストバージニア、テキサス各州の一部が含まれる

「大アパラチア」には、ケンタッキー、テネシー、ウェストバージニア、テキサス各州の一部が含まれる

Michael Hickey/Getty Images

北アイルランド、イングランド北部、スコットランドのローランド地方といった国境紛争で荒廃した地域から来た入植者たちが築いた「大アパラチア」は、「ヒルビリー」や「レッドネック」と呼ばれる白人労働者たちが住む土地の典型だ。

ウッダードによれば、大アパラチアは個人の主権と自由に価値を置き、「ローランド地方で見られた貴族制度にも、ヤンキーダムの社会工学にも、同じように強い疑いをもっている」という。連邦政府の影響力に対抗したがるという点では、「ディープサウス」と同じだ。

大アパラチアには、ケンタッキー、テネシー、ウェストバージニア、アーカンソー、ミズーリ、オクラホマ、インディアナ、イリノイ、テキサス各州の一部が含まれる。

「ディープサウス」は固定された社会構造をもち、政府の規制に反対する

「ディープサウス」は固定された社会構造をもち、政府の規制に反対する

Dave Martin/Getty Images

「ディープサウス」は、バルバドスからやってきたイギリス人が築いたネイションで、西インド諸島のような奴隷制度を持つ社会を踏襲した、とウッダードは書いている。非常に硬直化した社会構造をもち、個人の自由を脅かす政府の規制に抵抗する傾向がある。アラバマ、フロリダ、ミシシッピ、テキサス、ジョージア、サウスカロライナの各州は、いずれもディープサウスに含まれる。

「エル・ノルテ」ではヒスパニック文化が支配的だ

「エル・ノルテ」ではヒスパニック文化が支配的だ

David McNew/Reuters

旧スペイン領との国境地帯にある「エル・ノルテ」は、アメリカのほかの地域とは切り離された場所だとウッダードは書いている。このエリアではスペインの文化が優勢で、独立や自給自足、そして何よりもハードワークが重んじられる。エル・ノルテには、テキサス、アリゾナ、ニューメキシコ、カリフォルニア各州の一部が含まれる。

カリフォルニア沿岸の「レフトコースト」は、ヤンキーダムや大アパラチアとの共通点が多い

カリフォルニア沿岸の「レフトコースト」は、ヤンキーダムや大アパラチアとの共通点が多い

Mario Anzuoni/Reuters

アメリカのニューイングランド地方と中西部のアパラチア地方の出身者たちが入植した「レフトコースト」は、「ヤンキーダムのユートピア志向的な気質と、大アパラチアの自己表現や探究心」のハイブリッドであり、ヤンキーダムの頼もしい同盟者でもある、とウッダードは書いている。レフトコーストには、カリフォルニア沿岸部とオレゴン、ワシントン各州が含まれる。

「極西部(The Far West)」は、モンタナ、ワイオミング、ユタなどのアメリカ中央部の州にまたがっている

「極西部(The Far West)」は、モンタナ、ワイオミング、ユタなどのアメリカ中央部の州にまたがっている

Scott Olson/Getty Images

「極西部(The Far West)」は、西部の保守的なネイションだ。大規模投資によって開発された一方で、住人たちは現在にいたるまで、その投資をコントロールしていた東部の利権に「憤り」を抱きつづけている。

極西部は、アイダホ、モンタナ、ワイオミング、ユタ、ネバダ、ネブラスカ、カンザス、アリゾナ、ニューメキシコ、コロラド、ノースダコタ、サウスダコタ、ワシントン、オレゴン、カリフォルニアといった州にまたがっている。

「ニュー・フランス」は、経済への政府の関与を受け入れる傾向がある

「ニュー・フランス」は、経済への政府の関与を受け入れる傾向がある

2015年8月15日にニューオーリンズのフレンチクォーターのバーボンストリートで観光客相手に演奏するパーカッションバンド。ニューオーリンズは3世紀近くの歴史があり、アフリカ系アメリカ人、フランス、スペイン、カリブそれぞれの伝統を組み合わせた独特の文化を創りだした。

Max Becherer/AP

ディープサウスの中に潜むリベラリズムの飛び地「ニュー・フランス」の人々は、世間の総意に動かされやすく、寛容で、経済への政府の関与を受け入れる傾向がある。ウッダードによれば、ニュー・フランスは北米でも屈指のリベラルなエリアだという。

ニュー・フランスはカナダのケベック州だけでなく、ルイジアナ州ニューオーリンズ周辺にもある。

「ファースト・ネイション」の住人の大半はネイティブアメリカンだ

スタンディング・ロック・スー族の居留地近くを走る石油パイプライン「ダコタ・アクセス(Dakota Access)」に抗議してデモ行進する人たち。エネルギー・トランスファー・パートナーズ(Energy Transfer Partners)が所有する石油パイプラインだ。ノースダコタ州キャノンボールにて。2016年9月9日。

スタンディング・ロック・スー族の居留地近くを走る石油パイプライン「ダコタ・アクセス(Dakota Access)」に抗議してデモ行進する人たち。エネルギー・トランスファー・パートナーズ(Energy Transfer Partners)が所有する石油パイプラインだ。ノースダコタ州キャノンボールにて。2016年9月9日。

REUTERS/Andrew Cullen

ネイティブアメリカンで構成される「ファースト・ネイション」の人々は、民族的主権を享受している。ウッダードによれば、ファースト・ネイションは広大だが、人口は30万人に満たず、そのほとんどはカナダ北部に暮らしているという。

[原文:This map shows how the US really has 11 separate 'nations' with entirely different cultures

(翻訳:梅田智世/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)

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