NY遠征延期でもめげない。三重中・高校が在宅ダンス動画 「うちで踊ろう」もう一つのストーリー

新型コロナウイルス感染拡大に伴い外出自粛が求められる中、アーティストの星野源が「うちで踊ろう」と歌う動画を投稿して話題になった。安倍首相が星野との「コラボ動画」をアップし、一部ネットで炎上したのも記憶に新しい。

その星野動画を検索したら、何十人もの中高生が踊る別の動画に行きついた人もいるのでは。

星野とほぼ同時期に「#うちで踊ろう」のハッシュタグを付けて「在宅ダンス」動画を投稿した三重中学・高校ダンス部の作品だ。

全国屈指の実力を持つ同部は、3月に予定していた初のニューヨーク遠征が、コロナ感染拡大のため延期に。それでも部員たちは「今できることを」と、各自が自宅で踊った動画を集めて一つの作品にした。「うちで踊ろう」を巡るもう一つのストーリー。

三重中・高校の「うちで踊ろう」より。それぞれが自宅で踊っている様子を動画に。

「明るい気持ちに」コメント続々

中高一貫の私立校、三重中学・高校のダンス部員約50人による「在宅ダンス」は、星野源が4月3日にインスタグラムへ動画をアップした直後、YouTubeなどに投稿された。

「ハッシュタグを探している時、ちょうど星野さんの動画がアップされて、いいタグだと乗っかったら大変なことになってしまいました」

と、動画を編集した同高校ダンス部顧問の神田橋純さんは苦笑する。YouTubeの再生回数は最初の10日間で、4万8000回に上った。

動画では、部員たちがそれぞれの自宅にいるとは思えないほど、キレッキレで息の合ったダンスを見せるかと思うと、各部員がけん玉やサッカーのリフティングなどの「一芸」を披露するユーモラスな場面も。背景に勉強机や大きなぬいぐるみ、立派な日本座敷や倉庫の農機具などが写り込んでいるのも、生活感や土地柄がうかがえて面白い。何より印象的なのが、生徒たちが笑顔で、楽しそうに踊る様子だ。

コメント欄には、

「外出自粛を心がけて家にいるのですが、心が疲れてきた今、この動画を見て、涙が出ました」

「元気をくれてありがとう!」

「気がめいりそうな状況の中で、明るい気持ちになった」

といった感想が多数寄せられた。

神田橋さんは、「子どもたちには動画を作ることで、ピンチの時こそ前を向かなあかんと伝えたかった。見ている人も、前向きな気持ちになってくれれば」と話す。

NY遠征にクラファンで700万円集めるも延期

ニューヨークのタイムズスクエア

エンターテインメントの中心にNYも新型コロナウイルスの感染爆発で、厳しい外出自粛が続く。

REUTERS/Eduardo Munoz

同校ダンス部は2017年創部と歴史は浅いが、何度も全国大会に入賞している実力校だ。DREAMS COME TRUE、西野カナ、ピコ太郎といったアーティストとの共演経験もある。

ただ神田橋さんによると昨年6月ごろは、一通り目標を達成した部員たちが「中だるみ」に陥り、どこか元気を失っていたという。

そんな時、高2の部員たちが、学生の「夢」に出資する三重県のプロジェクトに応募したいと言い出した。神田橋さんが学生時代、ニューヨークのアポロシアター出演を目指した話をすると、生徒たちは「それに挑戦したい!」。

プロジェクトは採択されたが、30人もの部員の渡航には1000万円以上が必要で、全く足りない。このため昨年12月、「三重の田舎の高校ダンス部が、ニューヨークに挑戦したい!」と題したクラウドファンディングを実施し、1月末の終了時には700万円以上が集まった。

しかし、3月14日の渡米を前にして、世界的にコロナウイルスの感染が広がり始めていた。2月下旬、アメリカではそれほど感染者は表面化していなかったが、保護者の不安もあり、渡米を断念。

「大学に進学してしまう卒業生、引退を控えた新3年生たちの中には、泣いて悔しがる子もいた」(神田橋さん)という。

その後のニューヨークの爆発的な感染拡大を考えれば、渡米を取りやめたことは、結果的に正しい決断だったと言える。再渡米の見通しは、まだ立っていない。

「苦しい時期にこそできることがある」

「【在宅ダンス】三重中高ダンス部SERIOUS FLAVOR #うちで踊ろう」のスクリーンショット。

「【在宅ダンス】三重中高ダンス部SERIOUS FLAVOR #うちで踊ろう」のスクリーンショット。

出典:YouTube

その後、学校は臨時休校となり部活動は休止、3月に予定していた自主公演も延期された。だが2日に1度開いているダンス部のオンラインミーティングで、神田橋さんが「こんな時期だからこそ、できることがあるはずだ」と話すと、気を取り直した部員からさまざまな提案が出された。

「アカペラ動画はどうか」「お笑いコントをやったら」

結局、最も得意なダンスの動画を作ることが決まった。ただ最初は「コラボ動画」の完成形をイメージできず、部員たちの戸惑いも大きかったという。

もちろん全体練習はできず、各自自主練を重ねた。部員自身が振り付けを作るパートは、ビデオ通話などを通じて、アイデアを出し合った。

ただ「長い間一緒に練習してきたメンバー同士なので、誰かが少し動いたり話したりするだけで『ああ、あの動きね』と話が通じていた」(神田橋さん)。

とはいえ、オンラインのやり取りには限界もあり、振りの間違いや動きのずれを全てなくすことはできなかった。ただ神田橋さんは「少しくらい振りが違っても、楽しそうなのがうちの良さ」と、そのまま作品に残した。

動画を投稿した後も、新入生のためにオンラインで体験入部会を開くなど、部員たちがアイデアを出し合って活動している。神田橋さんは言う。

「コロナ感染拡大のせいで、部員たちはつらいことをたくさん経験した。でも、どうやってこの苦しい期間を乗り切るか、考える力を育てる期間にもなると思う」

広まる「ソーシャルディスダンス」

イギリス、フロッドシャムで住民たちが一緒にダンスをしている様子。

イギリスでも住民たちが率先してダンスをし、新型コロナウイルスの危機をポジティブに乗り越えようとしている。

REUTERS/Molly Darlington

海外では、適切な距離を取ると言う意味の「ソーシャルディスタンシング」をもじった「ソーシャルディスダンシング」が注目を集めている。住宅街で住民が、それぞれの自宅の玄関前で、距離を取りながら踊る姿や、道路で警察官がインストラクター役を務め、集合住宅の住民がそれを見ながら窓辺で踊る姿なども報じられた。

フィットネスクラブやダンススクールが軒並み休館し、「コロナ太り」や運動不足を嘆く人も多い。一方でダンスやヨガ、筋肉トレーニングなどのレッスン動画も盛んに投稿されるようになった。Zoomなどを利用したオンラインレッスンも登場している。

オンラインレッスンのメリットは、自宅にいながら世界中のダンサーやインストラクターのレッスンを受けられることだ。未曽有のピンチをポジティブに乗り切るため、三重中学・高校ダンス部を見習って、あなたも「うちで踊って」みてはいかがだろうか。

(文・有馬知子)

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