4月15日の臨時会見で東京との対策を説明する小池百合子都知事。
撮影:三ツ村崇志
4月15日、小池百合子東京都知事は、新型コロナウイルス対策の具体案とそれに伴う補正予算案について記者会見を開催。東日本大震災やリーマン・ショックを大きく上回る、総額8000億円を超える規模での対策を行うことを発表した。
記者会見では、4月補正予算案として策定した、6月までに執行する約3500億円分の予算の用途が明らかにされた(残り4000億強は、順次検討する予定)。
東京都が取りまとめた対策の大枠は、以下の3つ。
・新型コロナウイルスの感染拡大を阻止する対策(1455億円)
・経済活動と都民生活を支えるセーフティネットの強化(2007億円)
・社会構造の変革を促し、直面する危機を乗り越える取組(112億円)
小池知事は、これらを「緊急対策の3つの柱」として、今後実施していく方針を示した。
とりわけ気になるのが、休業要請などに伴う経済的支援の詳細だ。今回は、飲食店などにおける経済的支援に絞って対策をまとめた。
4月15日に発表された緊急対策案では、総額8000億円規模での対策を行う旨が示された。
撮影:三ツ村崇志
「協力金」の支給対象は、東京都の要請に協力した約13万事業者
東京都は、4月8日に発令した緊急事態措置によって、特定業種・施設に対して休業要請や時短営業の要請などを行っている。
4月10日の会見でも、そうした要請に応じた事業者に対し、「感染拡大防止協力金」(以下、協力金)として、1事業所あたり50万円(2事業所以上は100万円)を支給すると発表していた。
この協力金について、補正予算の中では「新型コロナウイルスの感染拡大を阻止する対策」の一環として、約960億円を確保している。
今回、その支給対象の詳細、実施要領が明らかにされた。
気になる協力金の支給対象は、「東京都における緊急事態措置などにより休止や時間短縮の要請などを受けた施設を運営する中小企業及び個人事業主」。
もちろん、緊急事態措置以前から営業していた実態があることが前提だ。
対象となる施設、事業者は、東京都のWebページで確認することができる。
東京都のWebページでは、緊急事態措置に伴う対応について業態別にまとめられている。
東京都
また、協力金が支給される条件として、東京都は「4月16日〜5月6日までの間に、都の要請に全面的にご協力いただくこと」をあげた。
例えば、休業を要請されているインターネットカフェ・漫画喫茶などであれば、休業への協力。飲食店であれば、5時〜20時までの時短営業への協力などが条件とされている。
また、東京都の休業要請では、一部の業態・施設に対して、床面積が100平方メートル以下であれば、感染防止対策を行った上で営業が可能だとしている。東京都によると、仮にこういった区分の事業所が休業した場合でも、協力金の支給対象になるという。
一方、もともと休業要請の対象から外れていた業態や施設が、感染防止対策として自主的に休業などの措置をとった場合は、協力金の支給を受けることができない。
例えば、美容院・理容室は、緊急事態措置のもとでも、適切な感染防止対策を行った上で営業が可能だ。そうした本来営業が可能な区分の事業所が休業したとしても、協力金の支払い対象にはならない。
なお、飲食店については、5時〜20時までの時短営業、終日の休業どちらの対応でも、協力金の支給対象となる。
東京都の担当者は、協力金の支給対象となる事業所数を、約18万と見積もっているという(事業者数でいうと約13万)。
※協力金に関する詳細は、東京都産業労働局「感染拡大防止協力金」についてを参照。
協力金の申請はWeb対応。支給は早くて5月上旬から
現状で、協力金の申請受付期間は4月22日〜6月15日。受け付けが済み次第、5月上旬から順次支給を始めていくとしている。
申請は基本的にすべて専用のWebページから行えるようにする方針を示した(郵送対応も可)。
申請時には、営業実態を示す書類として、「確定申告書の写し」「帳簿」「業種に係る営業許可証の写し」などの申請を想定。加えて、東京都から要請された休業期間に、実際に休業していた実態を示すために、「事業収入額を示した帳簿の写し」「休業期間を告知するホームページ・店頭ポスターの写し」などの提出を求める予定だ。
虚偽の申告があった場合は、協力金の返還といった対処が考えられている。
また、今回の協力金は「事業者」ではなく「事業所」ベースで支給される。仮に本社が都外にある企業でも、事業所が都内にあれば協力金の支給対象となる。
なお、休業要請などに協力した事業者は、今後、施設名などが東京都のホームページに公開されることになるという。
宅配・テイクアウト支援に最大100万円
都内では宅配サービスを利用している人が目立つ。こういったサービスへの新規登録料も支援対象とするかどうか検討されている。
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また、東京都では飲食店への支援の一環として、宅配・テイクアウトといった業態に転換する場合、初期投資向けに最大100万円助成する方針も示している。
初期投資に含まれる内容は現在調整中としながらも、東京都の担当者は、
「お店にテイクアウト用の机を設けたり、小窓を設けたりといった内装工事の部分。あるいは、移動販売をする際に使う台車。もちろん消耗品なども含まれるように調整しています。
また、宅配サービス(UberEatsなど)への登録料などについても適応できるよう検討しています」
と話す。
なお、飲食店が営業を自粛するよう求められている時間帯(夜20時〜翌朝5時)にテイクアウトやデリバリーで営業を継続していたとしても、感染拡大防止協力金の支給対象から外れることはない。
また、飲食業に限らず、資金繰りに問題を抱えている企業も増えている。こういった企業を対象に、6月までに6000億円、最終的には1兆5000億円まで、実質無利子の中小企業制度融資を拡充する方針も示した。
東京都庁。
撮影:三ツ村崇志
加えて、東京都が発表した資料には、国に対して、新たな交付金などの創設をはじめとした追加支援を要望する文言も盛り込まれていた。
東京都の支援とは別に、国も雇用調整金や無利子・無担保融資といった対策を実施しようとしている。経済的打撃を免れない現状だからこそ、国や自治体が実施しているさまざまな支援策をうまく利用して乗り切る道を探ってほしい。
※東京都が実施している措置や、支援に関する質問などは、以下のコールセンターで対応している。
「東京都緊急事態措置など・感染症拡大防止協力金相談センター」
03-5388-0567(土日平日祝日含む毎日:9時〜19時)
(文・三ツ村崇志)