4月下旬発売の「LG V60 ThinQ 5G」。付属のディスプレイ付きカバーが魅力の製品だ。
撮影:小林優多郎
2020年3月からNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3キャリアが始めた個人向け5Gサービス。各社はサービスインに合わせて、多彩な5G対応スマートフォンを発表しているが、中でも象徴的と言える特徴を備えているのがLGエレクトロニクスの2画面で使えるスマートフォンだ。
NTTドコモでは「LG V60 ThinQ 5G L-51A」、ソフトバンクでは「LG V60 ThinQ 5G」(いずれも4月下旬発売予定)の製品だが、今回はいち早くソフトバンク版の実機を試すことができたので、ファースト・インプレッションをお送りする。
ディスプレイ付きカバーで“2画面スマホ”化
LG V60 ThinQ 5G。左側がカバーのディスプレイ。右側が本体。
撮影:小林優多郎
LG V60 ThinQ 5Gの最大の特徴は前述の通り「2画面で使える」こと。“2画面スマホ”とあえて言わない理由は、単体の製品としてはあくまで1画面のスマートフォンであり、外部ディスプレイが付属した専用ケース「LGデュアルスクリーン」(同梱品)を装着することではじめて、2画面で使えるようになるからだ。
GoogleマップとChromeを起動したところ。
撮影:小林優多郎
GoogleドキュメントとGoogleハングアウトを起動しているところ。
撮影:小林優多郎
2画面を搭載することで、複数のアプリを動作させるマルチタスク処理を非常にスムーズに実行できる。例えば、Chromeブラウザーを2つ開いてECサイトの商品を見比べたり、一方でストリーミング動画を観ながら、もう一方で友だちとチャットをするなどだ。
実際、筆者もGoogleハングアウトで話をしながらメモ取りをしたり、地図を見ながらウェブ検索をしたりなど試してみたが、動作にひっかかりは感じず、快適だった。
片面をゲームパッドにすることで、対応ゲーム(写真はレーシングゲームの「アスファルト9」)を快適にプレーすることも。
撮影:小林優多郎
ディスプレイケースは閉じた時、正面にサブディスプレイが配置されている。時間のほか通知の来ているアプリをチェックできる。
撮影:小林優多郎
なお、本体・ケースどちらのディスプレイも約6.8インチフルHD+(2460×1080ドット)解像度で、タッチ対応。テレビなどのディスプレイ製造セクションを自社内に抱えるLGらしい高精細・高輝度で、見た目の満足度も非常に高い。
計4眼のカメラを搭載、8K動画撮影にも対応
本体背面には3つのカメラを備える。
撮影:小林優多郎
現代のスマートフォンを語る上で欠かせないのがカメラの存在だ。LG V60 ThinQ 5Gも昨今の“多眼カメラ”のトレンドに乗っ取り、背面に深度センサーを含めた3つのカメラ、正面に1つ、計4つのカメラを搭載している。
緊急事態宣言のさなか、不要不急の外出をするわけにもいかなかったため、参考までごく近所の公園や飲食店でスナップ写真を撮影してみた。画質や色の傾向としては派手すぎないが、ディテールをしっかり捉えて強調している印象だ。
また、少々重さに難はあるものの、写真撮影でもLGデュアルスクリーンの価値を感じる場面があった。
静止画撮影時であれば、本体にカメラアプリを起動しながら、ディスプレイケース側にビューワーを起動しておけるため、「直前に撮った写真」を表示できる。構図を合わせたいとき、逆に被らないようにしたいときなど、見比べながら撮影できる。
カメラ撮影時にデュアルディスプレイをオンにしておけば、上はカメラのファインダー表示、下はプレビュー表示となる。
撮影:小林優多郎
今回は作例としての用意はできなかったが、LG V60 ThinQ 5Gは8K(7680×4320ドット)解像度の動画撮影にも対応している。試しに自宅で撮ってみたところ、30秒撮影してデータ容量は約189MBだった。
本体ディスプレイ自体はフルHD+解像度に留まり、8Kテレビもまだまだ高価なため、あえて8Kで撮影する目的を見出すのは難しいが、内蔵ビデオプレイヤーは再生中のピンチイン・アウト操作に対応しており、家族の動画やライフログのようなものを記録するのにオススメだ。
ややかさばるのが気になるが、未来を感じるハイエンドスマホ
本体の重量(実測値)。
撮影:小林優多郎
カメラの解説でも少し触れたが、気になったのは重さだ。
LG V60 ThinQ 5Gの重さは本体だけでも約215g、LGデュアルスクリーン装着時では約349g(いずれもSIMカード・microSD未装着の実測値)。ちなみに、アップルの「iPhone 11 Pro Max」が約226g、サムスン電子の「Galaxy Note 10+」が約197g(いずれも公称値)なので、スマホとしてかなり重たい部類であるのは間違いない。
本体+カバーの重量(実測値)。
撮影:小林優多郎
また、ディスプレイケース自体が「ケース」形状なので、さらなる「ディスプレイケースを防護するためのケース」は(現時点では)存在しない。重みもあるため、安全に持ち運ぶためには袋のようなものに入れるのが適切だろう。
とはいえ、LG V60 ThinQ 5Gで得られる体験は他のスマートフォンではなかなか実現できない。現状で唯一の対抗馬と言えるのは、サムスン電子が展開する折りたたみ型スマホ「Galaxy Fold」になるだろうが、Foldは日本では5G版を現状では展開していない。
デュアルスクリーンの設定はいつでも本体側から呼び出せて、起動中のアプリを移動させたりなど柔軟に対応できる。
撮影:小林優多郎
本体価格も11万2508円(税込、ドコモ直販価格)とスペック相応のものだが、ほかのメーカー製でクアルコムの最新のチップセット「Snapdragon 865 5G mobile platform」を搭載する端末も10〜11万円ほどであることから、「ディスプレイがもう1つ付いてきておトク」という考え方もできなくはない。
今回は残念ながらエリアの関係もあり、5Gに実際に接続してデータ転送や各種サービスを試すことはできなかったが、多彩なコンテンツや大容量データの送受信が可能となる5G時代には、LG V60 ThinQ 5Gのような2画面で使えるスマホがもう少しポピュラーな存在になる可能性もある。そんな未来を先駆けて体験してみたい人にはオススメの端末だ。
(文、撮影・小林優多郎)