世界最大の貨物機、アントノフ An-225 ムリーヤ。
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- アントノフAn-225は、6基のエンジンと巨大な貨物室を備えた世界最大の貨物飛行機だ。
- ウクライナ製のこの航空機は2年間のメンテナンスを経て、再び空を飛ぶようになった。その最初の飛行はCOVID-19対策で中国とヨーロッパを結ぶミッションだった。
- 1980年代にソ連版スペースシャトルを搭載する目的で製造されたが、現在は貨物を積んで世界中を飛び回っている。
世界最大の貨物機が、2年間のメンテナンスを終え、再び空を飛び始めた。その最初のミッションは、COVID-19関連の医薬品を中国からヨーロッパに運ぶことだ。
アントノフ An-225 ムリーヤは、6基のエンジンと16対の車輪を搭載した世界最大の貨物機だ。この巨大飛行機は冷戦時代の遺物で、独立国となったウクライナが、衛星国家としてソ連の支配下にあった時に製造された。
An-225は、大型貨物用ジェット機で知られるソビエト連邦のアントノフ設計局が製造した1機だけで、同局の製造した、現在も飛行している数少ない航空機の一つだ。通常、戦車や列車、さらに航空機部品などの大型貨物用に使用されており、約250トンの貨物を搭載することができる。
修理工場から姿を現したAn-225は、ウクライナのキエフから中国の天津へと飛び、ポーランドへ運ぶ医薬品を受け取った。その後、首都ワルシャワへ約100トンの品物を運んだ。
アントノフ An-225 ムリーヤを見てみよう。
アントノフ An-225 ムリーヤはユニークな航空機だ。標準的な貨物機が空飛ぶトレーラーだとすれば、ムリーヤはその大きさと積載量では空飛ぶ貨物船と言えるだろう
アントノフ An-225 ムリーヤ
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この巨大航空機は最初、ソ連版スペースシャトルである「ブラン」を輸送をする予定だった
アントノフ An-225 ムリーヤ
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計画された宇宙船は、アメリカ航空宇宙局 (NASA)のスペースシャトルに対抗した似た外観だった。しかし、ソ連には、この新しい宇宙船をカザフスタンにある発射台に運ぶ手段がなかった
ブラン・スペースシャトル
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NASAは、スペースシャトルをボーイング747の上部に固定するだけで、長距離輸送が可能だった
スペースシャトルを運ぶボーイング747。
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ソビエト連邦はブランを運ぶためにまったく新しい航空機を開発しなければならず、最終的にはそれが空中発射台として機能することを望んだ
アントノフ An-225 ムリーヤ
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アントノフは当時、ソビエト連邦の主要な航空機メーカーの1つであり、主に貨物機を作っていた
アントノフ An-124 ルスラーン
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An-225 ムリーヤは、同様の設計を特徴とする4エンジンの貨物機である、少し小さなAn-124 ルスラーンを基に開発された
アントノフ An-124 ルスラーン
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ソビエト政府から要請された特大の貨物機の生産には、1980年代半ばから3年かかった
アントノフ An-225 ムリーヤの胴体部分。
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スペースシャトルを運ぶという目的は設計にも現れていて、機体の上に置かれるシャトルを考慮して、尾翼はツインテール構造になっている
アントノフ An-225 ムリーヤ
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しかし、ムリーヤの製造直後にソビエト連邦が崩壊したため、ロシアのスペースシャトルを運ぶという当初の使命は失われ、2001年からフルタイムで貨物を運ぶようになった
アントノフ An-225 ムリーヤ
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その結果、外部にあるシャトル運搬のための機能はほとんど使われていない
アントノフ An-225 ムリーヤ
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機首を開くことができるので、貨物を機体の前部から簡単に積み込むことができる
アントノフ An-225 ムリーヤ
Stringer/Reuters
特大の貨物倉は、巨大な風力タービンブレードなどを運ぶのに理想的だ
アントノフ An-225 ムリーヤ
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そして、それは戦車でも同じことだ
アントノフ An-225 ムリーヤ
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その貨物室には、ボーイング747-8のほぼ2倍の250トンを超える貨物を積載できる
アントノフ An-225 ムリーヤ
OPIS Zagreb / Shutterstock.com
ムリーヤの設計はあらゆる面で独特であり、モトール・シーチ製D-18Tエンジン6基と、巨大機の舵取りをする4つの前輪がある
アントノフ An-225 ムリーヤ
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荷物を積んでいない場合、航続距離は約1万マイル(約1万6000km)で、これはニューヨークとシドニー間に相当する
アントノフ An-225 ムリーヤ
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荷物を積むと航続距離は約3000マイル(約4800km)弱になるが、ヨーロッパ大陸を横断したり、ニューヨークからロサンゼルスに飛んだりするのには十分だ
アントノフ An-225 ムリーヤ
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現在のアントノフ社は、この航空機を引き続き保有し、子会社のアントノフ航空を通じて世界中の顧客にこの巨大機を貸し出している
アントノフ An-225 ムリーヤ
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2機目の機体は製造が始まっていたが完成していなかった。70%程度完成した機体はウクライナのキエフ近郊の倉庫にある
アントノフ An-225 ムリーヤ
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ムリーヤのコックピットは主貨物室の上にあり、貨物のためのできるだけ大きいスペースを確保している
アントノフ An-225 ムリーヤ
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旧ソ連時代の航空技術がまだ発展していなかった時に作られた古めかしいコックピットは空っぽで、操縦にはパイロットに加えてエンジニアが必要だ
アントノフ An-225 ムリーヤのコックピット。
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両側に2人ずつ配置された4人の飛行技術者が、数え切れないほどの計器を監視して、老朽化した飛行機が安全に機能していることを確認する
アントノフ An-225 ムリーヤのコックピット。
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コックピットのパネルは、ソ連の多くの旅客機や貨物機に見られる典型的な緑色で塗られている
アントノフ An-225 ムリーヤのコックピット。
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メンテナンス後の最初の任務でAn-225は中国の天津から、途中、カザフスタンのアルマトイで給油してポーランドのワルシャワまで医薬品を運んだ
アントノフ An-225 ムリーヤ
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ムリーヤは現在、COVID-19との戦いの最前線に物資を運ぶための大規模な航空機団に加わっている
アントノフ An-225 ムリーヤ
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ボーイング747-400LCFドリームリフターなどとともに働く
ボーイング747-400LCFドリームリフター
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エアバスA380も、世界中に人や物資を輸送している
チャーター会社のハイフライ航空が運用するエアバスA380.
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アントノフ An-225 ムリーヤは、2年間のメンテナンスを行ったこともあり、少なくとも2033年までは運航を継続する予定だ
アントノフ An-225 ムリーヤ
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(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)