Netflix(ネットフリックス)は世界に1億6000万人超の会員を抱える。
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- ディズニープラスのローンチ以来苦戦が続いていたネットフリックスだが、解約率の上昇にブレーキがかかったことが明らかになった。
- 最新のデータによると、ネットフリックスの2020年2月、3月の解約率は低下傾向。
- 背景には、新型コロナウイルスの流行により在宅時間が長くなっていることがあるとみられる。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が続くなか、ネットフリックスが契約者数を回復しつつある。
サブスクリプション(定額制)ビジネスの調査分析を手がけるアンテナ(Antenna)からBusiness Insiderが入手したデータによると、「ディズニープラス(Disney+)」がローンチしてから競争が激化していた動画配信サービス市場だが、ここに来てネットフリックスの解約に歯止めがかかった模様だ。
アンテナは、匿名化された消費支出データをライセンス契約のもとで活用し、サブスクリプションの解約動向などいくつかの指標をトラッキング(追跡監視)している。
ディズニープラスが2019年11月にサービス開始した直後、ネットフリックスの解約率は急激に高まり、2019年当初の2.3%から4.9%へと倍増していた。この数字は、ネットフリックスからディズニープラスにスイッチした動きを示しているとみられる。
ネットフリックス月間解約率の推移。
Antenna
しかし最新のデータを見ると、ネットフリックスのアメリカ国内での解約率は2月、3月とも鈍化し、平均4.2%で推移。ディズニープラスのローンチ前の水準に近づいてきている。
背景には、新型コロナウイルスの流行で外出を自粛する人が増え、結果として動画配信サービスの契約数が全体的に増えたことがある。
また、2月、3月は安定してヒット作にも恵まれた面がある。ドキュメンタリーシリーズ「タイガーキング」、リアリティ番組の「ラブ・イズ・ブラインド」、「ザ・サークル ブラジル編」や「オザークへようこそ」の最新シーズン、と粒ぞろいだった。
動画配信サービス市場には、4月にモバイル動画サービス「クイビー(Quibi)」とNBCユニバーサルの「ピーコック(Peacock)」が、5月にはワーナーメディアの「HBO Max」が参入する。ネットフリックスとしては、この段階で解約率に歯止めをかけられたことで、競争激化間違いなしの市場のなかで、安泰の地位を固めたと言えるだろう。
アンテナのデータでもうひとつ注目しておきたいのは、3月にネットフリックスの解約率が改善された一方で、HBOやショウタイム(Showtime)、スターツ(Starz)といった他の動画配信サービスは逆に、同時期の解約率が上昇していることだ。
とはいえ、これでネットフリックスは新たな競争に巻き込まれる可能性がなくなったとまでは言えない。
アンテナのデータによれば、ディズニープラスと新たに契約したネットフリックスの既存会員は、依然、他の会員より解約する割合が高い。
ネットフリックス月間解約率の内訳。赤がディズニープラスと契約していない会員、ピンクがディズニープラスと契約した会員のもの。
Antenna
もちろん、それはネットフリックスだけが抱えるリスクではない。他のHBOやショウタイムなども、ディズニープラスとひとたび契約してしまうと、既存の会員を失う可能性が高まる。
ただし、フールー(Hulu)だけは別だ。ディズニープラスと新たに契約したフールーの会員は、既存のフールーの契約を解除する傾向はみられない。ディズニープラスは、フールーとESPNプラスも含めて割安で視聴できるパッケージを提供しており、それが功を奏している面もあるだろう。
ネットフリックスの株価は4月15日、2018月6月以来およそ2年ぶりに史上最高値を更新している。
(翻訳・編集:川村力)