迅速かつ躊躇ない対応が成功のカギ? 経済を再開し始めたオーストリアはいかにして新型コロナウイルスと戦ってきたか

ウィーン

2020年4月14日、オーストリアの首都ウィーン。

Lisi Niesner/Reuters

  • 1カ月のロックダウン(都市封鎖)を経て、オーストリアは4月14日現在、ヨーロッパで他国に先駆けて新型コロナウイルス対策を緩和し始めた国の1つとなった。
  • まずは不要不急でない店の再開から、規制は徐々に解除されている。一方、レストランの営業再開は5月半ばまで待たなければならない。
  • オーストリア政府は全国民に対し、マスクの着用を義務付けている。また、感染を追跡する赤十字のアプリの利用を求めている。
  • オーストリアはその危機に対する迅速かつ効率的な対策を称賛されている。4月20日現在、人口900万人のオーストリアでは、新型コロナウイルスの感染者数は1万4000人を超え、452人が死亡した。

1カ月のロックダウンを経て、オーストリアはヨーロッパで他国に先駆けて新型コロナウイルス対策を緩和し始めた国の1つとなった。

早い決断が新型コロナウイルスの感染拡大を早急に食い止める助けとなり、オーストリアの感染者数は比較的少ないままだ。

オーストリア当局は新型コロナウイルスに対し、慎重な楽観論を持って取り組んできた。3月14日に始まったロックダウンは、まずは不要不急でない店の再開から徐々に解除されていて、今後、レストランやショッピングモールが続く見込みだ。

だが、オーストリア人は今、新たな必要に迫られている。感染を再び拡大させないよう、セバスティアン・クルツ首相は国民に対し、外出時のマスク着用を義務付けた。

オーストリアは新型コロナウイルスという危機にどのように取り組んできたのか、振り返ってみよう。


オーストリアで最初の感染者が確認されたのは2月25日、休暇をイタリアのロンバルディア州で過ごし、帰国した男女だった。

地図

イタリアのロンバルディア州はオーストリアとの国境に近い。

Getty/Miguel Medina

オーストリアは、ヨーロッパの中でも新型コロナウイルスの感染者数が多いイタリアと国境を接している。

その近さ(イタリアのロンバルディア州にあるミラノからオーストリアのインスブルックまでは自動車で約4時間半だ)から、休暇でイタリアを訪れるオーストリア人は多く、その逆もしかりだ。

ガーディアンによると、感染が確認された男女はインスブルックにある病院で治療を受けた。

オーストリアでの最初の大規模感染は3月上旬、スキーリゾートのイシュグルで始まったようだ。その後、イシュグルと接点のある感染者が6つの国で報告された。

イシュグル

Jan Hetfleisch/Shutterstock

Source:Business Insider

3月10日、オーストリア当局は学校や大学を休校とし、集会を禁止し、近隣国への移動を制限した。こうした措置を取ったのは、オーストリアがヨーロッパの中で初めてだった。

警察

ハンガリーとオーストリアの国境が閉鎖される中、自動車をチェックするハンガリー警察(2020年3月18日、オーストリアのニッケルスドルフ付近)。

Leonhard Foeger/Reuters

当局は感染が報告され始めた9日後の3月13日にイシュグルを封鎖しただけでなく、チロル州全体を隔離した。

チロル州

2020年3月15日、チロル州。

チロル州政府は現在、対応が遅かったとして観光客2500人から集団訴訟を起こされている

Source:Business Insider

その後、オーストリアは3月16日、国全体をロックダウンした。この時点ではまだ、ドイツやイギリスなどの国でこうした措置は取られていなかった。

夜の道路

2020年4月9日、ウィーン。

Lisi Niesner/Reuters

フランスも同じ日にロックダウンした。少なくとも5月11日まで家にとどまるよう求めている。

インデペンデントによると、新型コロナウイルス対策でオーストリアがうまくいっているのは、ヨーロッパで早い段階でのロックダウンという措置を最初に取った国の1つだからと考えられている。

人々は在宅勤務となり、街や主要高速道路はからっぽになった。

ORFによると、オーストリアの人々が自宅から出るのを許されるのは、食料品店や薬局に行くか、屋外で運動する時だけだった。

他の国と違って、オーストリアでは何度でも運動のために外出することが許されていた。ただ、社会距離戦略(人と人との接触を極力減らすこと、ソーシャル・ディスタンシング)のルールは守らなければならない。

会話する人

ソーシャル・ディスタンシングを維持しながら会話する人たち(2020年4月6日、ウィーン)。

Lisi Niesner/Reuters

ロイターによると、警察はソーシャル・ディスタンシングのルールを守らないと、最大3600ユーロ(約42万円)の罰金を科すと警告した。

インデペンデントによると、ロックダウン中に1万7000回以上の違反があったという。

レストランが隠れて営業を続けようとした場合は、最大3万ユーロの罰金だ。

オーストリアがロックダウンに踏み切った翌日、ウィーンでは感染者の増加に備え、仮設の救急病院が完成した。

仮設病院

2020年3月17日、ウィーン。

Georg Hochmuth/Pool via Reuters

3月半ばまでに、オーストリアでは新型コロナウイルスの感染者数が3日ごとに倍増していた。ピークは3月26日で、1日で966人の新たな感染が分かった。

病院入り口

2020年3月15日、ウィーン。

Lisi Niesner/Reuters

Source:The Independent

感染拡大カーブを平坦化するのに役立った政府の取り組みの1つが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような症状が出た人の家に医療従事者を派遣するホットラインを設置したことだ。

マスクの案内

2020年3月19日、ウィーン。

Leonhard Foeger/Reuters

オーストリアでは、症状のある人は全員、このホットラインに電話するよう言われていて、そこで医療専門家が検査が必要かどうかを判断する。検査が必要と判断されれば、医療チームがその人の家を訪ね、検査をするとインデペンデントは報じた。

このサービスは大々的に告知されていて、早い段階から利用できた。

政府の公衆衛生に関するアドバイザーを務めるクレメンス・マーティン・アウアー(Clemens Martin Auer)氏は「カギは、こうした人々を大規模感染が起こり得る、急速に感染が拡大し得る病院から遠ざけておくことでした。これがわたしたちにとっては大きな変化をもたらしました」とインデペンデントに語った。

ただ、電話がつながるまで待つ時間、検査結果が分かるまで待つ時間が長いといった課題もこのシステムにはあった。

Source:The Independent

その一方で、政府は3月18日、380億ユーロ(約4兆4000億円)の支援パッケージを発表した。

首相と閣僚

記者会見に現れたクルツ首相と関係閣僚(2020年4月6日、ウィーン)。

Roland Schlager/Pool via REUTERS

だが、経済を維持しようと努力したものの、ドイチェ・ヴェレによると、オーストリアでは4月初めの時点で50万4000人が失業を申請しているという。

ロックダウンから2週間で、20万人増えた。

Source:Reuters

感染者数が減り始めると、オーストリア政府は4月6日、スーパーマーケットや薬局でのマスク着用を義務付けた。

マスクの自販機

地下鉄の駅に置かれた自動販売機で、1つ15ユーロで売られているマスク(2020年4月6日、ウィーン)。

Lisi Niesner/Reuters

クルツ首相は発表時、"マスク"はスカーフを含め口と鼻を覆うものなら良いとし、医療用マスクは病院スタッフに残しておくようにした。

Source:BBC

1カ月のロックダウンを経て、オーストリアは規制を解除し始める具体的な日付を示したヨーロッパで最初の国となった。

ホームセンターに並ぶ人

2020年4月14日、アイゼンシュタット。

Leonhard Foeger/Reuters

計画は4月6日の記者会見で示されたと、フィナンシャル・タイムズが報じた。

マルガレーテ・シュランベック(Margarete Schramböck)経済大臣は「うまく対応してきた国々での経験が、わたしたちに徐々に動かなければならないと教えてくれました」と述べたとBBCは報じている。

解除に向けたステップは4月13日の週から始まった。4月14日現在、不要不急でない店の営業再開が認められた。

書店

2929年4月14日、ウィーンの書店。

Leonhard Foeger/Reuters

営業再開が認められたのは、売り場面積が440平方メートル以下の店のみだ。

Source:Deutsche Welle

ホームセンターも営業している。

ホームセンター

2020年4月14日、アイゼンシュタット。

Leonhard Foeger/Reuters

5月1日からは理美容院やショッピングモールも営業を再開できるという。だが、レストランやホテルは5月半ばまで待たなければならない。

ガラガラのカフェ

2020年3月16日、ウィーン。

Leonhard Foeger/Reuters

テニスやゴルフといったソーシャル・ディスタンシングと両立できるスポーツも5月1日から再開でき、プロのアスリートたちも特定のトレーニングセンターで活動できるようになると、ロイターは報じている。

だが、集会は少なくとも6月下旬まで待たなければならないと、ドイチェ・ヴェレは報じた。

マスク着用の義務は、不要不急でない店や公共交通機関にも適用されている。

Source:Deutsche Welle

生活はゆっくりと元に戻り始めているが、多くの人は今もウイルスに感染することを恐れている。

ウィーン

2020年4月6日、ウィーン。

Leonhard Foeger/Reuters

ウィーン中心部で紳士服の店を営むトマス・カソウィッツさんは「もちろん、営業を再開できてうれしいです。でも、ウイルスはまだあるので、全く問題ないというムードではありません」とドイチェ・ヴェレに語っている

「雰囲気は良くなっていくでしょうが、状況そのものが好転する必要があります」という。

また、オーストリア政府は、赤十字が開発したアプリの使用を国民に勧めている。感染者と接触した人を追跡するのに役立つという。

老夫婦

2020年4月8日、ウィーン。

Leonhard Foeger/Reuters

ロイターによると、この「Stop Corona」というアプリはすでに数千人がダウンロード済みだという。

Source: Reuters

政府が委託した最新調査によると、4月初めまでに新型コロナウイルスに「実際に感染した」人の割合は人口の1%以下だという。

クルツ首相

2020年4月6日。

Helmut Fohringer via Reuters

この調査は調査会社「Sora」が1500人以上を対象に実施したと、ガーディアンが報じた。

だが、この調査結果には無症状の感染者や免疫のある人は含まれていないという。

Source:The Guardian

国民の健康を守りながら、経済を再開できるのか、各国政府はオーストリアのアプローチに注目している。

花市場

2020年4月14日、ウィーンの花市場。

Lisi Niesner/Reuters

[原文:Austria responded fast and decisively to its coronavirus outbreak, and is now starting to open up again. Here is exactly what happened.

(翻訳、編集:山口佳美)

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