富士そばパート「シフトカットで月収10万円、もう限界」で給与全額補償も営業は継続

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記者会見を行う岸本優さん(左)と、飲食店ユニオンの栗原耕平事務局次長。

撮影:横山耕太郎

新型コロナウイルス感染拡大による自粛要請を受け、休業したり営業時間が短縮になったりした飲食店などでは、パートのシフト減少に伴う給与補償が行われない事例が相次いでいる。

個人が加盟する労働組合・飲食店ユニオン(首都圏青年ユニオンの飲食業分会)では、そばチェーン店「名代 富士そば」を運営するダイタンキッチンに対し、同ユニオンの男性組合員について、「削減された労働時間・シフト分の全額給与補償」や、「感染リスクを回避するため感染拡大地域での当面の間の営業停止」などを求めた団体交渉の申し入れを4月14日に行った。

飲食店ユニオンによると、同社は男性への全額給与補償を行うと回答したが、営業停止については回答がなかったため、4月17日に再度の要求を行った。

シフトカットで「収入10万円」

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ダイタンキッチン側は、飲食店ユニオンの組合員男性への給与補償を認めたという。

撮影:横山耕太郎

「富士そばで週5日40時間働いて、17~18万円の給与をもらっていた。一人暮らしで何とかやっていける金額だったが、2月末からシフトを減らされ、収入は10万円を切るくらいになった。食費を削ったり、貯金を切り崩したりしての生活になるが、それも限界がある」

冒頭の組合員男性は、千葉県に住む岸本優さん(52)。4月17日に所属する飲食店ユニオンの関係者らと都内で会見を開いた。

岸本さんは千葉県内の富士そばに2020年1月からパート勤務。しかし、新型コロナの影響による売り上げの悪化や営業時間の短縮を受け、2月下旬には店長からシフトカットを伝えられ、勤務時間は週40時間から24時間まで半分近く減った。

さらに、4月に入ってからは週末の土日だけの勤務を提案されたこともあったといい、生活できなくなる不安を感じていた。

そんなとき、飲食店ユニオンの存在を知り、団体交渉を行うことを決めたという。

「シフトカットについて会社に掛け合いましたが、非正規従業員なので強くは言えませんでした。団交を経て、カットされた分の給与は補償してくれることになり、当面はなんとかやっていけるめどが立ちました。

自分と同じようにパート仲間も困っていますが、『職場にいづらくなる』などの理由で声を上げられない状況です。私自身も職を失う恐怖を感じて過ごしていました。同じ境遇の人は孤立しないで相談してほしいです」(岸本さん)

「コロナにかかって死ぬか、飢えて死ぬか」

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富士そばでは、東京都の要請を受け営業時間を短縮している。

撮影:横山耕太郎

飲食店ユニオンでは、シフトカットによる給与の補償に加え、富士そばで働く従業員の感染リスクを軽減させるため「当面の間の営業停止」も求めている。

記者会見に出席した飲食店ユニオンの栗原耕平事務局次長は、「調理場は狭く社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)をとるのが困難で、従業員の感染リスクが高い。食券は手で受け渡されることもあり、カウンターと従業員との距離も近い」と説明した。

岸本さんも、「マスクをしていないお客さんの対応の際には感染の不安があった。もちろんリモートワークはできない。通勤は自転車でしていた」と話す。

富士そば側は、同ユニオンに対し、従業員の感染防止策として、マスク着用や手先のアルコール消毒、毎日の検温、自動ドアの常時開放を実施していると回答した。

「感染対策は十分でない。飲食業は8割が非正規従業員で、感染のリスクがあっても休職や退職は現実的ではない。組合員からは、『コロナにかかって死ぬか、休んで経済的に飢えて死ぬかどっちかだ』という声もある」(飲食店ユニオンの栗原さん)

一方で、岸本さんの給与補償を示した点は、評価できるとしている。

「富士そばと対立するのではなく、岸本さんだけでなく他の従業員の全額給与補償も含め、今後も交渉を続けていきたい。困っている人は飲食店ユニオンに相談して一緒に交渉に参加してほしい」

ホットライン「休業手当」相談相次ぐ

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飲食業では、営業時間を短縮したり、休業したりする店舗が多い。

撮影:竹井俊晴

飲食店ユニオンには2月以降、新型コロナに関する相談が多数寄せられており、4月11・12日には「労働相談ホットライン」を開設した。

これまでの相談の件数は44件で、うち40件が「休業手当」について、3件が「感染リスク」についてだった。また8割以上が非正規従業員からの相談だった。寄せられた相談では、シフトカットにより生活が苦しくなったとの声が多かったという。

「飲食店で掛け持ちしているが、どちらも休業になった。6割の休業手当はあるがそれでは生活できない」(30代男性・アルバイト)

「コロナの影響で3月からシフトを減らされた。社員には休業手当が出るが、パートは有給休暇を使うしかない」(20代女性・パート)

「時短営業となり4月の勤務が激減したが、手当は一切ない。社員だけはフルタイムの勤務時間を確保するとのこと」(40代女性・パート)

飲食店ユニオンでは4月18・19日の午後1時~午後5時にも、労働相談ホットラインを開設する。相談は無料。電話番号は03-5395-5359

(文・横山耕太郎)

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