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飛騨山中にある黄金の部屋「スーパーカミオカンデ」を見てみよう

スーパーカミオカンデ

スーパーカミオカンデ

Kamioka Observatory, ICRR (Institute for Cosmic Ray Research), The University of Tokyo

  • スーパーカミオカンデは、岐阜県の山の下に埋められた15階建てサイズの素粒子観測装置だ。
  • ニュートリノは我々の体や地球を通り抜ける素粒子であり、それらを研究することで超新星や宇宙について知ることができます。
  • スーパーカミオカンデは物質と反物質の関係を研究する論文で重要な役割を果たし、2020年4月にネイチャー誌の表紙になった。
  • 検出器は超純水で満たされており、それはあなたの髪から栄養分を抽出したり、金属を溶かしたりすることもできる。

岐阜県飛騨市の池ノ山の地下1000メートルには、まるで秘密基地のような場所がある。

スーパーカミオカンデ(スーパーKとも呼ばれる)はニュートリノの観測器だ。ニュートリノは、宇宙空間を移動し、固体を通過する亜原子粒子。これらの粒子の研究は、科学者が寿命がつきかけている星を発見し、宇宙についてより多くを知るのに役立っている。Business Insiderは3人の科学者に、巨大な黄金の部屋の仕組みと、その中で実験を行うことの危険性について話を聞いた。


亜原子粒子の世界を知る

ニュートリノを検出するのは非常に難しく、天体物理学者のニール・ドグラース・タイソン(Neil deGrasse Tyson)は、それを「宇宙で最も捕らえにくい獲物」と呼んでいた。 この動画の中で彼は、他の粒子が入り込むのを防ぐために、検知器が地中深くに埋め込まれていると説明している。

「物質はニュートリノにとってなんの障害にもならない」と彼は言う。

「ニュートリノは、何百光年もの鋼鉄の中であろうと速度を落とすことなく通過することができる」

では、どうやって検出するのか。

「超新星となった恒星は崩壊してブラックホールになる」とインペリアル・カレッジ・ロンドンのヨシ・ウチダ博士はBusiness Insiderに語った。

「もし我々の銀河系でそのようなことが起こったときに、スーパーKは、ニュートリノを発見することができる数少ない装置の一つだ」

星が崩壊し始める前にニュートリノを放出するため、スーパーKは一種の早期警報システムとして機能し、これから起こる目を見張るような宇宙の出来事について教えてくれる。


カニ星雲(写真)は、1054年に観測された超新星爆発の残骸だ。

カニ星雲(写真)は、1054年に観測された超新星爆発の残骸だ。

NASA, ESA, G. Dubner (IAFE, CONICET-University of Buenos Aires) et al.; A. Loll et al.; T. Temim et al.; F. Seward et al.; VLA/NRAO/AUI/NSF; Chandra/CXC; Spitzer/JPL-Caltech; XMM-Newton/ESA; and Hubble/STScI

「単純計算では、我々が観測できる範囲で超新星爆発が起こるのは30年に一度と言われている」とウチダ博士は言う。

「もし見逃したら、次を見るまでには数十年待たなければならない」


茨城県からニュートリノを発射して岐阜県で検出

スーパーKは宇宙から降り注ぐニュートリノを捕らえるだけではない。T2K実験は、295km離れた茨城県東海村に位置する施設からニュートリノを発射してスーパーKで観測するというものだ。

ニュートリノが物質を通過するときにどのように変化するか、あるいは振動するのかを研究すれば、宇宙の起源についてもっと知ることができるかもしれない。

2020年4月、物質と反物質の関係をより深く理解できる、この検出器を使った画期的な発見がなされ、スーパーKはネイチャー誌の表紙を飾った。

スーパーカミオカンデ

スーパーカミオカンデの上部を見上げる。

Kamioka Observatory, ICRR (Institute for Cosmic Ray Research), The University of Tokyo

「我々のビッグバンモデルは、物質と反物質は同じ場所で作られると予測している」とインペリアル・カレッジ・ロンドンのモーガン・ワスコ(Morgan Wascko)博士はBusiness Insiderに語った。

「しかし今、反物質(の大部分)は何らかの理由で姿を消している」

研究者たちは、スーパーカミオカンデでニュートリノと反ニュートリノがどのように振動するかを研究した。インペリアルによると、今回の研究結果では、物質と反物質の挙動が異なるという「これまでで最も有力な証拠」を提供しており、宇宙の始まりにおいて、物質と反物質がすぐには消滅しない理由を説明しているという。

「我々の宇宙になぜ物質が存在するのかという根本的な問いに対する答えに、かつてないほど近づいている。現時点で95%以上の確率で正しいと思われるが、もしこれが確認されれば、物理学に大きな影響を与えるだろうし、宇宙がどのように進化してきたかをよりよく理解する道を指し示すはずだ」と、インペリアル・カレッジの物理学者であるパトリック・ダン(Patrick Dunne)博士は述べた


スーパーKはどうやってニュートリノを捕らえるのか

スーパーカミオカンデ

スーパーカミオカンデの構造図。

Kamioka Observatory, ICRR (Institute for Cosmic Ray Research), The University of Tokyo

地下1000メートルに埋められたスーパーカミオカンデは、15階建てのビルと同じくらいの大きさだ。

その巨大なタンクは5万トンの超純水で満たされている。水中を移動するときにはニュートリノは光よりも速いからである。ニュートリノが水の中を移動するとき、「コンコルドがソニックブームを作り出したのと同じ方法で光を作り出す」とウチダ博士は言う。

「飛行機が音速よりも速いスピードで飛んでいると、遅い物体では発生しないような大きな衝撃波、つまり音が発生する。同じように、水中を通過する粒子が水中の光の速度よりも速く移動すると衝撃波、つまり光が発生する」

その部屋には1万1000個の金色のバルブが並んでいる。この光電子増倍管(PMT)は信じられないほど高感度の光検出器で、ニュートリノによる衝撃波を捉えることができる。


光電子増倍管(PMT)

ワスコ博士はそれを「電球の逆だ」と説明する。簡単に言えば、ごくわずかな量の光でも、それを電流に変換することによって、観測することができる。


恐ろしく純粋な水

ニュートリノによる衝撃波からの光がセンサーに届くためには、水がとてつもなくきれいでなければならない。スーパーKでは常にフィルターで浄化し、さらには紫外線を照射して細菌を死滅させている。

実際にその水はかなり気味が悪い。

「超高純度の水には物質が溶ける」とウチダ博士は言う。

「純粋な水は非常に不快なものだ。酸とアルカリの両方の特徴がある」

「ここの超高純度の水に浸かっていると、かなりの角質除去効果があるだろう。あなたが望むかどうかにかかわらず」とワスコ博士は述べた。

スーパーKのメンテナンスのときには、研究者たちはセンサーを修理して交換するためにゴムボートを使う必要がある。

スーパーカミオカンデ

ゴムボートが検出器の中へと降ろされる。

Kamioka Observatory, ICRR (Institute for Cosmic Ray Research),The University of Tokyo

スーパーカミオカンデ

ゴムボートからPMTを検査する研究者。

Kamioka Observatory, ICRR (Institute for Cosmic Ray Research),The University of Tokyo

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徐々に水位を下げて、すべてのPMTをチェックする。

Kamioka Observatory, ICRR (Institute for Cosmic Ray Research),The University of Tokyo

スーパーカミオカンデ

PMTを交換する研究者。

Kamioka Observatory, ICRR (Institute for Cosmic Ray Research),The University of Tokyo

スーパーカミオカンデ

改修のために完全に排水された後の内部。

Kamioka Observatory, ICRR (Institute for Cosmic Ray Research),The University of Tokyo

シェフィールド大学のマシュー・マレック(Matthew Malek)博士は、博士課程の学生だった頃に他の学生2人とボートに乗ってメンテナンスをしていた。

ある日、仕事が終わるとタンクから出入りするためのゴンドラが壊れ、彼と他の2人はしばらく待っていなければならなかった。

「気づいていなかったのだが、ボートに横になっていた時、髪の毛が3センチほど水に浸かっていた」とマレック博士はBusiness Insiderに語った。水による汚染を心配していなかったが、翌朝、恐ろしいことになっていた。

「頭皮のかゆみで朝の3時に目が覚めた。これまで一番のかゆさだった」と、彼は語った。

「子どもの頃に水疱瘡にかかったときよりもかゆくて眠れなかった」


スーパーカミオカンデ

スーパーKの水には、いくつかの困った特性がある。

Kamioka Observatory, ICRR (Institute for Cosmic Ray Research),The University of Tokyo

彼は、ここの水が髪の栄養素を先端から吸い出し、栄養素の欠乏が彼の頭皮まで達していることに気がついた。彼はすぐにシャワーに飛び込み、30分間激しく髪を洗った。

別の話では、ワスコ博士は2000年にタンクが完全に排水されたときに、研究者がタンクの底にレンチの輪郭を見つけたと聞いたという。「1995年に誰かがレンチを置き忘れたらしく、2000年に排水したときにはレンチは溶けていた」


スーパーK 2.0

スーパーカミオカンデは巨大だが、ワスコ博士は「ハイパーカミオカンデ」と呼ばれる、さらに大きなニュートリノ検出器が計画されているとBusiness Insiderに語った。

「我々はこのハイパーカミオカンデでの実験を進めようとしている。そしてそれは2026年頃に始まるだろう」と彼は言った。

ハイパーKは、スーパーKの20倍の体積で、1万1000ではなく約9万9000の光検出器を備えているという。

[原文:A golden chamber buried under a mountain in Japan contains water so pure it can dissolve metal, and it's helping scientists detect dying stars

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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