コロナショック前まで時価総額120兆円を誇ったアップルの従業員ですら、失業の不安を抱えている(写真はイメージ、ロックダウン中のパリ市内にあるアップルストア)。
REUTERS/Charles Platiau
- ビジネス特化型匿名SNS「Blind(ブラインド)」がテック企業の従業員約7000人を対象に行った調査の結果、3月から4月にかけて失業への不安が33%高まっていたことがわかった。
- 最も失業の不安が薄かったのはフェイスブックの従業員。一方、最も深く不安を感じているのはオンライン旅行予約サイト・エクスペディアの従業員だった。
- 賃金カットの不安の有無についても調査したところ、3月から4月にかけて22%高まっていた。
- 賃金カットの不安が最も薄かったのはアマゾン、最も深い不安を感じているのは配車サービスリフト(Lyft)の従業員だった。
ブラインドの調査により、テック企業で働く従業員たちの4分の3近くが失業の不安を感じていることが明らかになった。1カ月前(2020年3月)に行った同調査に比べ、不安を感じている従業員の数が33%増えた。
調査での質問は「新型コロナウイルス感染拡大による経済動向の変化を受けて、失業の可能性が高まる不安を感じていますか?」というもの。4月11〜15日に回答した従業員6950人のうち72%が「はい」と答えた。3月9〜11日に行った同内容の調査では、7155人のうち54%が「はい」と答えていた。
回答を寄せた従業員の数は企業によって異なり、アマゾンは560人、アドビは48人だった。企業別にデータを見ると、それぞれの企業の従業員たちがこの不透明と不安の時代をどのように受け止めているのかがタイムリーに映し出されていることがわかる。
例えば、失業の不安が最も薄かったのはフェイスブックで、上述の「不安を感じていますか?」の質問に「はい」と答えたのは半数にとどまった。
逆にエクスペディアの従業員は95%が不安を感じていると答えている。同社が2月後半に全従業員の12%をレイオフしていることからすれば、驚くべき結果とは言えないかもしれない。観光分野とギグエコノミー(=ウーバーなどのようにオンラインで単発の業務を請け負う)分野の企業については、総じて高い不安が示される結果となっている。
新型コロナの世界的流行によって、失業する不安を感じているテック企業の従業員の割合。各社の左が3月調査、右が4月。「不安を感じている」が青、「感じていない」がピンク(画像をクリックすると拡大表示されます)。
Ruobing Su/Business Insider
テクノロジー分野を専門とするアナリストのチャールズ・キングによれば、ブラインドによる調査の結果は「新型コロナウイルスの感染拡大の影響が大規模かつ急速に広がっているか」を示しており、失業の不安が「すべての人に平等に襲いかかっているわけではない」ことがわかるという。
「一部の企業や産業分野が危機に襲われている一方で、特需に沸いているテック企業もある。クラウドコンピューティング、オンラインゲーム、エンタテインメントがそうだし、在宅勤務を円滑化するツールやサービスを提供しているベンダー(販売元)もだ」
調査からもうひとつ確認できたのは、大企業の従業員の不安がこの1カ月間で急激に高まったこと。3月調査の段階では、アマゾン、グーグル、リンクトイン、セールスフォースの従業員で失業の不安を感じているのは半分に満たなかった。アップルに至っては、不安を訴えていたのはわずか39%だった。
ところが、そうしたうわべの平静さは一気に瓦解する。4月調査では、不安を感じている従業員が6割に満たない企業は1社もなかった。
本調査は、アメリカの失業者数が過去最悪を記録したまさにその日に始まった。労働省は、4月5〜11日の1週間に520万人が失業保険を申請し、直近4週間の合計が2203万人に達したことを明らかにしている(4月16日)。
アメリカ民間セクター雇用品質指数(JQI)の共同考案者、ダニエル・アルパートによれば、不要不急とみなされる仕事はもちろん、「経営部門の事務職、専門職、技術職、管理職、営業職といった回避可能な人員整理」も含め、第一線の従業員にまで全米各地にレイオフの波が押し寄せようとしているという。
収入減少の不安が大手テック企業にも広がる
新型コロナの世界的流行によって、収入減の不安を感じているテック企業の従業員の割合。各社の左が3月調査、右が4月。「不安を感じている」が青、「感じていない」がピンク(画像をクリックすると拡大表示されます)。
Ruobing Su/Business Insider
ブラインドの調査にはもうひとつ質問項目があった。「新型コロナウイルス感染拡大による経済動向の変化を受けて、年収が減る不安を感じていますか?」というものだ。
こちらの質問については、回答者の76%が「はい」と答えた。3月調査では62%だったので、約23%の増加となる。
収入減の不安が最も少なかったのはアマゾンの従業員で、不安と回答した割合は65%だった。その真逆だったのが配車サービスのリフト。94%が不安を感じていると答えた。
アマゾンの従業員は減収の不安が最も薄い、それでも65%が不安を感じているのが現実だ。
REUTERS/Alex Gallardo
ブラインド広報担当のフィオレラ・ロコボノによると、同社の運営するビジネス特化型匿名SNS上での話題は、より多くの収入を確保する方法から、直接的な職探しにシフトしてきているという。ロコボノはこう指摘する。
「新たな求人情報(へのリンク)をシェアしたり、リクルーター段階の草の根情報を企業や各部署に持ち込んだり、リファラルで人材を紹介できるような、採用関係のプロはこれからますます引っ張りだこになるでしょう」
(翻訳・編集:川村力)