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「開けていても赤字」「3カ月続けば閉館」コロナで危機に陥るミニシアターの悲痛

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ミニシアターのアップリンク吉祥寺の客席。

提供:アップリンク

日本の映画文化の灯が消えてしまうという危機に瀕している。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各地の映画館への集客は激減。4月7日には7都府県で緊急事態宣言が出されてから、当該地域の映画館は軒並み休館になった。そして、4月16日には宣言が全国に及んだことで、全国の映画館が軒並み休館となっている。シネマコンプレックス(複合型映画館、シネコン)のような大規模なところはもちろん、それ以上に大きな影響が出ているのが、単館系映画館、いわゆるミニシアターだ。

ミニシアターはその名の通り、座席数が少ない小規模な映画館。大手映画会社の配給網に頼ることなく、芸術系やドキュメンタリーなど非商業的な作品など、シネコン以上に多種多様な作品が上映されている。ただ、多くのミニシアターの運営元会社は、決して経営基盤が大きくない。観客の減少、週末の自粛要請、緊急事態宣言による長期に及ぶ臨時休館を余儀なくされたことで、各地のミニシアターは経営が非常に苦しい状態に追い込まれている。大手シネコン以上に、長期間持ちこたえるのは難しい。

アップリンク浅井代表「開けてても赤字」

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アップリンクの浅井隆代表。

提供:アップリンク

東京の渋谷、吉祥寺で映画館を運営するアップリンクの浅井隆代表は、難しい状況を嘆く。実は4月16日に京都で新しく映画館をオープンする予定だったが、新型コロナの影響で5月21日オープンへと延期になった。

「小池百合子東京都知事が3月下旬に、週末の外出自粛を要請し、多くの映画館が3月25、26日は休館しました。お客さんの入りはその週で既に通常時の半分くらいに落ちていたが、若干黒字というバランスシートだった。ただ、翌週になり、4月1、2日を閉めたが、その週は一気に8割、9割減になった。映画館を開けていても、入場者数で運営コストを出せるかという状況に。ランニングコストが家賃、人件費、光熱費とさまざまあるが、これは閉めた方が良いなというぐらいまで落ちました」

その後、7都府県への緊急事態宣言を受け、浅井代表はアップリンクの臨時休館を決めた。しかし、「開けてても赤字になる。自粛要請や緊急事態宣言があろうとなかろうと、休館せざるを得ない」(浅井代表)状況だった。この状況は、アップリンクに限らず各地のミニシアターで起こっていった。

さらに映画館にとって大打撃だったのが、緊急事態宣言を受けて、ゴールデンウィークに上映できなくなってしまったことだという。

「映画業界にとって1年で一番の稼ぎ時。これが飛んでしまうということは、3月からの減少と休館になった期間の収益は、単なる1カ月分の収益ではなく、年間の4分の1から3分の1くらい収益を失うことになる」

多くのミニシアターが抱える事情もあるという。休館していても、さまざまな費用が発生するからだ。

「シアターの中でも、自社ビルと賃貸がある。アップリンクは賃貸なので、1カ月休んでも家賃を支払わないといけません。そこが痛い。自社ビルであれば、家賃ゼロで、あとは固定資産税だけですが。借入金の返済は待ってくれないし、コピー機や電話のリース料は支払わないといけない。人件費の休業補償を、社員やアルバイトにしなければいけません。雇用調整で助成がされるといっても数カ月後。売り上げがない中で、休業補償を捻出しないといけない」(浅井代表)

危機を乗り越えるために立ち上がった俳優、監督たち

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4月13日にウェブ上で「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」の会見が行われた。写真左から、俳優の渡辺真起子さん、俳優の斎藤工さん、深田晃司監督。

画像は会見の様子をキャプチャーしたもの。

こういった突然の二重苦、三重苦に襲われたことで、各地のミニシアターが軒並み閉館の危機に置かれてるのだ。一方で、それに対して大きな動きも出ている。

一つが「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」。閉館の危機にさらされたミニシアターを守るため、深田晃司監督や濱口竜介監督が発起人となって、有志で立ち上げたクラウドファンディングで、ファンディングがスタートした4月13日にウェブ上で会見が行われた。

深田監督は危機を訴えながら、日本のミニシアターの良さをこう力説した。

「ミニシアターには映画の文化の多様性があります。また、海外の映画人が日本に来て驚くのは、ミニシアターの存在です。アート映画や、非商業的作品をコツコツと上映している映画館が日本中に存在している。これは世界中どこも苦労している。行政からの支援がないなかで存続していることに驚かれる。色んな国の、色んな時代の映画をミニシアターにいけば楽しめるというのが(経営が大変な中で)ギリギリ楽しめる」

また、会見に参加した俳優の斎藤工さんもミニシアターならではの良さを訴えた。

「(新型コロナの収束は)長期戦になっていくと思う。(収束後に)戻ってくる場所の希望の一つがミニシアターだと思っている。僕はミニシアターで育ちました。スクリーンの窓から、いろんな世界の景色を見せて頂いて、いろんな出会いを頂いた。学生時代には、ミニシアターごとに劇場のカラーがあることを次第に気づきました」

ただ、時間は限られているかもしれない。会見で各地のミニシアターの関係者が厳しい状況を訴えた。 愛知県のミニシアター「シネマスコーレ」の坪井篤史副支配人はこう説明した。

「(感染問題の当初は)名古屋の劇場がこういう事態になるとは全く予想していなかった。“三密空間”ではないという自負があった(※)。映画館は何があっても経営できると思った。しかし、2月末くらいから、感染者が増加していき、だんだん名古屋の方でも(人々に)映画館に行かない方がいいんじゃないかというムードができていった。また、東京から監督さんが来られなくなり、舞台あいさつが段々中止になっていった」

(※映画館は「興行場法」で施設内の換気が定められており、一般的な室内空間より換気がいいとされている)

また、高齢者の来場が減ったことも大きかったという。

シニアの方が今回のコロナに敏感になって、来なくなってしまった。衝撃だったのは(映画ファンサービスデーで通常よりチケットが安い)4月1日の観客がゼロだった。その後もお客様がゼロという回数が増えていった。休館が1カ月に続いても苦しいのに、3カ月も続くと必ず閉館に追い込まれると我々はわかっている。その間に収束してほしいが、単なる願い。それくらい緊迫した状況です」

4月13日午後1時に始まったクラウドファンディングは、会見中の午後4時には500万円を超え、その後3日間で1億円を超えた。そして21日現在は約1億7000万円までになっている。

映画人らの署名活動に7万5000人

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アップリンク渋谷の外観。

提供:アップリンク

また、関西では大阪や京都、兵庫などのミニシアター13館による支援を訴えるTシャツ販売活動「SAVE OUR LOCA CINEMAS」を行われた(既に終了)。他にも、井浦新さん、柄本明さん、是枝裕和監督、塚本晋也監督たちが呼びかけた行政に支援を求める署名活動、「#SaveTheCinema 「ミニシアターを救え!」プロジェクト」がChange.orgで行われ、約7万5000人の署名を集めている。

現状として、新型コロナの収束までにはまだ数カ月はかかると見られる。

アップリンクの浅井代表は「日本のミニシアターは全国にあり、非常に多様な映画文化を支えている。それが無くなってしまうと、映画の多様性を担保できなくなる。大きな映画文化の危機」と話す。配給会社として面も持つアップリンクは、買い付けた作品で、本来各地のミニシアターで公開する予定だった作品を、アップリンクのオンラインプラットフォームで有料公開し、その収益を公開予定だったミニシアターに配分を予定している。「地方の映画館があって、本来売り上げが成り立つので」(浅井代表)。

ミニシアターは、若手の映画監督を育つ場としても重要な場所でもある。だからこそ、深田監督や濱口監督を始めとした多くの映画人たちが一丸となり、また、クラウドファンディングでも異例の億を超える支援が集まっている。Netflix(ネットフリックス)やAmazonのプライムビデオなどインターネットサービスで、多くの映画作品を手軽に楽しめる時代になったが、ミニシアターで公開されるような作品は映画館ならではだ。

新型コロナによるミニシアターの危機は、日本にミニシアターがあることの素晴らしさを再確認するきっかけとなっている。なんとしてでも存続させていかなければならない。

(文、大塚淳史)

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