コロナ不況は世界恐慌を上回る…さらなる現金給付に加えて「ニュー・ニューディール政策」を

1930年代の世界恐慌では、ピーク時の失業率が25%に達した。一部の経済学者は、今回の経済危機で、2020年夏の失業率が32%にまで上昇すると予想している。

1930年代の世界恐慌では、ピーク時の失業率が25%に達した。一部の経済学者は、今回の経済危機で、2020年夏の失業率が32%にまで上昇すると予想している。

Bettmann/Getty Images

  • 2020年夏の失業率が史上最高レベルの32%に達するとの見通しを、セントルイス連邦準備銀行が示している。
  • スタンフォード大学の経済学者、マシュー・ジャクソン教授はBusiness Insiderの取材に対し、仮にこの数字が現実となれば、相当規模の政府の介入が必要となると述べた。具体的には、「ニュー・ニューディール」と言えるような失業率上昇と個人消費の落ち込みに対処する施策などが考えられるという。
  • ジャクソン氏の提案は、フランクリン・D・ルーズベルト大統領のニューディール政策を踏まえたものだ。これは1930年代に世界恐慌対策として実施された、一連の政策や改革を指すもので、その目的の1つが雇用の回復だった。

2020年夏のアメリカでは、失業率が1930年代の世界恐慌時を上回るレベルに達するだろう。そして、すでに配布が決まった1人あたり1200ドル(約13万円)の給付金だけでは、労働者はこの不況をとても乗り切れないだろう。こうした見解を、金融ネットワークを専門分野とするスタンフォード大学の経済学者が明らかにした。

スタンフォード大学の経済学教授で、『The Human Network(原題)』という著書もあるマシュー・ジャクソン(Matthew Jackson)氏は、Business Insiderの取材で、アメリカには「ニュー・ニューディール」が必要だと主張した。つまり、職を失って経済的に困窮するアメリカ国民や、苦境にあえぐ企業を支援する、広範な政策や改革のことだ。

「世界恐慌のピーク時でも、失業率は25%弱だった。しかも、この数字に達するまでには数年かかっている。もし(現在の)傾向が続くなら、今回は夏までにこの数字を突破するだろう」と、ジャクソン氏は予測した。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、わずか1カ月足らずで、アメリカの労働者の1割以上が職を失った。さらに第2四半期(4~6月の3カ月間)には、失業者の数が4700万人以上に達する恐れがあるとの見方を、セントルイス連邦準備銀行が示している。この場合、失業率は実に32%という衝撃的な数字に達する。

「経済を本格的な回復軌道に乗せるためには、ニュー・ニューディールと呼べるような施策が必要だろう。さもなければ、(経済が回復するまで)10年間かそれ以上待たなければならなくなる」と、ジャクソン氏は指摘した。

アメリカ政府は既に、コロナウイルス支援・救済・経済安全保障(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security:CARES)法に基づき、現金給付や緊急融資、失業手当の拡充などを通じて、数兆ドル規模の救済措置を実施している。この救済パッケージの一環として、所定の条件を満たすアメリカ国民には最大1200ドルが支給される。

だが、この給付金だけではまったく足りないとジャクソン氏は主張する。

「これらの給付金の額は、1カ月分の家賃か、場合によっては1カ月分にすら満たない。長期にわたる失業期間を支えるようなものではない」と、同氏は指摘する。アメリカ国民は、さらなる現金給付による支援が必要となるだろうとジャクソン氏は述べた。

スタンフォード大学のマシュー・ジャクソン教授は、アメリカ政府はさらなる資本の投入や、セーフティーネットの見直しを迫られるとみている。

スタンフォード大学のマシュー・ジャクソン教授は、アメリカ政府はさらなる資本の投入や、セーフティーネットの見直しを迫られるとみている。

Matthew Jackson

さらにジャクソン氏は、1930年代にフランクリン・D・ルーズベルト大統領のもとで、世界恐慌対策として実施された一連の政策や改革に言及した。

当時の政策としては、18歳から25歳の若い男性を雇用して、国立公園の維持管理や環境保全のための公共事業などに従事させた市民保全部隊(Civilian Conservation Corps:CCC)や、失業者に高速道路の修理工事から教員まで、さまざまな雇用を提供した民間事業局(Civil Works Administration:CWA)、さらには、高齢者や障害のあるアメリカ国民に福祉給付を行う社会保障制度の創設などがあった。

ただしジャクソン氏は、今回の新型コロナウイルスのパンデミックは、世界恐慌とは違うと指摘した。実際、当時よりも深刻度は高いというのだ。

世界恐慌では、金融や農業など、数多くのセクターが失速した。だが、現在の飲食や観光、航空やスポーツイベント関連の業界のように、急激に業務停止に追い込まれたセクターはなかったと、ジャクソン氏は指摘する。さらに、世界恐慌は1929年の株式市場暴落で始まり、これが結果的に消費者需要の減退につながった。これに対して現状は、生産高の大幅減少がきっかけとなり、経済活動の一部が停止に追い込まれている。こちらの方が、状況としてはさらに悪い。

「経済活動の停止は、現代においては前例がない現象だ。本来なら生産に費やされていたはずの時間と労働力が突如として消えてしまった。これは経済に実害を与える損失だ」とジョンソン氏は指摘した。今後は、全世界の国々で国内総生産(GDP)が激減するだろうと、同氏は続けた。

今回の経済危機では、さらに大規模な政府の介入が必要となる可能性が高いと、ジャクソン氏は予測する。

「まずは、国民にセーフティーネットを提供するどんな方法があるのか、見極める必要がある。失業者が仕事に戻り、消費が可能になるよう支援が必要だ」

事業者に対しても、返済免除条項付き融資の形で、さらなる資本強化が必要だろう。こうした資金があれば、企業は従業員を休ませている間も賃金を払うことができると、ジャクソン氏は述べた。

「仕事がない時は、消費者は金を使わないものだ。そして、消費者がモノを買わない状態だと、企業も従業員を再雇用できない」と、同氏は不況時のジレンマを解説する。

4月14日には民主党所属の2人の連邦下院議員が、「緊急資金法案(Emergency Money for the People Act)」を提出した。これは、16歳以上で年収が13万ドル(約1400万円)未満のアメリカ国民に対して、月2000ドル(約21万5000円)を給付するという内容だ。

ジャクソン氏は、議員たちは今後も、救済策について「工夫を凝らす」必要があると述べる。さもなければ、消費者の借入金や住宅ローンなどの返済が滞り、債務不履行に陥るケースも出てくると、同氏は警告している。さらに、政府が介入を最小限に抑えてしまうと、2007年のサブプライムローン危機と同様の、世界的な金融危機が起きる恐れもあるという。

「今後に起きかねない事態として懸念されるのは、こうした金融危機の発生だ。その場合、企業、消費者、さらには世界の国々が、次々と債務不履行に陥る。主権国家でさえ、債務の支払いが滞ることになるだろう」と、ジャクソン氏は最悪のシナリオに注意を促した。

[原文:A Stanford economist says we're headed for a crisis worse than the Great Depression. Here's his plan for getting people back to work and spending on businesses.

(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)

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