【実機】新型iPhone SE「本当の性能」…Apple Pay対応、コスパ抜群。iPhone 11 Proとの違いは?

第二世代iPhone SE

第二世代iPhone SE。ホワイトモデルだが、面は他のカラーと同じ「黒」になっている。外観は「ほぼiPhone8」だ。

撮影:西田宗千佳

第二世代となったSEは、初代SEからどう進化し、そして現役のiPhone 11とどう違うのだろうか? 実機による先行レビューで、その性能をさっそく確かめた。

iPhone SEの背面

背面。アップルロゴだけのとてもシンプルなデザイン。

撮影:西田宗千佳

なお、新型コロナウィルスの感染拡大防止に伴う緊急事態宣言発令中につき、いつものiPhoneのレビューのように、方々で通信速度や写真撮影のテストを行うことができていない。自宅近辺での、ごく限定的な環境でのテストとなっている点をご了承いただきたい。

4インチの小ささは失ったが未だ「コンパクトサイズ」

左がiPhone SE、右がiPhone 11 Pro Max

左がiPhone SE、右がiPhone 11 Pro Max。最大サイズのiPhoneとの比較なので、差はかなり大きい。

撮影:西田宗千佳

初代iPhone SEは、「iPhone 5s世代のボディーデザインに、iPhone 6s世代の性能を詰め込んだ」製品だった。

今回の第二世代iPhone SEは、そういう意味では「iPhone 8世代のボディーに、iPhone 11世代の性能を詰め込んだ」デザインになっている。そして、初代と同じく「iPhone 8の後継」ではなく、あくまでSEというライン。初代SEの後継機だ。

iPhone 8のデザインになったSEは、ディスプレイが4.7インチになった。初代SEが4インチであったのに比べるとやや大きくなったのだが、それでも、現行のiPhoneの中では一番小さい。筆者は普段、一番大きい「iPhone 11 Pro Max」を使っているが、比べるとやはり相当な差だ。片手で握りやすいサイズだと思う。

握り比べてみると、サイズ感の違いは明白

握り比べてみると、サイズ感の違いは明白。左が第二世代iPhone SE、右がiPhone 11 Pro Maxだ。

撮影:西田宗千佳

それでも、初代iPhone SEのサイズ感を求めていた人には「大きい」と思うかもしれない。

この辺の感覚は、日本と海外で違う部分がある。日本ではいわゆる「フリック入力」が主流で、片手で入力する人も多い。それに対して海外、特にアルファベット圏は、PCなどと同じような「QWERTY」入力が多い。QWERTY入力の場合、スマホを両手で持って両方の親指で入力することがほとんど。両手を使う分、画面サイズも大きい方が入力しやすい。

もちろんそれでも、コンパクトなスマホを求める人はいる。とはいえ、日本に比べると少数派であり、一定のサイズを許容する傾向にある。iPhone 11やiPhone 8のサイズ感は、そうした状況にフィットする。「ここ数年の世界的スマホトレンドの中で、アップルとして許容できるサイズ・設計のものを選んだ」というのが実情だろう。

CPUだけでなく通信速度も速い。「iPhone 11そのもの」がSEになった

新型iPhone SEの特徴

アップル公式サイトの特徴の解説より。

アップル

「今までのSEのまま、最新の技術だけ入れればいいのに」

そう思うかもしれないが、それは難しい。高性能化したスマホでバッテリー動作時間を維持するには、「一定以上の容量のバッテリーを搭載する必要」があるからだ。初代SEのボディーではそれは難しい。

なぜ新型SEを高性能化するのかといえば、「さらに数年後まで使う」ため。秋に出るiPhoneは(少なくともここまでは)毎年新型に更新されていくが、SEは低価格なまま数年間販売が継続する。今問題なく使えるだけでなく、数年後にも十分な性能を備えている必要がある。

ここでいう「性能」とは、いわゆるCPU性能やGPU性能だけの話ではない。通信速度やカメラ、セキュリティなど、多数の要素を含む。むしろそうした「トータル性能」こそが、4年前のスマホと今のスマホを分ける大きな違いと言っていい。

iPhone SEの性能は実機でも11 Proと大差なし

iPhone SEとiPhone 11 Pro Maxの性能比較

白がiPhone SE、黒がiPhone 11 Pro MaxのCPU処理性能(ベンチマーク)比較の結果。差は非常に小さく、体感上違いはわからない。

まずわかりやすい、CPU性能などから。

GeekBench 5でのテスト結果によれば、CPUのベンチマークテストの結果は、iPhone 11 Pro Maxのそれと大差なかった。初代SEと比較すると、シングルコアで2.4倍、マルチコアでは3倍という値になった。メインメモリーは3GBとiPhone 11 Pro Maxに比べると1GB少ないが、少なくとも試用中、そのことを体感できるシーンはなかった。

新型iPhone SEのカラバリ

新型iPhone SEのカラバリ。

アップル

次に「通信速度」。実はこの進化が大きい。

初代SEは、今のスマホでは当たり前になっている「キャリアアグリゲーション(CA)」という仕組みを搭載していない。そのため、2016年に筆者が実測した値を見ると、最大でも52Mbps、平均で十数Mbpsでしか通信できていなかった。

しかし第二世代SEは、iPhone 11と同じ通信機能を搭載しているので、もちろんCAが使える。iPhone 11 Pro Maxと第二世代SEを使い、同じ場所で同じように通信速度を比較してみたが、どちらも110から150Mbps出ていた。今時のスマホはこのくらい出るようになっているのだが、今後通信速度への需要がさらに高まることを考えると、この差は大きい。「ちゃんとCAに対応して、4Gの速度を生かせる」ことが重要だ。

また、Wi-Fiも「Wi-Fi 5(802.11ac)」から「Wi-Fi 6(802.11ax)」になっている。こちらも数年で移行が進むことを考えると、必須の進化だ。

iPhone SEのおサイフ対応

iPhone SEとしてようやく「おサイフケータイ」に対応。これはいまどきのスマホとしては「当然」の採用とも言える。

もうひとつのポイントは、「おサイフケータイへの対応」だ。これも今のスマホなら対応しているものがほとんどだが、初代SEは対応していなかった。キャッシュレス決済が増えることを考えても、対応は必須である。

カメラ機能も「通常撮影なら」iPhone 11と大差なし、だが……

iPhone SEのカメラ部

iPhone SEのカメラ部。最近のスマホは複眼化しているが、SEのカメラは1つ。

撮影:西田宗千佳

もうひとつ大きいのがカメラの進化だ。

以下の写真は、iPhone 11 Pro Max、第二世代SEでそれぞれ撮ったものだ。同じ場所から同じように撮っても、少しだけSEの方が画角が狭い。

とはいえ、画質はともに十分であり、並べて見比べない限り、両者を見分けるのは困難だ。4万円代のスマホと10万円近いスマホの間で「写真の画質がほとんど違わない」のはすごいことだ。

新型iPhone SEの作例

第二世代iPhone SEで、八重桜を近くから。画質・ディテールはほぼ同じだが、画角の違いが分かるだろうか。

撮影:西田宗千佳

新型iPhone SEと11ProMaxの作例

おなじ位置から、iPhone 11 Pro Maxで撮影。Proの画角の方が、やや広いことがわかる。

撮影:西田宗千佳

一方で、新型SEと11 Pro Maxのカメラの違いもある。

両者が同じクオリティであるのは「望遠や超広角を使わない」「ポートレートモードを使わない」「夜景を撮らない」場合のものに限られる。いわゆる「なにもしない普通のモード」の時だけだ。

第二世代iPhone SE「ポートレートモード」

「ポートレートモード」は人物のみが対象。人の姿を検出できないと「背景ボケ」をつけた写真が撮れない。

iPhone SEにはカメラが1つしかないので、超広角撮影はできない。また、背景をぼかすポートレートモードも「人間専用」に限定されている(食事の撮影などでは使えない)。暗いシーンでの撮影を助ける「ナイトモード」もない。

これらのモードがないことは、撮影の表現の幅を狭める。iPhone 11 Pro Maxのカメラ機能に慣れている筆者からすると、かなり物足りなさを感じる。

この差が「今の価格差」なのだろう。

またiPhone SEには顔認証がなく、ホームボタン+指紋認証機能の「Touch ID」になっている。これも、使い勝手の面ではプラスというわけでもない(たしかに、外出時にマスクを付けなければいけない今は、顔認証よりも指紋認証の方がありがたいが)。


iPhone SEの指紋認証

アップル

もっとも、低価格モデルということで気になる「液晶ディスプレイの品質」は高く、仕上げも良い。外観上の安物感はまったくない。

唯一、これまでのiPhoneの原則から外れているのは、白のボディーなのにオモテ側が黒になっていること。これはおそらく、低価格化のための妥協だ。白は透けないように作るためにコストがかかること、部品を1種類に統一した方が部材管理がシンプルになることなどが理由だろう。

iPhone SEの側面

側面と底面をチェック。アルミボディのしっかりした仕上げで、安っぽさは一切ない。ボタンやコネクタの配置はiPhone 8とまったく同じだ。

撮影:西田宗千佳

iPhone SEの充電端子

充電端子はLightningケーブルを使う方式。

撮影:西田宗千佳

「高性能なiPhone SE」はアップルの他社へのけん制?

iPhone SEと他機種とのスペック比較

タップすると拡大します。

作成:小林優多郎

結論から言えば、iPhone SEは今回も間違いなく「お値段以上」のデキだ。コストパフォーマンスは極めて高い。おそらく数年間「もっとも身近なiPhone」として売られることになるが、一番お得なのは「今」この瞬間だ。

一方、iPhoneはもうこれでいいのか、というとやはり違う。これでいい、と満足できる人もいるだろうが、上を知っていると物足りなさも感じる。

だから、「一番売れるiPhoneがSEになるのか」と言われると、やはりノーではないか、という気がする。

アップルのビジネスにとっても、日本でも増えていく「低価格なスマートフォンを買いたい」人たちに、AndroidではなくiPhoneを選び続けてもらう理由として、非常に大きな価値を持っている。

(文、写真・西田宗千佳)

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