コロナの影響で原宿を歩く人も激減している。
撮影:竹井俊晴
新型コロナウイルスの影響で、休業を余儀なくされる企業が多い中、従業員の休業手当の最大9割(中小企業の場合)を国が助成する制度「雇用調整助成金」に問い合わせが殺到している。厚生労働省によると、全国のハローワークや労働局には4月13日現在、問い合わせ件数は11万8000件。ところが、助成金の支給が決定しているのはわずか60件だ(4月17日の速報値)。
なぜ支給が進まないのか?厚生労働省に聞いた。
新型コロナの影響で、4月~6月は「緊急対応期間」として条件を緩和。雇用保険被保険者でないパートや学生アルバイトも対象になっている。助成の割合についても、大企業は休業手当の最大4分の3、中小企業は10分の9に拡充された。一方で受給まで2カ月を要するため、時間がかかりすぎるとの批判もある。
ハローワークなどへ相談急増
厚生労働省のHP を撮影。
撮影:横山耕太郎
雇用調整助成金についての問い合わせが11万8000件なのに対し、4月17日時点の雇用調整助成金の申請数は985件(速報値)にとどまっている。この大きな差はなぜなのか。
「雇用調整助成金は、休業した分の休業手当を支払った後で申請する制度です。まだ休業から1カ月経過していないなど、休業手当を払っていない店もあるため、今後、申請数が伸びることが予想されます」
厚労省職業安定局雇用開発企画課の山田敏之課長補佐はそう話す。
出典:厚労省HPより編集部キャプチャ
相談件数だけでなく、雇用調整助成金の申請前に提出する「計画届」の件数は9512件(4月17日の速報値)と増加している。
新型コロナの影響を受けた特例として、通常時は事前提出が求められている計画届が、休業後でも提出できるようにもなったこともあり、現在休業している事業所からの申請が、今後増えると見込まれている。
殺到する問い合わせに対し、相談受付の体制も万全ではない。
「『どんな制度なのか』や『いくらもらえるのか』など、制度についての問い合わせが急増しています。その影響で、ハローワークでは電話がつながりにくくなったり、窓口対応に追われたりしており、審査にかける時間が確保しにくくなっているのが現状です」(厚労省・山田氏)
提出書類減らし迅速化図る
厚生労働省でも雇用調整助成金について対応に追われている。
撮影:横山耕太郎
審査に時間がかかっているという指摘は多いが、書類の多さがボトルネックになっているようだ。それに対しても動き始めているという。
「申請に時間がかかるという声は、真摯に受け止めたいと思っています。『記入する書類が多く、申請が大変だ』という意見が多かったため、4月からは提出書類を減らすなどの対応を行っています」(厚労省・山田氏)
厚労省は4月10日、雇用調整助成金の「申請書類の大幅な削減」を発表。具体的には、記載事項の半減や記載事項の簡略化、添付書類が一部削減された。
それにしても、問い合わせが11万8000件、4月17日時点の雇用調整助成金の申請数は985件に対し、支給決定が60件は少なすぎないか。ちなみに1週間前の4月10日の支給決定は3件だった。
「4月中に審査を行う職員を800人増員します。これまでは申請から支給まで2カ月かかるとされてきましたが、1カ月で支給できる体制を作りたい。
コロナ前までは雇用調整助成金はあまり使われていない制度でもあり、審査に慣れていない面もある。書類も簡素化されたこともあり、審査をスピードアップしたい」(厚労省・山田氏)
厚労相としては体制を増強し、審査を迅速化すると説明している。
シフト激減「給料の補償は説明なし」
休業により経済的に追い詰められている人も少なくない(写真はイメージです)。
撮影:竹井俊晴
とはいえ、打撃を受けている業界は、アルバイトを含めた休業補償に一刻も早い対応が求めている。
コロナの影響で店舗が休業になり、大幅なシフトカットを迫られている人は少なくない。
都内の居酒屋でアルバイトをしていた男性(26)は、週4~5日働いていたが、3月後半からは週に1~2回しか働けなくなり、4月11日からは店は休業になった。給与の補償については説明がないままだという。
「お店も大変なのは分かるが、このまま休業が続けば地元に帰るしかない。5月6日に緊急事態宣言が終わり、また今のお店で働けるようになればいいのですが、先が見えません」(アルバイトの男性)
こうした現状を政府はどう見るのか。
「現状では電話がつながりにくいなど、対応が追い付いていない。ただこの制度は、雇用を維持するための制度。多くの事業者に活用してもらい、雇用の維持に全力を尽くしたい」(厚労省・山田氏)
雇用調整助成金についての問い合わせは、全国のハローワークや都道府県労働局、「学校等休業助成金・支援金、雇用調整助成金コールセンター」電話番号0120・60・3999で受け付けている。
(文・横山耕太郎)