はかどらない子連れ在宅ワーク、引きこもり生活で親子に高まるストレスどう向き合う

在宅

子どもを見ながらの在宅ワークには精神的、物理的限界が。

shutterstock/Ronnachai Palas

新型コロナウイルスの感染流行で、子どもたちは休校や休園、親も在宅勤務や自宅にこもる——といった家庭は増えている。感染の恐れが大きく立ちはだかるのに加え、家族全員が毎日家にいて「出かけることができない」異例の事態にも、かつてないストレスや疲労が生まれているようだ。

子どもとお出かけ情報サイト「いこーよ」を運営するアクトインディが、小学生以下の子どもをもつ保護者307人にアンケート調査を実施したところ、感染リスクへのストレス(9割)に加え、「出費が増えた」「子どもが長時間家にいる」「子どもがストレスを抱えている」といったストレスを、多くの人が感じていることが浮き彫りになった。

さらに子どもを見ながらの在宅ワークは、精神的にも物理的にもハードルが高い。どう向き合っていくべきか。

子どもに大声出す自分に自己嫌悪

「今日もまた、仕事が進まなかった。子どもの相手も仕事も中途半端なままだ……」

東京都内在住の会社員女性(30代)は夕食の準備に取り掛かるためにノートパソコンを閉じると、焦りと疲れを感じる。ここのところ毎日そんな感じだ。

この1カ月ほど、会社の方針で在宅ワークをしてきたが、日常が回らなくなったのは、保育園が原則休園になった4月7日の緊急事態宣言以降だ。

5歳と3歳の娘たちの相手をしながら仕事をするのは、ほとんど至難の技。夫も週の半分は在宅ワークだが、自室にこもってテレビ会議ばかりしている。リビングしか女性の仕事場は残されていないが、そこは子どもたちの居場所でもあり、常に女性が子どもたちを見ながら仕事をすることになる。

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保育園には預けられず、散歩、トイレ、喧嘩、食事など時間が次から次にやってくる。

Getty Images/d3sign

朝の1時間は家族全員で子どもたちとの散歩に充てて、そのあと自宅で遊ばせつつパソコンを開くが、5分に1回は子どもが話しかけてくる。工作も作り方を教える必要があるし、トイレに喧嘩におやつに……と追われているうちに、あっという間に昼ごはんの時間が来る。

結局、午後はiPadを渡してYouTubeに子どもたちが見入っている間に急いで仕事。それでも、オンライン会議をしていると子どもが寄って来る。「公私混同と思われていないか」「子どもが苦手な人もいるのに」と、神経をすり減らしながらも、保育園児が自分たちだけで遊ぶのには限界があるとも思う。

YouTube漬けには罪悪感がある一方で、子どもの相手や喧嘩の仲裁ばかりして日が暮れる状況に苛立ちが募り、「静かにして!」と、子どもたちに大声で怒る自分にも落ち込んでしまう——。

子どもを放置のストレスも大きい

在宅ワーク

子どもと在宅ワークの両立は困難を極める。

Shutterstock

こうした声はSNS上にもあふれている。

「長男、月曜日から幼稚園休園決定。その後春休み。3月の在宅ワークが死にました…。子育てと創作、使う脳みそが違いすぎてとても同じ空間ではできません。どちらも大切なのです。だから同時にするのは無理なのです。なんなんだ、これは。」

「子どもと在宅勤務のストレスは、「仕事が進まない」だけじゃなく、『子どもを放置しないといけない』も大きい。」

家に閉じこもるストレスは当然ながら、在宅ワークとの両立問題ばかりではない。

子どもとお出かけ情報サイト「いこーよ」を運営するアクトインディの「新型コロナウイルスによる親子のストレス調査」には、こんな声も寄せられている。

「せっかく決まった保育園も行かせづらい、パート先も決まったのにしっかり働けない」(1歳男児の母親、20代)

「ストレス発散させるために外に出すと周りの人の視線が気になる。朝一番で他の子供がいない時間に公園に連れて行ってるのに」(1 歳男児・3 歳女児の母親、20代)

さらにこの調査によると、「家族が家にいる時間が長くなる」ことにストレスを感じていると、約半数の人が答えた。具体的にどんなストレスかを尋ねたところ、出費が増えた(7割)、子どもが長時間家にいる(6割)、生活リズムの乱れ(5割)子どもの学習の遅れ(4割)の回答が続いた。

また、ストレスが溜まることで、保護者自身に表れている状況としては

  • 食べ過ぎや食欲不振(5割)
  • 子どもに怒りやすくなっている(4割)
  • マイナス思考になっている(3割)
  • 精神的に不安定になっている(3割)

などが上がった。

子ども

長期間家に閉じこもらなければならないことは子どもにとってもストレスに。

Getty Images/Thanarak Worakarndecha / EyeEm

長期間、家に閉じこもることでストレスを感じているのは、大人ばかりではない。

子どもたちも同様に「友達と会えない」「することがない」という状況に戸惑っている。子どもにとってのストレスを保護者に対して尋ねたところ、「お出かけ施設に遊びに行けないこと」が67%と、もっとも多かった。続いて

  • 運動不足になっている(61%)
  • 長時間家にいること(54%)
  • やることがなく退屈なこと(53%)

などが続いた。調査を実施したアクトインディの担当者は、子どものストレスについて「保護者に対して聞いているため、子どもにストレスは『特にない』と答えた人が、子どものストレスに気づいていないだけ、ということも考えられる」と指摘する。

先が見えないから頑張れない

新型コロナウイルスの収束が見通せないことが、現在の生活の不透明さを高めている。調査ではこんな声も。

いつまで続くのか先が見えないから頑張れない、ストレスの発散方法になりそうなものを教えて欲しい(1 歳・3 歳女児 の母親、20 代 )

解決に向かう一つの糸口は、不安やストレスを誰かに話したり、分け合ったりすることにあるかもしれない。Business Insider Japanのこちらの記事では、同僚や友人に心理状態を話し受け入れてもらえることで、お互いがポジティブになれる可能性を指摘している。

子どもがいてもいなくても、一人暮らしでも、働いていてもいなくても、私たちはみな今、新型コロナウイルスにより激変する社会に生きている点については、同じだ。身近な人との会話やSNS、こうした調査を通じてでも、今の状態や悩みを共有することは、少なくともできるはずだ。

(文・滝川麻衣子)

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