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新型コロナウイルスの影響で在宅環境で仕事や勉強をしなければいけないのにはかどらない ——。オフィスや学校にはあった「強制環境」がなくなることで、作業能率を落としている人も多いのではないでしょうか。
「在宅環境で集中できないタイプ」は、仕事や学業において、今後、大きな差をつけられてしまう可能性があります。
在宅だと能率が落ちてしまう要因の一つは、ピア・プレッシャー(相互監視による圧力)がないこと。人が近くにいることによる緊張感がないと、集中力を維持できない問題です。
こうした問題を解決できるのがビデオチャットを通じた「Zoomもくもく会(Zoomでつながりながら黙々と作業・勉強をする会)」。在宅でも強制環境を作れるゆえに、作業がはかどらない問題をほぼ100%解決できるパワフルな手法です。
Zoom利用は、「会議」や「飲み会」だけでなく「作業中につながる」ことをオススメします。
もくもく会の作業スピードは、「体感値2〜3倍」
もくもく会は実施するだけで、1人で抱えていたタスクが、体感値として2〜3倍のスピード(もくもく会を実施しなかった日との比較)ではかどったと回答する人が多いです。
一般的に、対面で実施することも多いもくもく会ですが、Zoom上だと雑談が発生しにくいことが、対面のもくもく会よりはかどりやすい効果につながっています。
過去2年間、Zoomもくもく会を80回以上実施した経験及び、会社員、フリーランス、学習塾で実際に取り入れている人たちのコメントを紹介します。
- はじめの15分~30分は近況や頭の中のモヤモヤを順に語る(通称:チェックイン)
- 作業直前に、何の作業をするのかお互いが理解できるように説明
- 30分程度の作業タイムの実施
- 2~5分程度で作業結果の共有
- 5分の休憩を取って、また30分の作業タイムを繰り返す
オンラインは「はじめの雑談タイム」がより重要
Zoom上では自然発生的に起きる雑談は少ない。それにより、仕事仲間とのコミュニケーション不足が発生するリスクがあります。そこで作業スタート前のチェックインとして、一人一人の近況や感情を話すことですれ違いを防ぎます。
一人ずつ順番に話すルールにすることで、「話す量に差をつけない」ような配慮も大事です。
都内会社員の唐渡香織さん(28歳)も3年前からプライベートでもくもく会の仕組みを積極的に取り入れており、最近になって実施方法をZoomに移行。友人2~3人と毎週金曜の夜に2時間半のもくもく作業会を実施しているという。
都内会社員の唐渡香織さん。
本人提供(女性)
「仕事に関する勉強、一人だと全然やらないので、作業時間の確保や集中力を上げる目的で友人と作業会を取り入れています。毎週金曜夜に友人と実施する中で、“お互いにデートが入った日はなしルール”で3年間ほど実施してきました」
もくもく会の効果は作業環境だけではないという。
「元々仲の良い友人でしたが、毎週のお互いの近況報告のタイミングにもなり、グループ交際が起きるレベルでさらに仲が深まりました」
普段は集中してもくもく会をする相手とZoomで雑談した時の様子 。
唐渡さん提供
もくもく会なら重い仕事もはかどる
イギリス在住フリーランスの井元龍太郎さん(30歳)も1年ほど前からもくもく会の仕組みを定期的に導入。
「もくもく会は、自分一人だとやらないことをやる時間という認識。後回しにしてきた仕事をしようとする気になる効果が大きいです。重い仕事をもくもく会でこなすことで、プロジェクトがスムーズに進みます」
イギリス在住歴3年目のフリーランス 井元龍太郎さん。
本人提供
さらに、作業報告の時間も有効性が高いという。
「作業の結果報告の際に、フィードバックが得られるのも良い。例えるなら、“一人で資料を作るクオリティと、二人で資料を作るクオリティの差”があります。自分一人のタスクに他の人の視点が加わって磨かれます。」
学習塾「スマホ使いすぎの防止効果もある」
Zoomもくもく会を見守る様子
コアラボ提供
渋谷駅直結の場所に拠点を構える、高校生向けに英語&キャリア塾「コアラボ」(URL : https://corelabo.kagoyacloud.com/ )では、半年前より、もくもく会の仕組みを導入。2月末の休校がはじまった段階で週1~2回程度のZoomもくもく会の開催を無償提供をしている。
塾代表の染谷翔太氏によると、「生徒と実施するZoomを活用したもくもく会では、PCではなくスマホのアプリでZoom接続することを必須にしています。もくもく時間中に、スマホを触ってしまうことを防ぐ効果があります」
Zoomもくもく会をした時の生徒の様子。Zoomはスマホで実施
コアラボ提供
実際の塾生徒である、都立高校3年生 高田くん(仮名)によると、新型コロナウイルスの影響で3月と4月に休校になってからコアラボが提供するもくもく会に8回ほど参加してきた。
「家でやると、見張られていないので集中力が落ちてしまう。でも、もくもく会だと集中できます。一度にZoomでつながる人数は多い方が、成果報告タイムが刺激になって自分はやる気がでます。もくもく会が午前中に終わったあとも、午後一人で集中しやすくなると感じます」
また高田くんの母親も、もくもく会の様子を見てこのように語る。
「本当は自主的にやれることが大事。でも、休校中はどうしても時間があるので朝からゴロゴロと過ごしてしまいやすい。家の中で集中できる環境作りに助かっています」
withコロナ時代ならではの「共助」が生まれる空間に
Zoomもくもく会は、作業効率を上げる役割だけではありません。定期的に”人とつながっている状態”になることで、今の感情や状況を共有するための自然な機会になります。つまり、”人間らしい助け合いが自然発生しやすい環境に身を置けるエコシステム”があるのです。
実際に、「マスクが買えない」ことをZoomもくもく会の作業の合間に話したことで、余っているマスクを郵送してもらうなどの助け合いが日々、自然発生的に起きています。わざわざ「助けて」と言うための連絡をする必要がなく、“常時つながっている”だけで効果が見込めます。
筆者は毎月5〜6人とZoomもくもく会をしているおかげで、新型コロナウイルスでいっそう厳しくなると予測される社会環境の中でも、人間らしい助け合いの中で生き伸びていける自信をもって過ごせています。
(文・加藤こういち)