新型コロナウイルスの流行第2波に備えて…… NASAが安くてシンプル、大量生産しやすい人工呼吸器を設計

エンジニア

カリフォルニア州パサデナにあるNASAジェット推進研究所。

NASA/JPL-Caltech

  • アメリカ航空宇宙局(NASA)は新型コロナウイルスの患者向けにシンプルな人工呼吸器を設計した。流行の第2波が起きた時に、患者の命を救うのに必要な人工呼吸器が不足するのを防ぐためだ。
  • NASAジェット推進研究所(JPL)のエンジニアたちは、この人工呼吸器をたった37日でデザインした。使用した部品は、一般的な人工呼吸器で必要とされる部品の7分の1だ。
  • この低コストの人工呼吸器はニューヨークにあるマウントサイナイ医科大学でテストした後、食品医薬品局(FDA)からの緊急時使用許可(EUA)を待っている。

アメリカ航空宇宙局(NASA)のエンジニアたちが新型コロナウイルスの患者向けに大量生産可能な人工呼吸器を設計した。今週末にも食品医薬品局(FDA)からの緊急時使用が認められる可能性がある。

カリフォルニア州パサデナにあるNASAジェット推進研究所(JPL)のエンジニアチームは、この人工呼吸器をたった37日でデザインし、組み立てた。「VITAL (Ventilator Intervention Technology Accessible Locally)」と呼ばれるこの人工呼吸器に使われる部品は、一般的な人工呼吸器で必要とされる部品の7分の1のため、短時間での大量生産がしやすい。

人工呼吸器を早く病院に届けるため、NASAは無償の使用許諾を提供するという。これは、専門家がアメリカ各地でロックダウン(都市封鎖)が解除され始めた後に起こると見ている新型コロナウイルスの流行の第2波に備える助けになるだろう。

「集中治療室では、人工呼吸器を必要とする新型コロナウイルスの患者を診ている」とNASAのチーフ・ヘルス・アンド・メディカル・オフィサー、J・D・ポーク(J. D. Polk)博士はプレスリリースでコメントした。「VITALの狙いは、患者が重症化し、より高度な人工呼吸器による支援を必要とするようになる可能性を下げることだ」という。

人工呼吸器のプロトタイプはニューヨークにあるマウントサイナイ医科大学でテストされ、同大学のHuman Simulation Labがさまざまな患者の症状をシミュレーションした。

「テストは見事だった」とJPLのアソシエイト・ダイレクター、デイブ・ギャラガー(Dave Gallagher)氏は4月23日(現地時間)の記者会見で語った。

ギャラガー氏は、チームがFDAの緊急時使用許可(EUA)を申請し、48時間以内の承認を待っていると話した。

サプライチェーンの問題を回避するために

組み立て

NASA/JPL-Caltech

すでに供給が不足している通常の人工呼吸器のサプライチェーンを妨げないために、NASAのエンジニアたちは通常の人工呼吸器よりも必要とする部品の少ない、異なる構造のデザインを選んだ。

一般的な人工呼吸器の生産を邪魔することなく、メーカーがこの新たな人工呼吸器を作れるようにと考えてのことだ。

「(使用する)部品は通常、人工呼吸器を組み立てるのに必ず使われるようなものではない」とポーク博士は会見で語った。「わたしたちが使っていない部品は700近くあり、サプライチェーンと競合せずに済んでいる」という。

人工呼吸器の生産にかかる具体的なコストは明かされなかったが、ギャラガー氏は1台あたり約2000~3000ドル(約22~32万円)になるだろうと見ている。参考までに、ゼネラルモーターズが作っている国家備蓄用の低コストの人工呼吸器は1台あたり1万6000ドル(約172万円)以上だ。

次の人工呼吸器不足に備えて

医師

プロトタイプのテストが終わった後、ポーズを取るマウントサイナイ医科大学の医師ら。

Human Simulation Lab at the Ichan School of Medicine, Mount Sinai Hospital, New York

アメリカでは多くの都市、郡、州が新型コロナウイルスの流行第1波のピークを越えたように見えるが、ウイルスとの戦いはこれで終わりではない。自治体が制限を緩め、経済が再開し、人が再び集まり始めれば、ウイルスは広がるだろう。専門家はこれが流行の第2波をもたらすだろうと言い、状況をしっかり監視し、追加のロックダウンで感染拡大を遮らなければ、コントロールできなくなる可能性もあると指摘する。

こうした流行の波がくれば、病院はいっぱいになり、人工呼吸器が不足する可能性がある。

これはまさに3月下旬から4月上旬にかけて、ニューヨーク市で起きかけたことだ。イタリアでは、人工呼吸器不足が深刻で、どの患者の治療を優先するか医師たちが決めなければならなかったと報じられている。

「わたしが下したくない恐ろしい決断の1つは、誰に人工呼吸器を使い、誰に使わないか決めることだ」とマウントサイナイ病院のある医師はBusiness Insiderに語っていた

「それは恐ろしい状況だ」

NASAの新たな人工呼吸器が大々的に生産され、世界中に分配されれば、状況が再度悪化することを防げるかもしれない。

「クレイジーなプロジェクトです」とJPLの人工呼吸器をデザインしたチームのエンジニアの1人、ミシェル・イースター(Michelle Easter)氏はNASAの動画で語っている。

「わたしたちには、人間の命を救える可能性がある。それはわたしたちの知り合い、ご近所、家族かもしれない」

[原文:NASA designed a cheap, simple ventilator to prevent shortages during a potential second wave of COVID-19 infections

(翻訳、編集:山口佳美)

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