飛行中の敵ドローンを制御する技術 —— 米軍が関係する「Department 13」の研究成果とは

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GoPro/YouTube

アメリカ・メリーランド州の企業が、ジャミング(電波妨害)せずに飛行中の敵ドローンを制御する技術を発表した。これが事実なら、アメリカ軍や刑務所、空港の運営に大変革をもたらすかもしれない。

2010年に始動した「Department 13」は、国防総省国防高等研究事業局(DARPA)支援の周波数やBluetooth(デジタル機器用 近距離無線通信規格の1つ)に関わる研究から生まれた。CEOのジョナサン・ハンター(Jonathan Hunter)氏が、軍のみならず民間企業をも頻繁に悩ます「厄介なドローン」を抑制するのに自身の研究成果が有効だと気づいたのはその時だった。

「僕たちはドローンに“話しかける方法を見つけた”んだ」とハンター氏はBusiness Insiderに語った。「D13」の技術はドローンへの「ハッキング行為」と称されることが多いが、彼は別の表現を好む。メスマーと呼ばれる「ブラックボックスのアンテナとセンサー」が周波数をハックすることでドローンの操作を乗っ取ることができるというのだ。

例えば、刑務所施設の塀の中の受刑者に物資支援をするため(より高性能で安価な市販ドローンが増えるにつれ、頻発している問題だ)誰かがドローン飛行を試みているとしよう。刑務所側は、メスマーを使えば、塀周辺に目に見えない仮想壁を作り、軌道上のドローンを止めたり、完全に自身の指揮下に置いて刑務所内へ誘導・着陸させることができる。

「もし、ドローンと同じ言語で話せるなら、僕らは大きな声で叫ぶ(周波を強めてジャミングする)必要がないんだよ」とハンター氏は語る。

2016年バージニア州クワンティコで開催された対ドローンチャレンジで、最長1km先までの飛行中のドローンを止めた「D13」は優勝こそ逃したものの、ファイナリスト8として入選した(優勝者の「Skywall 100」はドローンをネットで捕獲するのに、手動操作型の発射装置を使用した)。

また、10月に開催された「とある安全保障会議」では、敵ドローンを安全に着陸できることを証明した。ドローンに対して見えない壁を張る以外にも、メスマーは本来ドローンから操縦士に送信される遠隔測定データやビデオ画像に付け込むことができる場合もある。

このシステムには欠点もある。Scout.comによると「一般に流通している既知の」業務用ドローンに対してのみ有効であり、対策済みドローンの貯蔵データが市場に出回っているもののわずか75%にしか適用されない。海外の軍隊向けに製造された非業務用ドローンに限ると、その数はさらに少ないだろう。

それでも、一度メスマーのデータベースに業務用ドローンが取り込まれたら、ソフトウェアのアップデートで「D13」の技術を打ち負かすのは難しいだろう。それはメスマーがソフトウェアではなく周波数にフォーカスしているからだ。

ハンター氏はこう語る。

「今までハッキングできなかったドローンは1つもないよ。僕たちはドローン業界の中で着実に“のし上がってきている”」。

「D13」は今月中に自社システムの市場進出を予定している。

[原文:This company can 'hack' and completely take over enemy drones for the US military

(翻訳:近松)

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