質疑に答えるメルカリ経営陣。左から、小泉文明会長、山田進太郎社長、長澤啓執行役員CFO(いずれも役職は最新。2019年8月撮影)。
撮影:伊藤有
メルカリは4月30日、2020年6月期第3四半期決算と、通期業績予想を公表した。
第3四半期時点の累計連結業績は、売上高が533億円(前年同期比42.7%増)、営業損失202億円(前年同期は59億円)、最終損失222億円(同73億円)と、赤字決算が続く。
メルカリ2020年6月期第3四半期決算・決算短信より
メルカリの決算で毎回注目が集まる赤字幅に関しては、第1、第2四半期ともにほぼ同規模の70億円あまりの営業損失を出し続けてきたが、第3四半期単体の営業損失63億円と、いったんピークを打った形だ。
メルカリ2020年6月期第3四半期・決算説明資料より
メルカリによると、第4四半期は、全社で広告宣伝費を中心とした販売管理費の大幅削減に取り組んでおり、四半期の連結営業赤字は前四半期(2020年第2四半期)をピークに減少させていくという。
来期の業績に関しては、新型コロナ影響のため全体の業績見通しは難しいとしながらも、「いかなる形にせよ連結営業損失は徐々に減少させていきたい」(決算発表FAQより)と、赤字幅を減少させる方針だ。
なお、同日公表した通期の業績予想は次のようなものだ。
通期業績予想も赤字決算見込み。赤字幅はメルペイや米国メルカリなどへの広告宣伝コストが重く、前年から赤字は倍増する。
メルカリ2020年6月期第3四半期・決算説明資料より
売上高は730億〜750億円(前年比41.2%〜45.1%増)と対前年比で大幅に伸長する一方、営業損益は-230億円〜-250億円、最終損益は-261億円〜-276億円と、前年決算から赤字が倍増した形で着地する見通し。
営業損益の大幅な悪化要因として、メルペイや米国メルカリ事業の広告宣伝コストの実施をあげている。
一方、従来どおり国内メルカリ事業に関しては堅調というアピールを続けている。国内メルカリのみの通期予想は、売上高570億円〜580億円(前年比23%〜25%増)、営業利益率は25〜28%という状況にある。
新型コロナがメルカリの出品に与えた影響
第3四半期の最後の月にあたる3月は、世の中は新型コロナの影響下にあったが、メルカリ連結決算への影響はほぼなかったとする。
メルカリ2020年6月期第3四半期・決算説明資料より
新型コロナウイルスの影響は、第3四半期までは「連結全体には影響はほぼなかった」。
変化が見えてきたのは3月後半。国内に関しては、世の中の自粛ムードによって一部に購入単価のマイナス影響が出始めているとする。一方で、出品やGMV(流通額)は増加傾向にある。
なかでも興味深いのは、出品される商品の傾向だ。国内に関しては、3月と4月の第3週の比較では、インドア志向の取り引きが増加。エンタメホビーが2ポイント増加、家電が1ポイント増加という状況にあることがわかった。
日本メルカリ、米国メルカリともに新型コロナウイルスの影響を受け、ジャンルの構成比に変化が現れた。
メルカリ2020年6月期第3四半期・決算説明資料より
米国メルカリでは、事業規模とロックダウン実施など社会情勢の違いから、数値の変化がより顕著だ。おもちゃ類が2ポイント増加、電子機器(Electronics)は6ポイント増えている。
一方で、女性向けのアパレル関連の比率は、外出が激減した状況を反映して日米ともに急減している。
先行き不透明、困難な来期の見通し
米国メルカリ事業は、GMV成長率は非常に高いが、狙う目標値「月間1億ドルの流通額」はまだ遠い。なお、GMVの推移を示すグラフの縦軸単位は100万ドルとなっている。
メルカリ2020年6月期第3四半期・決算説明資料より
自宅で仕事を続けるテレワークや外出自粛の流れのなかで、メルカリなどフリマアプリを使った「断捨離」が進むという見方も、一部にはある。
しかし、メルカリが明らかにした業績見通しを見る限り、そう楽観視ばかりはしていられない。第4四半期については、前年同期比で25%〜30%台前半という比較的高いGMV成長率を見込む一方、来期は「今期よりGMV成長率が鈍化する可能性がある」と言及している。
米国メルカリに関しては、新型コロナウイルスの影響下の状況が後押しになり、第3四半期は前年同期比でGMVが55%増加している。しかし、この高成長率が2020年を通じて持続した場合でも、四半期のGMVがようやく1億6000万ドルという状況では、従来から掲げるGMV目標「月間1億ドル」に達するのはまだ相応の時間がかかりそうだ。
(文・伊藤有)